競艇場近くで見つかった『名前のわからない死者』たち

病院勤務だった母から聞かされた、ギャンブルで本当に人生そのものを終わらせてしまった人の話です。

昔、競艇がとても賑わっていたころ、

競艇場の近くでは、『人生をかけた勝負に負けた人』が、自らの人生に見切りをつけたとしか思えない遺体が見つかることがあったそうです。

死因は様々ですが、共通しているのが、「身元が分からない」ということ。

そういったご遺体が見つかると、警察から連絡が来て、病院に収容されます。

病院では、警察立ち合いのもとで、死亡確認と、身元がわかりそうな所持品がないか探すことになるのです。

ですが、何も持ってない。

財布、免許証、保険証、その他に誰かの連絡先や最後の思いを書いたメモ、そういったものはなにもない。

当然のことながら、ポケットからでてくる所持金に、紙幣はありません。
硬貨をもっていても、電車賃やバス賃にできるような額ではありません。

その「身元の分からない人」はどういった格好をしているかというと、ダラシナイ恰好の人は少なくて、男性ならアイロンの効いたYシャツにスラックスに革靴、女性なら身綺麗な普段着。
ギャンブルの沼に陥っている人だとは、一般的に連想できない服装。

もしかしたら、その日の朝、普通に仕事や知り合いに会いに行くように家をでたのかもしれません。

ですが、その日は、1日の終わりに家に帰るのではなく、別のところへ旅に出てしまった。

身元を特定されそうなものをすべて処分して、自分というが誰なのかわかる痕跡を気づかれないようにして、人生を終わらせる。

その人が、最後に大切な誰かに残したいことは、「どうか、私のことは忘れてください」と、いうことなのかもしれません。

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