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【詩】抗うひばり

渦巻く灰色の雲が

私の胸をかきみだす。

過去の忌まわしい思い出が

渦の目からあふれだしてきそうで

思わずきつく目を塞いだ。

やまない風鳴りが

私の心を絶え間なく揺らし

舞い散る木の葉が

私の運命を予感させる。

日は暮れようとしている。

すべてが闇に包まれれば

不安な心にも

帳が降りるだろうか。

疾風はますます鋭くなり

空はいよいよ混沌となる。

一匹のひばりが

懸命に羽ばたいて

力の限り風に抗っている。

大樹の陰で

風をしのごうともせずに

ただ、嵐に立ち向かう。

にごった空を目指すかのように

天へ、天へ

小さきものは突き進み

翻弄され

下界に押し戻される。

されどやめない

天空へ昇ることを

立ち向かうことを。


萎えた私の心が

揺らぐ私の心が

うつむいた私の心が

ゆっくりと空を仰ぎ

一歩だけ前に踏み出した。


一歩だけでよかった。

一歩だけだからよかった。

ひばりは空のかなたに消えていた。

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