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土地の分かりやすいブランドを確立することの重要性(今日のコラム)

『湘南』という響きを聞いて何を思い起こすだろう。
サザンや湘南乃風などのバンドや数々の歌などはもちろん、海やサーフィンなどの自然に関する何かもすぐに思い浮かんだはず。
アニメの聖地にもなっているから、アニメ作品が思いついたかもしれない。
何度か通っているような人なら、具体的なおしゃれなカフェやレストランが思いついたかもしれない。シラスやサザエなどの海産物だってある。
きっと数々のイメージが浮かび上がり、あらゆる角度で湘南のイメージが思い浮かんだだろう。一つも浮かばないという人はほどんどいないのではなかろうか。
それくら、『湘南』というブランドイメージは強い。
そんな湘南ブランドを抱えられる藤沢市や茅ケ崎市は、実際に住んだことがなく、下手したら訪れたことがなくても、それだけで住むのが魅力的な場所とイメージされるだろう。住みたい街ランキング上位の常連であるところがそれを表している。
つまり、土地の持つブランドイメージというのは強力だということだ。
古都鎌倉やおしゃれなみなとみらいを抱える横浜など、神奈川県民なら特に賛同してくれるのではなかろうか。

さて、そんな強力で魅力的なイメージがない土地はどうなのだろう。
イメージはあっても、魅力的に映るイメージではなくてはならない。


別に横須賀にイメージが全くないわけではなかろう。むしろ、実際に訪れてみればその特色に気がつくはずだ。
西側は湘南と同じ相模湾に面して立っているし、実はシラスだって獲れる。冬の澄み切った晴れの日は、同じような富士山がくっきりと望める。最近では野比や津久井浜の方ではウィンドサーフィンが盛んだ。夏の海なら、湘南よりも横須賀の西海岸の方が断然綺麗である。
渡辺真知子やヒデの出身地でもある。
湘南と似たようなイメージはしっかりある。

とはいえ、それが定着しているわけではない。湘南のイメージでサーフィンを浮かべる人はいても、横須賀のイメージを聞かれてウィンドサーフィンを浮かべる人はかなり少ないだろう。シラスは圧倒的に湘南のイメージが強いはず。
第一、自然(特に海)を売りにしている土地は島国日本であらゆるところにある。
同じ土俵で勝負していても意味はないし、湘南に勝てるわけはない。
むしろ、神奈川エリアならば、湘南と同じ要素で勝負しようとしてはならない。
それほどに湘南ブランドというのは絶対的な強さを保持しているということだ。
さらに言えば、それほどまでに強固に作り上げられた土地ブランドを持てることは、この人口減少社会においては優位なことであると言えるだろう。

では、人口が減りつつある横須賀では何で勝負すべきなのか。
湘南になくて横須賀にあるイメージと言えば、『軍港』に違いない。

実際、筆者が横須賀の外から来た人に、くる前はどういうイメージを持っていたか尋ねると、かなり多くの人が『軍港』と答える。
あとはネイビーバーガーや海軍カレーだが、これはご当地グルメとして考えればどこにでもあるものだ。ましてや、B級グルメなどと考えると、一時どこの地方都市でも作られてむしろ目立たなくなっていた印象があった。
だからこそ、横須賀は『軍港』というイメージが先に来るのではなかろうか。

しかし、残念ながら軍港はあまりプラスなイメージに貢献しない。
ミリタリーマニアには好感あるだろうが、それはあまりに狭い。
湘南ブランドと比べれば、軍港都市ブランドで売るには厳しい。
ましてや移住者を呼ぼうと考えると、そのイメージが硬派な街に受け止められそうでマイナスだ。
こういう街のブランドイメージにより、それぞれの地域で人口増減に左右していたりもするのだろう。(もちろん、それだけの要素ではないが)
ならば、どうすれば他地域の人に横須賀に対してプラスのイメージを持っていただけるだろうか?

もちろん、横須賀市側もそれを意識しているかのようなブランド戦略はしているのは見られる。
最近では、先のウィンドサーフィンやアーバンスポーツに力を入れているし、eスポーツやアート関連にもアプローチしている。
しかしながら、まだまだその辺りが強い都市のイメージに結びついていない様子だ。
個人的には、BMXやダンス、ジャズなどは横須賀という都市のイメージにマッチしている印象を受けるが、アートやeスポーツに力を入れるのには首を傾げる。
何せ、そこに力を入れている都市は他にも散見される。
ましてや、アートなどは隣の横浜市が今年トリエンナーレを開催し、他にも新潟や直島など数年ごとに色々な街で開かれている。日本の自然と同じように、あらゆる場所で持ち上げられる要素はその地域の色になりにくい。特に後発となってはだ。どこかで成功した何かをマネするのは地方行政ではありがちだが、これはむしろ税金の無駄になるだろう。

単純な思考で自然や強引に生み出されたグルメを武器にするのは無駄、真似したアートやeスポーツも無駄、とすればどうすれば良いか。
何を横須賀ブランドにしていけばいいのだろうか?

それを考えるためにも、もう一度地元再発見は必要だろう。


今回筆者が注目したのが、『軍港』である。
軍港は硬いイメージがあって湘南ブランドと比べると劣ると書いたばかりではないか、そう指摘されそうだが待ってほしい。
それこそ、大事なのは『再発見』なのだ。言い換えれば、『価値観の再転換』である。
軍港という堅苦しいイメージをいかにしてプラスな方に変換させるか、それを問題にしたい。
横須賀の軍港は、明治から続く日本の海軍のそれから、戦後の米軍基地の二つの意味合いがある。
そのうちの米軍基地をより好意的に取れないではなかろうか。
もっと言えば、米軍基地というよりも基地があるからこそアメリカ人を中心とした外国人の多さを利用できないかである。

と書くと、既にドルが使える街や基地の前にあるどぶ板通りは夜になれば外国人で溢れかえり、充分にアメリカ色を利用できている、と思う人もいるかもしれない。基地開放デーだってあるし、外国人と交流する場は前からある。
確かに基地周辺エリアはアメリカンな雰囲気を醸し出していて横須賀の特色を強く打ち出しているところではある。更には、あのエリアは軍港巡りや、それこそ海軍カレーやネイビーバーガーなどのご当地グルメも売り出していて横須賀色を強調するのに貢献していると言える。
とはいえ、何度も書くように、軍港だけでは硬い印象とミリタリーマニア受けしかしないだろう。多くの若い女性が、戦艦見たさに横須賀に来るだろうか? もっと広い範囲に受けられる印象を与えられるようにしなくてはならない。

そこで考えられるのが、軍という要素を抜かしたアメリカンな雰囲気を醸し出せないかだ。
例えば、もっとアメリカンエンターテイメントを打ち出したショーができないか。
幸い、あのエリアには横須賀芸術劇場がある。年に数回はアメリカ人が中心となった派手なエンタメが催せないだろうか?
もしくは、日常的にも、それこそどぶ板通りの店でアメリカ人と交流しながら向こうの遊びに興じられないか?
もしくは、筆者個人的な感覚だと、アメリカンエンターテイメントの一つはWWEをはじめとしたプロレスである。世の中には商店街プロレスなる団体が存在するが、横須賀では巨体を揺らした外国人レスラーが活躍すれば。さらに、英語で頻繁に何かしらのアピールしてくるなど。

その『英語』そのものも重要だ。
英語が日常的に使える街、として売り出せば、なんなら国内留学できる街として売り出せるかもしれない。
英語を話したければ横須賀に行け! そう言えるようになれば外から多くの人が集まるかもしれない。

外国人を巻き込むのならば、外国人自身が楽しめなくては盛り上がらないだろう。外国人もまた楽しめるエンタメを持ち込めれば、横須賀ならではの空気感は出せるし、うまくいけばそれが独自ブランドに発展するのではなかろうか。


などなど思いつく限りにアイデアを書いてみたものの、これには大きな問題もある。そもそもの外国人の協力なくしては成り立たない。
事情はわからないが、基地の人たちはやはり仕事上すんなり協力できないかもしれない。向こうからしてみれば、話しかけないでくれと思う人もいるのはたやすく想像できる。
となると、軍の仕事から離れられた外国人とうまい具合に協力できればである。その人数をどれほどに確保できるかは怪しい。
2,3人見つけたところで、インパクトは薄い。
ある程度の規模でできた一定の集団を形成できるかがカギだ。
やるとなると、少しずつでも外国人と交流するきっかけを持ち、お互いに興味あるジャンルで盛り上がれるような空気を作り上げなければ。
既存の交流会などを中心にして活性化できないものか。

何はともあれ、地域ブランドを形成するには独自色が必要だし、その地域だからこその色は欲しい。
湘南ブランドに対抗できるようなインパクトあるブランドを横須賀をはじめとした周辺地域は確立できるようにしなければ。
それには、地域の特色を改めて見つめなおし、価値観の再定義を試みるようにしなければ。
普段当たり前のようにある何かが、実はその土地独特の色であり、見方をがらりと変えることによりすっかりと観光資源へと変貌することだってあるのだから。



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