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ムリせずに、そのままで|読んだ本

今回紹介するのは平野啓一郎さんの『私とは何か ―「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書)です。

人はたったひとつの個性しかないと考えるより、分人(相手によって態度や言葉づかい、話題を自然に変えている)と考えたほうが無理なく受け入れられるのではないか、という内容です。

前からこの本のことは知ってたんですけど、まぁいいかと読まずにいました。でも先日、小説『マチネの終わりに』での、主人公(蒔野聡史)の描写を読みながら、「もしかして、分人ってこういうことなのかも」と思ったところがあり、それを確かめてみたいと思って手に取りました。

心に残ったところはふたつ。

ひとつは、ある分人でうまくいかなくてつらいときは、うまくいっている分人を軸にしていくとよい、というところ。 気を抜くと引きこもりがちになるので、ときどき心を奮い立たせてイベントに行くのですが、たまに場違いすぎて居場所がなく、へとへとになってしまうのです。

そういうとき、もう少し社交的だったらなぁとか、雑談ができるようになれたらなぁとか思うのですが、自然体で過ごせない場所になじまなければいけない理由もないし、ムリしなくていいのかも、と思いました。

もうひとつは、「恋」と「愛」の違いについて解説したところ。この部分を読みながら、『きのう何食べた?』は愛で、『おっさんずラブ - in the sky-』は恋の物語だったのかなと思いました。

そして、『何食べ』は毎回のんびり見ていたけれど、『おっさんず in the sky』は1話のラスト(推しのシノさんの身に事件が起きた)のを見た後、最終回が放送されるまで見れなくなってしまった(次回予告のあらすじと動画しか見ていなかった)から、私は「恋」より「愛」の話が好きなのかもしれない、なんてことも。

ただ、『おっさんず in the sky』が嫌いだったわけではなく、最終回とゆく年くる年SPの配信を見てシノさんの未来が分かったあと、1話からゆっくり見てほっこりしたのですが。

ドラマや映画で激しい展開になるとその場から逃げたくなってしまったり、応援しているチームが不利な状況になるとそわそわしてスポーツ観戦ができなかったりするので、エンタメ好き、スポーツ観戦好きの方からしたら「そこが面白いのに!」と言われることもよくあります。

それじゃいけないな……と思って、これまでムリして頑張ってきたのですが、この本を読んだあと、わたしなりの楽しみ方で満足しているなら、人がどう思おうといいんじゃないかな、と思うようになりました。

年の瀬に弱いところがある自分をそのまま受け止めて、これを軸に分人を作っていこうと思えたことはとてもありがたく、来年に向けてよいスタートが切れそうな予感がしています。