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SDGs定点観測 目標1:貧困

多くの日本企業がSDGs(持続可能な開発目標)を自社のウェブサイトや報告書で言及するようになりました。SDGsは17の目標で構成されていますが、目標によって取り扱いがかなり異なります。よく取り上げられるもの、限られた企業にしか取り上げられないもの。単独で様々な場面で取り上げられるもの、他の目標との抱き合わせで取り上げられるもの。

この「SDGs定点観測」シリーズでは、現在日本の大企業が各目標をどう取り上げているのか、見ていこうと思います。第1回は目標1「貧困をなくそう」略して貧困です。

ビジネスパートナー配慮や社会貢献で言及

この目標は17目標の中で、最も取り上げる企業が少ないです。時価総額上位500社中、取り上げているのは75社程で全体の約15%にとどまっています。これは日本企業の情報開示が国内の取組を中心に紹介しており、貧困にあえぐ海外の地域をあまり取り上げてこなかったことが一因です。そのため自社事業ではなく、調達先や下請会社などビジネスパートナーや社会貢献の分野で言及されることが多いです。

例えば、戸田建設は目標1に関する取組として、「日本全国における事業の展開による、雇用の創出」「法定賃金の公正な支払い」を挙げています。どちらも協力会社という下請会社に対する取組です。潜在的な貧困を予防するために、1,600社もの協力会社に対する発注、適切な賃金の支払いをコンスタントに行うとしています。

いすゞ自動車は2008年から経済的に恵まれない若者を対象としたフィリピン自動車整備士養成学校に対する教育支援活動を行っています。いわゆる社会貢献活動の一環で、貧困の連鎖を断ち切ることを目的に始めています。これまでに約300名が卒業しており、中には同社のアフターセールス支援会社に就業することもあり、中核ではないものの同社事業を支えている側面もあります。

他の目標との深い関係

また貧困は他の目標の根源になっていることもあり、貧困だけでなく、飢餓や保健など別の目標との抱き合わせて開示されることが多いです。先述のいすゞ自動車の例では目標8:成長・雇用、目標10:不平等もセットで開示されています。

例えばキユーピーは傘下のキユーピーみらいたまご財団で子ども食堂の推進活動を行っています。子ども食堂は貧困世帯の子どもに対して食事を提供するという取組ですが、その関係者を集めて運営の課題などを共有する「居場所づくりサミット」を開催しています。他社では子ども食堂の取組は目標2:飢餓、フードロス削減という観点で目標12:生産・消費も併記されていることがあります。

また損害保険会社の東京海上ホールディングスは小農家向けの保険商品を開発、販売しています。もちろん天候によって収穫が激しく変動することにより、小農家の生計が立たなくなる可能性が出てくるため、貧困に関係することは間違いありません。しかし、小農家に普段アクセスできない金融サービスを利用可能にするという点では目標16:平和にも関係していると言えます。


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