読順⑦ソーシャルワークとの関連②難民申請者に対するセーフティネットの脆弱性(その2)

(本文は、移住連編の『相談ハンドブック』(2019年)を多分に参照・引用して書いています。そちらもご参照していただきたいと思います)

行政サービスを受ける権利

現在、日本において外国人であることを理由に制度の利用ができないという社会保障・社会福祉・医療制度は原則的にありません。これは、「難民条約」や「人種差別撤廃条約」、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)の「内外人平等原則」による規定があるため、国籍等による差別を禁じられているためです。

しかし、在留資格の種類や有無によって利用の可否に関する運用は制度ごとに異なります。また、制度によっては、国籍や在留資格にかかわらず利用できるとして運用されていた制度ではありますが、自治体によってその取扱いが異なり、在留資格がない、住民登録がないというだけで、本来ならば利用できる制度でも利用できないという取り扱いがなされる例も少なからずあったようです。

在留資格と住民登録

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上の表は、関聡介(2012)の論文中の表をもとに、筆者クロが大幅に加筆して作成したものです。

(「在留カード」とは、中長期に在留する資格があることを証明する「証明書」や「許可証」の役割を果たすものです)

在留期間が3カ月を超える在留資格(「短期滞在」以外)を有する外国人や、「仮滞在」許可者、一時庇護上陸者は、外国人住民票の登録対象となっています。(”3カ月”をボーダーラインにしているのね)

他方で、

3カ月以内の期間の在留資格しか有しない申請者や、”不法”状態(仮放免も含む)にある申請者は、外国人住民票の登録対象外とされ、在留カードの付与対象外でもあるために、行政サービスからも疎外されがちな状態に置かれています。

住民登録の無い外国人の制度利用

住民登録の無い外国人の制度利用については、2012年の新たな在留制度の開始に伴い、改正住基法附則第23条、およびそれを受けて発出された総務省通知(※1)に、(住民登録の有無に関わらず)利用できる行政サービスが掲載されています。(下にまとめた表があります)

※1「入管法の規定により本邦に在留することができる外国人以外の在留外国人に対して行政サービスを提供するために必要な記録の管理等に関する措置に係る各府省庁の取組状況について」(平成30年8月10日付、総務省自治行政局外国人住民基本台帳室、総務省自治行政局長事務連絡)。この「総務省通知」は2012年から改定され続け、最新の改定は2018年。2018年の通知では掲載された制度が19から26に増えました)

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この2018年の総務省通知に掲載されていない制度であっても、本来在留資格の有無にかかわらず利用できるはずの制度も多くあります。住民登録のない外国人や非正規滞在外国人を明確に排除している(筆者クロ注:適用除外の要件を設けている)制度は、「国民健康保険法」と「後期高齢者医療法」だけです。(中略)現状では、国は法律の規定を通知や疑義回答のような形で制限しており、極めて不正常な状態といえます。(太字、カギカッコは筆者クロによる)『相談ハンドブック』(2019年)p23-25.

自治体の窓口で本来利用できる制度について、在留資格がないことや住民登録がないことを理由に利用を拒否された場合は、この通知を示して誤った取り扱いを正していく必要があります。

さらに、制度利用を断られた場合は、行政不服審査法による審査請求により不服申し立てを行う必要が出てくることもあります。その場合は、制度に詳しいNGOや法律家に相談してください。

個別の制度の取り扱いについては、『相談ハンドブック』の第3章に詳説されています。これを参照されると良いでしょう。

<参考文献・URL>

・NPO法人難民支援協会「難民(申請者)への社会保障サービス」https://www.refugee.or.jp/for_refugees/info/social_jp.shtml

・関聡介「続・日本の難民認定制度の現状と課題」『難民研究ジャーナルNo.2』難民研究フォーラム(2012年)

・NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク編『外国人の医療・福祉・社会保障 相談ハンドブック』明石書店(2019年)
※本文中では、『相談ハンドブック』と略して書きました。