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道なき道が、道だった〜本のひととき〜

「そして、ぼくは旅に出た。はじまりの森 ノースウッズ」大竹英洋

東急線のフリーペーパー「SALUS」で知った写真展に足を運んだのは7月のこと。
三軒茶屋・キャロットタワーにある「生活工房」。無料で見ることができたのだ。

大竹英洋。
それまでは名前も知らなかった写真家。
偶然にも生まれ年が同じだったので、
妙な親近感がわく。
宣伝ポスターで目にした動物の写真。
ノースウッズがどこにあるかも知らない。
何もかも知らないことだらけだった。

ノースウッズとは、北米中央北部に広がる湖水地方を指す。
地図上の地名ではないらしい。
冬の寒さはとても厳しく、マイナス30℃になることも。
ますます想像がつかない。

著者が旅に出た理由はオオカミだった。
ある日、夢に出てきたという。
心から離れないオオカミが気になって図書館で調べるうちに、とある写真集と出会う。
撮影したのはジム・ブランデンバーグ。
「ナショナルジオグラフィック」の表紙を幾度も飾り、オオカミの写真でも知られる自然写真家だ。
彼の写真に魅せられ、オオカミへの思いは高まっていく。

自分もオオカミに会いたい。
こんな写真を撮りたい。
そして接点もない写真家に弟子入りしようと決心する。
心が決まったら行動は早い。
胸に湧いた熱をたぐり寄せるようにして、 著者は進んでいく。
道なき道を。

学生時代に登山経験はあるものの、
ノースウッズは初めて訪れる土地で、知人もいない。
拙い英語で何とかコミュニケーションを取りながら、直感だけが頼りだった。

潤沢とはいえない資金。
頼りない交通網。
正にマイナスからのスタートだ。
けれども著者の性格なのか、悲観的な部分は見えない。
小さな灯りを頼りに、ひたすら歩き続ける。
その情熱から目を離せなくなっていた。

やがて巡り会うジム・ブランデンバーグや、
冒険家のウィル・スティーガー。
彼らと一緒に過ごす中で、著者はたくさんのことを学ぶ。
心に残ったフレーズを書き留めた。
(以下、本文より引用)


見慣れた風景のなかにいても、感性を磨いていけば、そこに新しい世界が見えてくる

実際に足を運ばなければ世界は見えてこない

自分の心でみつけたものには感動する

欲しいものがはっきりわかったときに 
『それ』は目の前に現れる

他にもたくさん、たくさんあった。
書きとめながら頷いたり胸を熱くしたり。

すべてがうまくいくことだけが、人生にとって大切なことではないのかもしれない

特にこれ。
道はまっすぐじゃないし、もしかしたら道なんかないかもしれない。
曲がった道も寄り道も、人生には大切なものだったのだ。
その時はわからなくても時間が経って気がつくこともある。
うまくいかないことも人生だ。
今生きている、歩いている道が私の人生。

初めて乗るカヤックで切り開いていく3ヶ月間の冒険譚のページをめくりながら、
そんなことを思った。

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