見出し画像

【小説】「twenty all」217

「つあっ!!」
 パアァン、と派手な音を立てて4本目をねじ込んだ御角。
(あいつは?)
 退場しながら、首を廻らせる。

 タンッ!
 的の一黒に的中させた空良は、静かに弓を下ろした。


「あーもう、すごいわっ!」
 看的小屋から状況を確認していた観月は、例えようが無い興奮感に包まれていた。
 射詰め競射は1本でも抜いた時点でリタイヤとなる為、毎回の射に気を抜く事が出来ず、応援する側もかなり力が入るのだ。

(でも、大丈夫)
 彼女は、学校で彼がひたすら行っていた土手射ち練習を思い出していた。
(あれだけ基礎練習したんだもん、ソラ君が負けるハズ無いわ)


 一本入魂。
 インターハイ出場という見えないプレッシャーも重なり、本数が進むにつれて選手達に疲労が押し寄せていく。
 一人消え、また一人消え・・・
 そして、10本目。

 最後に射た選手の矢が、ジャッと的下を滑走した。
 残りの選手は、都合ヶ丘高校の国府田空良と屋敷川高校の御角修、二人だけになる。


 この瞬間、
 都合ヶ丘高校弓道部創立以来の悲願、「インターハイ出場」が、ついに決定した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?