【必要とされるかの前に、やりたいかを徹底的に問うことが大事 RICビジネス編#5】
毎回私自身の事例と共に、創業〜PMFに至るまでの話をしてきました。
ここまで読んでいる方はお分かりかと思いますが、毎回壁にぶつかっては失敗するエピソードばかりです。
これから起業したい人が知りたいのは、まさにその生々しい失敗とそれをどう乗り越えて進んだかだと思っているのでこうして発信しています。
というわけで、もちろん今回も壁に直面した話です。
起業のステージとしては、アーリーステージ前半まで。今回直面した壁は「結論を急ぎすぎる壁」です。
<創業からアーリーまでの流れの説明>
アーリーステージは、シードステージの後の段階に位置しています。
PMF(Product Market Fit:顧客の課題を満足させる製品を提供し、それが適切な市場に受け入れられている状態)を達成し、より価値を提供することで収益化を目指している状態にあります。
そのためこの段階では、事業を開始したものの軌道に乗るまでの間赤字を計上するスタートアップが少なくありません。
とはいえ、経営を続けるには運転資金(製品のライセンス使用料、販売促進費、人件費)や設備投資資金のほか、といったさまざまなコストを支払う必要があります。
資金繰りに悩まされるケースも多い。私自身もそうでした。
アーリーステージでは、製品を市場に届けるための最低限の技術者および、それを販売して顧客対応を行うための営業スタッフや管理スタッフなどの増員によって、従業員規模の目安は5人〜20人程度にまで及ぶことが多いです。
<結論を急ぎすぎる罠>
アーリーステージに辿り着くまでには、陥りやすい罠があります。
いつものように私の事例をもとにお伝えします。
私は病院内に保育所を設け、それを運営するという事業を構想し、実際にいくつかの病院から仕事を受注しました。
上手くいきそうに見えたのですが、最初の数件から何年経ってもクライアントが増えません。雇用した2人の社員も辞めてしまいます。他にも問題が山積していました。
資金がみるみる減り、売上を出すための打開策として同業のM&Aを画策しますが、それも失敗。本来なら、単一のプロダクトを突き詰め売上を伸ばすことに専念すべきところでした。
ここに至り、
私は保育や教育の専門家でもないし、
業界をわかっているわけではない…
子どもも実は苦手だし…
など、そもそも私は本当にこの事業に命を賭けたいのか
ということがわからなくなり事業の売却を考え始めます。
具体的に売却を検討した理由は3つです。
①PMFが未達だった
②売上を上げるための戦略や施策がない(スケールする見込みがない)
③事業領域のフィット感がない(創業チームが事業領域にフィットしていない)
逆にいえば、この3つを満たしていればアーリーステージに移れます。
結局、売却の検討はしたものの、そうするには至りませんでした。
この状態を抜け出すきっかけになったのは、息子が事業を引き継ぐことを視野に入社し経営の手伝いをしてくれるようになったことでした。
<現状を変える力=自分と対話する力>
私がアーリーステージに到達できずつまずいたのは、なんにせよ結論を出すのが早すぎたためです。
PMFしていない段階で営業の社員を雇用し拡大に走ったこともそうですし、M&Aのときも焦りすぎました。
思い切りは大事ですが、一度手を付けると「ここまでやったんだから」となかなか引けなくなることも覚えておくべきです。
少なくとも、心に余裕のあるうちに、事業計画を考える時に撤退基準を設けておかないと泥沼にハマります。
さらに言えば、そもそも私は「スタートアップをやりたいのか?」「これが本当にやりたいことなのか?」「自分の人生を賭けたいことなのか?」といったことについて結論が固まっていませんでした。
その時々の感覚(それも焦りや恐怖、罪悪感)で動いているところがあって、言うことが二転三転して周りを困らせたりもしていたと思います。
自分の中で考えがまとまり、方向性が定まるまで動き出すのを待つべきでした。
現状を変えるには、結論を焦る気持ちを押さえ、自分と対話する力が必要です。
自分と対話することで、自分の思いや考えをしっかりと言語化し、それを共有できる仲間との信頼関係を育んでおくことが大事なのです。
経営をしていると修羅場が何度も訪れます。
そんな時、ビジョンミッションを共有し、親身にかつ率直に意見を伝えてくれるチームを作っておけば、冷静に判断を下し危機を乗り越えられるはずです。
<まとめ>
今回は、結論を急ぎすぎる壁を乗り越える方法をお伝えしました。
結論、「自分とちゃんと対話しよう」なのですが、自分を見つめる作業ってしんどいものですよね。嫌な部分もたくさん見えてくる。
ですが、しっかり向き合えば自分に本当に必要なものがわかるはずです。
「本当はどうしたいのか?」
「どんな結果を望んでいるのか?」
「なぜその結果を望んでいるのか?」
「どうすればその結果につながるのか?」
といったことをとことん考えてみてください。
これしかないと思い込んでいた自分に気づけば、他の選択肢にも気づけるでしょう。
どんな状況でも、いつでも、別の選択肢は開かれています。