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古文の主語を決めるヒント

古文で難しいのは、主語が分からないことですよね。たとえば、次の文章「今鏡」の最初の文を読んでみましょう。これは俊敏な行動が有名な藤原成通(なりみち)についての話です。

宮内卿有賢と聞こえられし人のもとなりける女房に、しのびてよるよる様をやつして通ひ給ひけるを、さぶらひど も「いかなるもののふの、局へ入るにか」と思て、「うかがひて、あしたに出でむを打ち伏せむ」といひ、したくしあへりければ、女房いみじく思ひ嘆きて、例の日暮れにければおはしたりけるに、泣く泣くこの次第を語りければ、「いといと苦しかるまじきことなり。きと帰り来む」とて、出で給ひにけり。

よく、

・「〜、」があると主語は変わらない
・「〜、」「〜、」があると主語が変わるサイン

ということが語られます。これらはどれくらい信用できるでしょうか?一文目を見てみましょう。「女房に、」とありますね。「よるよる様」ともありますね。ここで主語が変わっているのでしょうか?まず、これはちょっと前提知識があったほうがいいかもしれません。

☆古文の世界では基本的に、「男」が、こっそり「女」の家にやってきて、一夜を過ごします。そして明け方に出ていくわけです。

これを前提として考えてみましょう。成通がこっそり女房のもとを訪ねたわけです。で、女房の屋敷の家来たちが、「夜になってこっそりやってくる怪しいやつはだれだ!?」と思った、と考えることができます。

じゃあ、「に」「を」は主語の転換のサインではない!?

また、「に」「を」があるからといって、必ず主語が変わるわけではありません。「女房に、」や「よるよる様を」の「を」「に」は、目的格を表す助詞で、いわゆる「主語が変わるサインとなる接続助詞」ではないのです。「通ひ給ひけるを」の「を」は接続助詞です。
接続助詞「を」「に」は、

・連体形+「を」
・連体形+「に」

という形をとります。「給ひける」は連体形ですね。

だから「を」「に」があるから主語転換するわけではありません。しかも、たとえ接続助詞「を」「に」だったとしても、主語が必ず変わるとは限らないのです!だから、この知識は信用しすぎると危険です。

第一文の冒頭の主語の結論です

最初から、「通ひ給ひけるを」まで、大まかに見れば主語はずっと成通です。それ以降は「(女房の)さぶらひども」です。

もちろん、細かく見れば、たとえば青のところの「もとなりける」の主語は女房ですけどね。ざっくり、大まかに読んで文脈をつかめるかどうかが大切です。

最後に

主語を考える上で大事なのは、

・物語のシチュエーション
→古文は基本的に大して難しい話はしません。主な登場人物も2,3人程度。今回もマジでしょうもない話ですよね^O^。楽に構えましょう。

・敬語の使い方

などです。「に」「を」はその補助知識くらいの位置づけがいいかもしれません。

「て」だと主語が変わらない、というのはかなり確率が高いですけどね。


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