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【小説】「twenty all」209

「先輩、何か欲しいものありますか?」
 インターハイ県2次予選の前日。
 練習終了後、佳乃が試合用の矢をメンテナンスしている空良の元にやって来て聞いた。
「欲しいもの?」
「はい、ハチマキとか千羽鶴とか」
 さすがに千羽鶴は今から無理だろうな、と思いながら空良は暫く考えた。

「・・・替え弦」
「え」
「月島、替え弦作ってくれ」
「かえづる、ですか?」
 意外な答えだったのか、佳乃は目をパチクリさせた。
「確か先輩、この前新しいのに替えたところじゃなかったですか?」
「いや」
 1年前の出来事を思い出しながら、空良は自信を持って言った。
「・・・必ず、要るよ」
「そうですか、分かりました」
 一生懸命作ります、と言って、佳乃はその場を辞した。


 再び矢の手入れに戻った空良は、意識下に思考を廻らせる。
(いよいよ明日)
(すべてが決まる)
 パパパパァアン
(そう、パパパパン・・・ん?)
 我に返った空良は、音がした矢道に目を向け、絶句した。

 そこでは、3人娘が楽しそうに花火をしていたのだ。

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