【小説】「twenty all」213
選手の控え場所となっている、風ノ宮体育館。
床に敷かれた畳の上で、鞄を枕にして仮眠を取っていた空良の元に、佳乃がやって来た。
「先輩、団体戦の準決勝まで終わりました」
「ん・・・そっか」
そこまで来たら起こしてくれと、空良は彼女に頼んでいたのだ。
佳乃は、幾分興奮気味に言葉を続けた。
「屋敷川高校が、負けました」
「そうか・・・え?」
空良は驚いて、身体を起こした。
彼女の話によると、屋敷川高校は団体準決勝で「伏兵」喜多野高校に18対17で敗れたとのことだった。
冷静になった空良が、確認の意味で聞いた。
「御角は、全部詰めてるんだろ?」
「はい」
落(団体戦で一番最後に射つ人)で奮闘していた御角の姿を思い浮かべ、佳乃が答えた。
「じゃあ、これで個人戦に全力投球って訳か、面白い」
空良は、ぐっと拳を握り締めた。
そんな彼の横に、佳乃はちょこんと座って口を開いた。
「先輩、今日は決勝も私が介添しますね」
「あ、うん、よろしくな」
「はい」
信頼してくれる彼の目を見て、佳乃は嬉しそうに答えた。
彼女の脳裏に、先程観月と交わした会話の内容が甦ってくる。
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