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ESGパッシブ投資ではエンゲージメントが重要

9月25日、GPIFはグローバル環境株式指数として国内株向け、外国株向けそれぞれの指数の選定を発表しました。昨年7月に選定した女性活躍指数に続き、2つ目のテーマ指数ですが、その特徴は大きく異なります。もちろん国内株のみならず、外国株向けの指数を選定した点も大きいですが、ここでは国内株指数における指数構成銘柄数に注目してみたいと思います。昨年選定した女性活躍指数は2018年8月末時点で208銘柄、対して環境株式指数は1,694銘柄です。東証1部上場銘柄数が約2,100銘柄であり、前者はその約10%、後者は同約80%の銘柄を組み入れていることになります。

投資の世界ではアクティブ投資とパッシブ投資という考え方があります。アクティブ投資とは運用担当者が保有する企業を選別し、市場平均を上回ることを目指す投資です。一方、パッシブ投資は保有企業や保有割合を市場株価指数に似せるようにし、市場株価指数と同等のリターンを目指す投資です。東証1部上場銘柄を対象とする株価指数は一般にTOPIXと呼ばれていますが、先述の保有銘柄数の割合でみると、TOPIXに対して女性活躍指数はアクティブ投資、環境株式指数はパッシブ投資に近い特徴を持っていると言えます。

アクティブ投資より幅広い銘柄に投資するパッシブ投資ではESG側面のパフォーマンスが良好な企業だけではなく、中程度、もしくは出遅れている企業にも投資することになります。それでもESG投資としてアピールするには、保有銘柄のESG側面でのパフォーマンスの改善が重要となってきます。もちろん環境株式指数では構成銘柄数こそパッシブ的ですが、指数内ウェイトは売上高当たりCO2排出量が少ない銘柄ほど高くなるようになっており、構成銘柄がCO2排出量を減らすようなインセンティブを内蔵しています。

しかしその有効性は未知数と考えています。先述の女性活躍指数とは異なり、東証1部上場であれば主だった企業は全てこの指数に選定されており、一度選定されてしまえばCO2排出量が急増したり、不祥事を起こしたりしない限りは選定され続けることになります。また仮にCO2排出量を減らした結果、指数内ウェイトが上昇したとしても、企業が投資家以外のステークホルダーに対しての説明を容易にできるとは限りません。

上記のような企業行動が予想されるため、長期的に指数の有効性が発揮されるには、指数構成方法での工夫と合わせて、組み入れられた企業へのエンゲージメントを実行することが重要だと考えています。


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