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『部下が思ったように動かない』というお話

現在育成を進めている、次期リーダー候補生の部下。
その彼が今まさにぶつかっている壁。

「部下が思い通りに動かない」

というもの。

これは様々な局面で起こる。

例えば、

「仕事を依頼したが、求めているクオリティに届いていない」
「指示を出したが、どうもうまく伝わっていないのか、指示通り動けていない」
「報連相を密に、とお願いしているが、なかなか来ない」

などである。

 結果として、綿密に計画し、アクションプランに落とし込み、公表し、承認をもらっていたにも関わらず、思うように進んでおらず、頭を抱えていた。

「そんなに難しいことをお願いしているわけではないんですが…」

 確かに、ハイレベルな事を要求しているわけではない。やろうと思えば、誰にだってできることばかりだ。

「これって、結局自分でやった方が速いんで、巻き取ったほうがいいんですかね?」

 ここまでは、うんうんと頷いていた私も、そこで少し顔を上げて言った。

「いや、ここで巻き取るのは、あまり良くないかもね…」

 もし任せた仕事を巻き取り、リーダーが終わらせてしまったら、その部下はどう思うだろうか?
 さすがリーダー!仕事が速い!頼れる!となるかもしれないが、それ以上に、最後まで任せてもらえなかったという不甲斐なさ、巻き取るならなぜ任せた?という不信感が大きいのではないだろうか。
 
 そしてその不信感は、「じゃリーダーが勝手にやればいい」という非協力に繋がっていく。
 増してや成りたての新米リーダー。信頼関係が未熟のなかでこういった「空回り」は、リーダー養成を大きく後退させる。

 確かにリーダーは、立てた計画を完遂させる責任があるので、進捗が悪いと焦る気持ちはわかる。
 しかし、チームの成果をリーダーが作ってしまってはいけない。サポートはしても、成果は部下たちに分けられるよう、最後まで分担を貫かないとならない。

それはなぜか。

 チームは、1+1を2以上にするために存在する。もし、そのチームを構成する部下の働きが無くても成果が生まれるのであれば、部下の働き甲斐は失われるからだ。1+1が、0+1や0+0へとなってしまえば、いくら優秀なリーダーでも1以上にはならない。
 つまり、そのチームを機能させるためにリーダーがいる。チームの足し算を1+1=3にも4にもするために存在するのだ。

 
 そして、そもそもなぜ部下が思い通りに動いてくれないのか?

気を遣うあまり、指示があいまいになっている?
嫌われているから、言うことをきいてもらえない?
説明が下手で、伝わっていない?

 色々理由はあるかもしれないが、結局のところ『信頼が無い』のではないだろうか?

相手の話を聴けているか?
相手の人となりをどれくらい他人に説明できるか?
自分のことを相手にどれくらい伝えられているか?

 コミュニケーションエラーはリーダーシップにおいて天敵である。いかに汲み取り、いかに伝えるか。その相互理解の上で信頼は成り立ち、リーダーシップは育っていく。

 つまり、『伝わっていない』のだ。
 任せた仕事の内容の事ではなく、やろうとしていることの意味、依頼した仕事の重要性、得られる成果の大きさ、リーダーの熱意、部下への信頼。それらが全て。

 人は、やる意味のないことをやり続けられない。必要のないことは出来ない。だからやらない。依頼した仕事、報連相・・・出来ない理由はそこなのではないだろうか。


「計画にも余裕があるようだし、まずは出来ていないところをしっかりサポートしながら、出来るまで見守ったほうが良いね。根気は必要だけど、何かあったら俺もサポートするから!頑張れ!」

ありがとうございます――と小さく会釈する彼の表情は少しだけ重かったが、きっとここを乗り越えてくれるだろう――と期待のまなざしで背を見送った。彼が一人前のリーダーとなるまで、私のサポートも続いていく。


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