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「束見本」という、真っ白な情報

束見本とは

今はもうブックカバーデザインはさせて頂いていませんが
その当時、何よりも好きだったのが「束見本」です。

束見本とは、指示された紙とページ数とで仕上がりで出来上がった見本の事です。
ただ印刷がされていないだけで全く同じ仕様で出来上がっているので、サイズや質感もここで確認できます。
これがないと、デザイナーさんにデザインを依頼する際、ぴったりのサイズ指定ができません。

出版社から束見本が届くと、それはカバーデザインが仕上がった一冊を頂く時よりワクワクしてしまう。理由は製本が好きなのと、何よりもシンプルであるからなのだと思います。

ブックカバーをデザインしたら、自分で一度印刷してみて、頂いた束見本にぐるっと巻いてみて仕上がりサイズを確認しますが
あまりに束見本が好きな為、もうどんなデザインも不要で、ただ中身が印刷されていれば良いのではないだろうか、と毎回思いました。

指定された紙が美しければ美しいほど、その思いは強く、せめて自分の手元にはそれをそのまま残しておきたいという思いが強く、私の本棚には束見本が沢山あります。
中身はもちろん真っ白なので、それをアイデアノートに使ったり、自分のスケッチブックにしたりするデザイナーさんもいますが(私はイラストレーターでもあるのでイラストブックに使ったらさぞや立派な冊子が出来上がるのだろうと思う)とにかくそのまま保管しておいて、たまに本棚から抜いては何も書いていない真っ白な本をパラパラとめくってみます。

不思議とその真っ白な紙の束は、スケッチやイラストやアイデアが書いてあるよりも、私の頭の中で形やイメージを思い起こさせました。

何も無い情報をインプットする

さて最近またこの束見本をよく取り出しては眺めたり、ひっくり返したりする機会が増えました。
その理由ははっきりしていて、以前のようにイメージを創る為ではなくて、もはや常に何かを見ていて目にものすごい情報が飛び込んでくる日々に私はうんざりしているのです。

スマホはもちろん、スクリーンから顔を上げてもあらゆる広告や文字、形、色の洪水が凄すぎて脳の処理能力が追いつかないのだと思います。
何も見なくても情報が入ってきてしまうので、あえて”真っ白な情報”を目に見せることで私の目や頭を休ませているわけです。

じゃあコピー用紙でもいいじゃないか、とも思うんですが、「情報を入れる」という行為があまりにも定着しているため、”本を読んでいる行為”の方が自然なんですねー。

さて今日の束見本はどれにするかね。

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