【小説】「twenty all」138
都合ヶ丘高校は、現在テスト期間中なので、午前中にて終業となる。
荷物をまとめた里香は、さあ「雷王」でも行くべーと思いながら昇降口へと向かっていた。
「河上さん」
1階の階段を降り切ったところで、声を掛けられた。
「・・・ですよね?」
「ええ、そういうあなたは?」
目の前に幾分緊張気味に立っているツインテールの1年生を見て、里香は尋ねた。
「私、1年A組の紺野真琴と申します」
真琴は、ペコンと頭を下げた。
(来たか)
池谷から事前にその名前を聞いていた里香は、まじまじと彼女を観察した。
(可愛い娘ね、ソラ君と似合いそう)
二人が並んでいる姿を想像してしまった彼女は、何となく面白くなくなった。
結構遠慮なく見られているからか、居心地が悪そうにしていた真琴は話を切り出した。
「河上さん、今からちょっと宜しいですか?」
彼女の申し出に、里香は少し首を傾げながら考えて、応えた。
「場所、どこでもいい?」
「ハイ、雷王ラーメンチャーシュー多め、お待ちィ!」
「ありがとー♪」
店員の兄ちゃんが持ってきた豚骨スープギトギトラーメンの前で、満面の笑みを浮かべた里香が言った。
「いやー試験疲れにはこれに限りますなあ♪」
嬉嬉揚々と割り箸を取った彼女と対照的に、コップ水を前にした真琴は呆気に取られていた。
(なんてマイペースな人だろう)
(まあ、私もその類だから、タイプ的には嫌いじゃないかな)
(っと、感心している場合じゃなかった)
彼女は意を決して、口を開いた。
「私、国府田君の事が好きです!」
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