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即興アートバトル『筆ロックフェス』に可能性を感じた

前回の記事では久里浜の開国祭内で行われていた『コントラバスヒーロー』ショーを紹介した。
非常に楽しいイベントであったのだが、実はもう一つ、それに匹敵するほどの企画が同じ開国祭の中で開かれていたのだ。
それが、『筆ロックフェス』である。

商店街の上でたなびく
筆ロックフェスの横断幕

筆ロックフェスとは? と思った方が多いのではなかろうか? 筆者も、コントラバスヒーローと同じく、つい最近までその存在を知らなかった。
この真夏という時期開催のフェスとタイトルにつくイベントなだけに、音楽フェスかと思う人もいるかもしれないが、そうではない。

では、筆ロックフェスってどんなイベント? と思った人は、彼らのYouTubeチャンネルを観てほしい。彼らもまた、これまでの活動をYouTubeにアップしている。

どうやら、既に久里浜での大会の様子もアップされているようである。
こうした文面での説明よりも、映像を観ていただく方が早いだろう。
ご覧の通り、その場でランダムに出されるお題をもとに、五分間という短く限られた時間内で絵を描き他の対戦者とバトルする内容だ。つまり、即興アートバトルである。ラップや大喜利など数ある即興お題バトルのアート版である。
バトル中はDJが音楽を鳴らし、MCが場を盛り上げる。

これ、色々面白い要素はあるが、何よりも描いている人たちの手法やジャンルがバラバラであること。
筆を使わず、直接指で描く人や、スプレーのような器具で吹き付ける人などから、色制限を課す人まで、そのスタイルはバラエティに富んでいた。また、参加者の年齢層もバラバラ。小学生と思われる子から、高校生の若者、二十代と思われる女性、そしておじさんたち。こんなスタイルや年齢がバラバラな人たちが、ただ五分間という制限されたシビアな条件の中、『花火』やら『マリノス』やら少々自由度が高いお題を元にバトルするのである。


AIを駆使してイラストを描く人も

バラエティに富んだスタイルと触れたが、1人別の意味で注目に値する人がいた。別に抜けた画力があるとかそういうわけではない。むしろ、その人の画力はさっぱりわからない。なぜなら、その人のスタイルが『AI』だからだ。
最近流行りの、AIにお題を打ち込んでイラストを描かせていたのである。
直近でもイラストコンテストなんかにAIイラストで応募された作品が問題視されたこともあったが、こちらは堂々と参戦。別にルール上問題ないみたいだ。
筆者は、別にAI手法を否定したいわけではない。今時風だし、むしろ多様なスタイルという視点ではAIを持ち込んできたことは面白いなとも感じられていた。
残念……とも違うが、結果的には上位には食い込めずに敗退。
真面目に評価してしまえば、やはりこの手の即興お題バトルで使うツールとは違うかと。AIだと誰の個性なのかもイマイチ掴めないし、何よりも綺麗に仕上がるのが当たり前で、そういうところは面白みに欠けるからだ。
とはいえ、彼はネタ枠に思えて実は時代を象徴した示唆的な存在だったと思えてならない。


また、他に注目すべき点は、参加者のレベルが割と高い。あとで作品の写真を載せるのだが、5分間でその場で思いついたビジョンを書いた割には、観れる作品を書き上げてくるのだ。それこそ、子供が描いたような絵なら誰でもいいが、描かれた作品群を見る限りは一定のレベルを超えてきてる人たちなのだろう。
そこがまた、観ていて楽しめる要素でもあった。


筆者も、昔無理なお題を提示してそれを元に小説を書いてもらう企画をやったことがあるだけに、この手の趣向は楽しくて仕方ない。なによりも、何ができあがってくるかが楽しみだし、予想外な方向からとんでもない変化球が飛んでくることだってある。それがきた時こそ、待ってましたと拍手したくなる。
そういう楽しみがこの手の企画にはある。
今後、企画が発展するなら、お題レベルを上げていくのも面白いかもしれない。
花火だけではなく、『次世代型花火』とか、『フェイク花火』『子連れ花火』など、関係ないキーワードとキーワード同士を足して複雑化したお題にしてみるなど面白いかもしれない。アーティストは想像力が豊富な人が多い。そんな想像力をより試してみると、より企画も盛り上がるのではなかろうか。


少し関係ない話になるが、企画者はどうも横須賀の人間らしい。
こういう企画がもっと横須賀で盛り上がってくれると、楽しくなるはず。
東京のコンサルや企画会社に頼らないイベントで活気づけてほしい。


大会の様子1


大会の様子2


大会の様子 決勝戦


コントラバスヒーローも参戦


コントラバスヒーローが描いた
海軍カレー


さて、褒めてばかりいるが、観ていていくつか不満を覚えもした。
今後の改善点か。

まず、審査員。
審査員は特定の人間が用意されているわけではない。
10人限定で、その場で見ている人が自由に参加する形だ。
しかも、厳密に入れ替えているわけではなかった。つまり、同じ人が続けて審査していることもあった。
更には、かなり子供が参加していたこと。
もちろん、子供の感性を審査に入れることに不満はない。しかし、子供が多めに参加してしまえば、ちょっと複雑で解釈に多少の経験や知識が必要なイラストを描いてしまえばどうだろう。相手側が色使いが派手で分かりやすいイラストを描いてしまえば、票はそちらに流れやすくなるのではなかろうか? 自ら作品に制限を課してると宣言した人など、その条件込みで評価しなければならないが、子供はそこまで考えられるのだろうか?
そういった意味では、素人のお客さんだけに評価させていたのには疑問が残った。
お客さんをランダムで入れるにしても、毎回必ず入れ替える必要はあると思われる。また、アートに詳しい人間を特別審査員として呼び、その人のポイントは2倍にするなどした方が良いのでは?

あとは、細かいところだが、MCの人はもう少しバラエティに富んだトークはできなかったか。「あと何分」ばかりで、回し方が単調。お題について印象やら個人的な体験話を軽くしてみるとか、審査員の子供達にも話を振ってみるとか、色々やり方はあったと思うが。
まあ、これは完全に余計なことだが。


では、最後に今大会で描かれた作品を載せて終わりにしよう。

優勝した際の作品
お題は『花火』
作品群1
作品群2
作品群3
作品群4

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