この季節が来るたびに手に取る一冊がある〜本のひととき〜

江國香織「つめたいよるに」

目にとまったのは古本屋だったろうか。

過去にハードカバーで読んではいたが、持ち歩きたくて文庫本を買った。

新潮文庫。薄くて軽い。

なのに21もの短い物語が収められている。

目次に並ぶ詩の一編のようなことばたち。

どんな物語なのだろうと想像が広がる。

順番に、いやランダムに読み始めていい。

気になるところからページを開くのも楽しいからだ。

どこか薄く靄がかかったような、幻想的な物語。その中に現実も混ざっている。

自分の体験と重ねたりした。

冬だけを描いたわけじゃないのに、どこか冬の気配がする、

しんとした空気感。

ふとした瞬間(たとえば台所でねぎを刻んでいるときなんかに)、私はつめたいよるの物語を思い出している。



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