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妄想しすぎた男

どうも。

僕は古畑任三郎が大好きです。


あっ、突然でごめんなさい。挨拶もそこそこに。
つい愛が先走ってしまいました。

むしろ、「嫌いな人など居るのだろうか」とすら思ってしまうほど、周りにも古畑任三郎大好き芸人がたくさん居ます。うじゃうじゃ居ます。トーーク番組一本撮れる勢いです。トーク番組ではなく、トーーク番組。

もうかなり昔のドラマだし、ご存じない方もいらっしゃるかもしれないので、一応解説をさせて頂きますと。
「古畑任三郎」とは、1994年に放送開始のテレビドラマであり、脚本はあの三谷幸喜さん。
所謂、“倒叙式”と呼ばれるミステリーもので、視聴者目線としては
「真犯人が誰なのか、トリックはどういったものなのかを予想・推理して楽しむ」
のではなく、
「犯人が犯行に至るまでの一部始終を先に犯人目線で見ておき、その後登場する主人公がどう謎を解き明かし、犯人を追い詰めていくのかを楽しむ」
といった構成です。
犯人役も大御所揃いで、俳優だけにとどまらずお笑い芸人、ミュージシャン、アイドル、果てはスポーツ選手まで出演しています。
すごいときなんか、SMAPが「SMAP役」、イチローが「イチロー役」で犯人を演じたりもしてます。意味わからないでしょ?僕もいざ文字に起こすと意味がわかりません。双方ともに大好きな回でしたが。
田村正和さん演じる、非常にコミカルで飄々とした主人公「古畑任三郎」という警部補が、あくまでも紳士的な態度は絶対に崩さず、しかし一度「怪しい」と睨んだら(というよりも確信に近い)とにかくどこまででも執拗に付きまとい、言葉巧みに犯人を追い詰めていく。
これがもう、面白くて面白くて。
よく学校から帰ってくると夕方に再放送をやっていたりして、なんとなくテレビをつけてしまったが最後。
ついつい夢中になってしまい、友達との約束をすっぽかして最後まで観終わった後で「やべっ」と思って慌てて電話したら
「俺もお前との約束忘れて古畑観てたから全然大丈夫」
と言われたりすることもよくありました。よくあっちゃダメなような気もするんですけど。それだけ面白かったし、愛されていた作品だったのです。

その圧倒的人気により、3rd seasonまでシリーズは続き、その後も何作か特別番組枠で放送されていたのですが、2006年に放送された「古畑任三郎 ファイナル」を最後に、多くのファンに惜しまれながらもシリーズ完結を果たしました。


……かのように見えたのですが。

つい先日放送を終えた
「古畑任三郎 4th season」

マジで最高でしたね!!

往年のファンを唸らせるような展開もあったし、時代を感じさせるような新しい試みも多く見られて新鮮でした。
何よりも、全然最終回っぽくなく、また次週も普通に放送されていくような余韻で幕を閉じた最終回が余計に
「あぁ、これで本当の本当に完結なんだなぁ」
と感じさせ、なんだかしんみりさせられました。

前置きが長くなってしまいましたが、今回はそんなシリーズ最後にして最高傑作とも言われている「古畑任三郎 4th season」のレビューを、簡単ではありますが語らせて頂ければと思います。

……え?
「そんなの放送してないだろ」
ですって?

えっ、いやいや。どういうことですか?意味がわかりません。
知らないんですか?
うわー!勿体ない!!
ついこないだまで、やってたじゃないですかー!!


僕の脳内で。



※ネタバレは極力避けてはいますが、出来るだけ視聴後に読んでくだされば幸いです。「そんな事言ってたら誰も読んでくれねーぞ、そもそも架空の話なんだから」ってどういうことですか?意味がわかりません。


今回もやはり目を見張るのが犯人役の面々。
豪華ゲストの数々に毎週眩暈を覚えるような感覚に陥ってしまいました。

まずなんと言っても初回、一時間半枠で放送された
「その男、横暴につき」

洒落の効いたタイトルでピンとくる方も多かったと思います。
記念すべき第一回目の犯人役は“世界のキタノ”こと北野武さんでしたね。
いつかは来るだろうな、と。思っておりました。いちファンとして。
しかしまさか初回で出てくるとは。
いや、驚きました。

“たけし節”とでも言うのでしょうか。
「馬鹿野郎、この野郎」と凄む犯人を、古畑がいつもの調子でのらりくらりと躱しつつ着実に追い詰めていく様は、「これぞ古畑任三郎!!」という感じで本当に胸が躍りました。思わず画面に向かって「おかえり!」と言いそうになったのは言うまでもありません。

ラーメンズの小林賢太郎さんの回も良かったですね。
まず和服姿の骨董品屋の店主という設定も素晴らしかったです。あんなに丸メガネの似合う人はそうそういません。
あの完璧に近い芸術的なトリックが、あんなつまらない事で綻んでいくのも少し可哀相ではありましたが、でもああいう少し抜けてるというか、どこかでしっかり崩してくる感じが小林さんっぽくもあり、三谷さんっぽくもあって素敵でした。

今回はミュージシャン枠もまた豪華だったのですが、やはりなんと言っても視聴者の度肝を抜いたのが椎名林檎さんですよね。第四話「高貴なる殺人」です。
それこそ古畑ジェネレーションの皆様は、大概の方が椎名林檎ジェネレーションでもあると思うのですが。まさかの二つの世界観が交差する日が来るとは思っていませんでした。林檎さん、お芝居も出来るんですね。天に何物も与えられているようなお方です。お上品なのに激情家、ってなかなか難しい役柄だと思うのですが、完璧に演じ切られていたように見えました。
物語の終盤、連行されていく際に古畑をちらりと見ながら
「ごきげんよう」
と言い放つシーンなんて、まさにドラマ史に残る名場面と言っても過言ではないと思います。

女性の犯人だと菜々緒さんの回も素晴らしかったです。痴情のもつれ、というか、結婚詐欺の話でしたね。
被害者役の温水洋一さんがまた良い味出してて。
視聴しながら「わかる、わかるよ、温水さん…」と思わず応援しちゃいそうになりました。殺されちゃったけど。
三谷さんは俳優さんのイメージに役を寄せていくようなキャラ設定や、脚本を書くと以前聞いたことがありますが、これなんてまさに真骨頂という感じでしたね。さすがの古畑もタジタジで観ていて非常に楽しめました。

個人的には林修さんの回はちょっと微妙だったかな。ハズレ回とまでは言いませんが…。過去に似たようなノリの話ありませんでしたっけ?風間杜夫さんの回だったかな?ちょっとそれを感じてしまって。
ネットでは「いつ殺るか?今でしょ」と大盛り上がりでしたね。
そういう意味では反響はあったのかもしれませんね。(それか最初からそれ狙いだったか)
「殺人方程式」っていうサブタイトルもちょっとなぁ。安易というか。

逆にネットではイマイチ盛り上がりに欠けていた、佐藤二郎さんの回なんかは本当に号泣してしまいました。個人的にはあれが今期で一番好きな回だったかもしれません。切ないんですよね。また。あの話。確かに若干地味ではありましたが、犯行動機等も「これ、仕方ないよな…」って思えてなりませんでした。一児の父となった今、ああいう子供絡みの話は本当に弱い。
最後に
「私はあなたが犯人だと思っています……」
と告げたときの古畑の表情がまた…。救いようがなく悲しい、しかし美しい話でした。思い出しただけで泣けてきます。というか、今まさに泣きながら書いてます。

それとは対照的に死ぬ程笑ったのが松重豊さんの回。
先ほどの話とは打って変わって思い出しただけでちょっとニヤニヤしちゃうくらい面白かったです。松重さんのあの絶望的な表情を思い出すだけで吹き出してしまいそうです。被害者役の荒川良々さんのクズっぷりも相まって余計に。あんな部下が居たら……。流石に殺しはしないけど、温厚な僕も流石に小突くくらいはしちゃうかもしれません。

そして、やはり最後に語らなければいけないのは最終回、堺雅人さんの回でしょうね。堺さんの見方が少し変わりましたよね。僕はあれ以来テレビで見かけるとちょっと怖いです。あの笑顔の裏にあんな凄まじい憎悪を隠していらっしゃるのかな?と。まぁ、それだけ役者として、演技が際立っていたという事の表れなのでしょうが。田村正和さんも触発されたのか随分と熱の入ったお芝居をされていたように見受けました。
いや、はっきり言ってお話自体は「えっ、これ最終回?」ってくらいあっさりしたものでしたよ。勿論つまらない、とかではなく。
ファンだって馬鹿じゃありません。もう古畑任三郎シリーズはこれで正真正銘最後になるでしょう。それが分かっているからこそ、
「あっ、こんなにさらっと終わるんだ……」
と思った視聴者は多かったのではないでしょうか。
でもどこか「三谷さんっぽいな」とか「古畑っぽいな」なんて思いながら受け入れられるのは、この作品が長きに渡ってここまで愛され続けてきた証拠だな、と。
そして先述した通り、終わりだとわかってはいるんです。
それでも心の何処かで「意外とまたどこかで会えるかもな」なんて思わせてくれる。そんな距離感を感じさせるようなキャラクター達とエピソードの数々こそが「古畑任三郎」最大の魅力だったのではないか。

そう思えてなりません。

ネタバレ防止や文字数の関係で一つ一つの回をあまり掘り下げることはおろか、全話語ることが出来ませんでしたが、きっとご覧になった皆様の数だけいろんな感想や傑作があったと思います。

皆様は、どのお話が一番好きでしたか?


いろんな感想や意見が聞けたら幸いです。


それでは、最後にこのご挨拶で〆させてください。


えぇー、古畑任三郎でした。




お金は好きです。