「自分さえよければ…」が行き着くところは│読んだ本
なんとなくタイトルから内容が想像できたので、もともと読むつもりはなかったんですが、気付いたら買っててびっくりした本です(ホントに)。
棚に戻したつもりだったんですけど、買ってたんですねぇ。たぶん、ビジネス書なんてめったに紹介しない方が、SNSでこの本を紹介していたのが気になって買ったんだろうと思います。
この本はアマゾンの実態を描き出した本です。アマゾンは徹底した秘密主義を貫く会社ということで、著者自身が小田原にある配送センターで注文した商品をピックアップするアルバイトをするところから始まります。
このアルバイト、読んでて息苦しくなるくらい過酷です。休む間もなく倉庫内を歩き続けるだけでなく、商品をピックアップするのに目標タイム(それも、実現不可能な数値)をクリアーできるよう追い立てられます。壁にはポスターがたくさん貼ってあるそうなのですが、内容が数値目標だったり、注意を促すものだったりするので、歩いている間もリフレッシュできない雰囲気です。そして、1日の歩行距離が20kmに達することがざらで、体重がどんどん減っていく、とのこと。
でも、これだけではありません。上司に理不尽ないじめを受け続ける社員の話、出版社やマーケットプレイス出品者などが味わうアメとムチの施策、徹底した税金逃れ対策……など、単に商品を買っているだけでは気付かない、冷酷なアマゾンの姿が見えてきます。できるだけアマゾンは利用しないようにしよう、と思わずにはいられませんでした。
本書を読みながら、アマゾンは自社が儲かるためなら、相手(従業員、取引先)がどんなふうになろうと構わない、という思惑を感じていました。それはそれで、今はいいのかもしれないけれど、長い目で見たときに本当にそれでいいのだろうか、と思わずにはいられません。配送センターで働く人がいなくなったら、取引先が軒並みつぶれてしまうか、別のマーケットで活路を見出したら、困るのはアマゾンじゃないかな、と思うんですけど。
ジョージ・オーウェルの『1984年』には、本編とは別に付録がついています。この付録には、主人公がいた世界(オセアニア)で使われていた言語(イングソック)に関する研究結果がまとめられています。解説によれば、この付録があることで、オセアニアはそう遠くない未来に滅び、昔の言語が復活することを示唆している、とありました(うろ覚えなので、細かいところは違うかも)。消えてなくならないようにするために、今の体制が見直されることを願わずにはいられません。
話が横道にそれました。
幸か不幸か、わたしは比較的大きな書店に足を運びやすいところに住んでいるのと、ほしいものはすぐ手に入れたいと思ってしまうので、アマゾンを利用することはめったにありません。せいぜい電子書籍を買うぐらいです。
でも、もしこの先アマゾンでものを買い、発送してもらうことがあったら、配送センターで働く方々のおかげであることを忘れずにいようと思います。