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【小説】「twenty all」215

 弓道場に入る前に、空良は三人娘に向かって言った。
「じゃあ、行って来るよ」
「はい」「・・・ああ」「頑張って下さい」

「どうした?吉田」
 二人目の返事が少し気になった空良は、観月に声を掛ける。
「別に」
 彼女は力なく答える。
「ふむ・・・観月にお願いがあるんだが」
「ん、なに?」


「優勝したら、祝福のキスをして貰えないかな♪」


「ええっ!!」

 意外な言葉をブッ込まれた観月は、思わず声が裏返った。

 はははと笑う空良に、静香の鉄拳と佳乃の回し蹴りが炸裂する。
「このセクハラ親父っ!」「先輩最低っ!!」
「のわあっ!」
 派手に吹っ飛んだ空良を見て、観月はぷっと吹き出した。
 彼が不器用ながら、彼女を元気付けようとしてくれたのが分かったからだ。

「看的頼むぜ、お前の元気が必要なんだ」
「・・・ったく、しょうがないなぁ」
 いつもらしさを取り戻した観月は、ぐっと親指を立てた。

「井隼」
 次に、記録係の静香の方を向く。
「一番冷静な判断が出来る場所にいるんだ。何か気付いたらすぐに教えてくれ」
「分かりました」
 静香は敬礼のポーズを取る。

「そして、月島」
 最後に佳乃を見た空良。
「はい」
「俺の弦、お前に任せた」
「・・・はい」
 彼女は、弦巻をぐっと握り締めた。


「お前達が居て、本当に良かった」
 空良は改めて3人の顔を眺めて、しみじみと言った。
「ソラ君、センチになるのは優勝してからにしてよ」
「そうだな」
 観月の突っ込みに、4人は笑った。

「円陣組もうよ、ソラ君」
「ああ」
 空良が差し出した手に、三人娘が順番に手を重ねていく。
「よォし、絶対優勝するぞッ!!」
「オオーッ!!!」

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