本にまつわるエピソード、何かひとつは持っているのではないか〜本のひととき〜
「さがしもの」角田光代
出会って、別れて、再会することもある。
本のことだ。
同じ本と気づかずに買ってしまったり、何年も経ってから猛烈に読み返したくなったり。あんなに好きだったのに手放した本もある。
縁ということばは、本にも当てはまると思う。
本にまつわる9つの短編集。巻末にはあとがきエッセイもついている。
著者の体験を彷彿させるような物語たち。
読みながら、登場する本の表紙の質感や紙の匂い、指でめくるページの感触を想像した。
本は「なかだち」だと思う。
本の世界を経て、新しい世界に飛び込む。
幼い頃読んだ伝記がきっかけで将来の職業を志したり、本に出てきたことをより深く知りたくなったり。読み終えて、そこで終わりにしたくない。
巻頭の「旅する本」が印象に残っている。
奇妙な縁で、同じ本と何度も出会う主人公。
読むたびに味わいが変わり、やがて気づく。変わっているのは本ではなく私自身なのだと。
これから私も本と再会することがあるだろう。どんな顔で出会うのか、少し楽しみにしている。
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