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江戸時代の防火帯、堀割が区境に

23区全区境踏破第11回

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竹森神社からの旧龍閑川跡の細い道を進みます。
少し行くと「岩本町一丁目」の町名由来案内板がある、コンビニ前の小緑地が右手にあります。
目の前の通りは地下を日比谷線が走っています。
昔はここに九道橋が架かっていました。
これを横切り、また細い路地に入っていきます。
ここで左に曲がって、三つ目の角を右手に入ると十思公園があります。
ここは江戸時代の伝馬町牢屋敷跡です。
地下の遺構展示や模型展示、吉田松陰の碑などがあります。

牢屋敷跡に曲がらずに旧龍閑川跡を進むと、まもなく首都高にぶつかります。
右側は千代田区立地蔵橋東児童遊園で、「神田八丁堀」という案内掲示があります。
「神田八丁堀」は龍閑川の別名です。
ここにも地蔵橋という橋がありました。
路地挟んだ反対側にも公園がありますが、こちらは中央区立の地蔵橋「南」東児童遊園です。
横断歩道はないので、中央区側の歩道橋を渡っていきます。
首都高速の下スレスレを通る、面白い歩道橋です。

歩道橋を降りるとまた小公園です。
左側は中央区立の地蔵橋公園です。一角には交番もあります。
さらに川跡に面して「竜閑川埋立記念」(ここの表記は「竜」)というコンクリート製の記念碑(?)があります。
題字の両側に「千代田区神田」「中央区日本橋」と書かれ、両区で協力して建てたことがわかります。
裏の案内にも当時の両区長の名が書かれ、汚れて悪臭を放つ川を戦災瓦礫で埋めて下水道も整備した、と誇らしげに由来が刻まれています。
今となるともったいない話と感じますが。

川跡を進むとすぐ左手に山吹色の土壁と赤い鳥居が美しい福田稲荷神社があります。
西暦731年の創建と書かれていますが、いやーどうなんでしょう?
実は福田町との名は明治維新時にできたもの。
江戸時代以前の周辺の地名「福田村」に因んだと言いますが、江戸時代以前のことはよくわかりません
解説板の「伏見稲荷は神道、豊川稲荷は仏道」という説明も、明治時代に明治政府の政策でそうなっただけというのを知っているのか知らないのか。
今も西福田町が千代田区にありますが、東福田町は消滅しました。
そして今神社があるのは中央区側です。

福田稲荷

この辺りで路地の先や北方向を眺めると、目がクラクラするほど遠方までまっすぐで驚きます。
江戸時代に掘られた人工の運河ですのでそうなったのですが、その水路を江戸時代から神田と日本橋の境としたので、区境もこの前後はずっと一直線です。
そしてすぐ先にもまた左手に神社。
こちらは両社稲荷神社といいます。
「江戸時代から鎮座していたが由緒は不明」と謙虚な案内です(笑)。
江戸時代にはどの町にも必ず鎮守の社があったので、この周囲の町の鎮守だったのでしょう。
まもなく中央通りに出ます。
手前の左手には「今川橋のあとどころ」という碑が建ちます。
ここには日本橋地区の入り口にあった、今川橋という大きな橋がありました。
このあたりで発祥したのが今川焼きです。

まっすぐにわたる横断歩道がないので、少し迂回して中央通りの向かい側に行きます。
歩道上の車道側に金属プレートの「今川橋由来碑」があります。
江戸時代の様子が描かれた絵が刻まれ、大きな橋だったことがわかります。
そしてさらに続く路地の入り口脇にも「今川橋跡」の記念碑が。
都合三つもの記念碑があります。
よほど愛され、名残惜しかったのでしょう。
このすぐ南裏にも「家内喜稲荷」(やなぎいなり)という江戸時代からの神社があります。

この先の道は狭くて自動車は通れません。
飲食店が両側に増え、日銀通りを横切ります。
通りを右に行くと神田駅です。
すぐにJRのガードに行き当たりますが、ここには少し前まで「今川小路」というガード下だけの飲食店街がありました。
浅丘ルリ子さんはデビュー前にここに住んでいたといいます。
最近、耐震補強を名目に工事に入り、店舗は皆撤去されてしまいました。

ガードを抜けるとすぐに外堀通りです。
通り手前は小公園になっていて、古いコンクリート製の橋げたが置いてあります。
これはこの龍閑川の日本橋川への河口部にかかっていた龍閑橋の遺構です。
1926年に作られたコンクリートトラスの珍しい橋だということです。
そうそう、佐伯泰英さんの「鎌倉河岸捕物控」の舞台はこの辺り。
主人公の一人彦四郎の働く船宿「綱定」はここにあったとの設定です。
ここも横断歩道がないのでやや迂回して反対側に渡りますが、そこは東京都下水道局の駐車場です。
川を埋めたところはだいたい下水道局の管理です。
見ると敷地の左手の境に。緩くカーブした柵があります。
かつての河口部のカーブの名残でしょう。
区境はこの駐車場の中を通って日本橋川に続いています。
境は川の真ん中で左に折れ、下流へ向かっていきます。
川沿いにそちらに向かうと、真新しい橋が日本橋川を跨いでいます。
歩行者専用の「竜閑さくら橋」です。
2018年にできたばかりです。
次回はこの橋のお話から始めます。

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