ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略

要約

基本的な考え方
各項目×各レベルの定義

1.今、消費者が企業に求めているものとは?

・企業は顧客にあらゆるものを提供しているのに、顧客が心底も止めているものだけは差し出せていない
・ファイブ・ウェイ・ポジショニングとは、顧客の目からビジネスを見て、顧客一人ひとりが意義を見出せる条件でビジネスを行い、さらに利益につなげる戦略
・価格、サービス、アクセス、商品、経験価値の5つの要素のうち1つで「市場を支配(世界で通用するレベルに達している)」し、もう1つの要素で「差別化」に成功し、残り3つの要素で「業界の標準(平均)」レベルを保っている。1つが5点、1つが4点、3つが3点。
・消費者が求めているのは商品やサービスの価値ではなく「価値観」。割引ではなく1人の人間として認められたがっている。
・5つの要素全てにおいて一流であること(一流の神話)は的外れ
 ┗1企業がすべてに秀でることは不可能
 ┗仮にすべてに秀でても価値を顧客に伝えられない
・成功している企業は皆、ターゲットとなる顧客が最も高く評価している要素に磨きをかけている
・現実的な戦略は、価値観を求める消費者に対して、企業が消費者に分かりやすい形で答える方法
・人間的な価値基準(信頼、敬意、正直)は日常生活から失われているため、商品はサービスに価値観を組み込んでいる企業に、意識的に見返りを与えている
・消費者一人ひとりのニーズと価値観に十分注意を払わないから、顧客はあっという間に、ライバルに乗り換えてしまう

・ファイブ・ウェイ・ポジショニングは、3つの前提に基づいている
①人としての価値観は、現代ビジネスの通貨である
 ┗人々の基本的ニーズに対応する企業は、競合他社のシェアを奪える
②人としての価値観がビジネスの価値を決める
 ┗質がよければ十分というわけではない
 ┗チャンスを生み出すのは、商品やサービスの提供を通して示される、人としての価値観
③今日の消費者にとっては、商品勝ちより価値観の方が大切だ
 ┗価値観という観点から、商品やサービスをいかに提供していくかが、差別化のカギ

・どんな価値観を体現すべきかを見つけることは、難しくない。顧客の言葉で顧客と話し、相手の言葉を受け入れる


2.ファイブ・ウェイ・ポジショニングという新たなビジネスモデル

・5つの要素の新たな意味合い(これが変わったのに気づけていない企業が多いため、消費者は満たされていない)
①価格の神話:企業は安さを誇るが、消費者は公正な価格を評価する
 ┗激安より適正で公正な価格で買いたい
②サービスの神話:基本をしっかりやること
 ┗企業が顧客の基本的・日常的な要望にきちんと答えられないなら、特別なサービスはほとんど意味がない
③アクセスの神話:もはや立地だけをさしてはいない
 ┗消費者は地理的な場所よりも店内の(物理的、心理的な)案内を重視する
④経験価値の神話:顧客との親密さがものをいう
 ┗消費者が求めているのは、敬意、人間らしく扱われること、自分だけの商品やサービスを提示されること
⑤商品の神話:最高の品よりそこそこの品
 ┗1回いっかい最高の買い物をするより「いつもよい」商品の方が好ましい

・消費者の期待
 レベルⅠ:消費者が企業を受け入れる(業界水準に達している)
 レベルⅡ:消費者が企業を好む(消費者が企業を好む)
 ┗ライバルとの違いを明確にし、ある程度の信頼を得ているので、消費者は彼らと取引したい
 レベルⅢ:消費者が企業を選び出す(市場を支配している)
 ┗消費者の心を完璧にとらえているので、顧客はもはや他の選択肢を考えない

・企業がこれほどの信頼を獲得できるのは、ひとえに消費者との交流を絶えず観察してきたから
・顧客が何に価値を感じるかを理解している
・長い目でみては市場シェアを伸ばすにはたまたまきた客を当てにしていてはいけない

※重要※
①完璧なスコアは第1の要素で5点(市場支配)、第2の要素で4点(差別化)、残り3つの要素で3点(業界水準)を獲得すること
②3点に満たない要素が1つでもあれば、持続不可能でありブランドにダメージが生じる
③市場支配や差別化を複数の要素で達成している場合は、度を超えており、経済的に適切な状態でない。そのため企業は結局、金銭的な問題を抱える
④3点の定義は消費者の期待が変化するたびに、頻繁に変わる可能性がある。期待の変化についていけず、期待されるレベルに達しない場合は、3点に満たなくなる

3.価格で市場を支配する

・価格と価格政策で一番大切なのは、公正さと適正さ
・価格の上げ下げは、消費者に不信感を与える
・価格が与える印象は、価格そのものより重要

レベルⅠ:受け入れる(標準に達している)
・公平さ
・公正で適正な価格を提供すること
レベルⅡ:好む(差別化が出来ている)
・一貫性
・一貫して魅力的な価格を提示している
・大幅値下げをして翌週元に戻っているという価格設定より評価が高い
レベルⅢ:選び出す(市場を支配している)
・代理人としての働き
・企業が公正で一貫性のある価格設定のみならずそうした企業の印象を確立し消費者と信頼関係を築けると、消費者が買い物に関する全責任をその企業にゆだねる

Ex;ダラー・ジェネラル
・第一の要素:価格
・第二の要素:アクセス
・成功のベースはシンプルさと価値観
 ┗モラルを大事にするみんなの会社をつくろう
 ┗経営陣はチームワークを促し、権限を与えたスタッフを励まそう
 ┗仕事と周りの人たちに敬意を払おう
 ┗前向きな環境がもつ力に目を向けよう
 ┗互いに助け合い、与え合おう

4.サービスで市場を支配する

・サービスは人が全て。優れたサービスは優れた社員から生まれる
・大切なのは「成功」とは何かについて、全員の意見が一致していること
・優れたサービスとは、顧客が求めるものを与えること(顧客が求めていないサービスは、サービスではない)
・サービスはきわめて主観的な要素で、人によってまちまちなだけでなく、日によって、いや刻一刻と姿を変える
・価格をまねるのは簡単だが、サービスをまねるのはそう簡単ではない
・消費者にとってのサービスとは「その企業そのもの」「その企業が体現しているもの」
・消費者は「販売前のサービス」「取引段階でのサービス」「販売後のサービス」を区別している
・「最低の」客にご褒美を与えて、「最高の」客に罰を与えがち

レベルⅠ:受け入れる(標準に達している)
・便宜を図ってくれる
・消費者の基本的な期待に応えること
レベルⅡ:好む(差別化が出来ている)
・教えてくれる
・商品やサービスの情報を与えてくれる
レベルⅢ:選び出す(市場を支配している)
・カスタマイズしてくれる
・消費者1人一人に合わせて商品やサービスをカスタマイズ

Ex;ダラー・ジェネラル
・第一の要素:サービス
・第二の要素:商品
・社員に権限を与えれば、最高のサービスが生まれる
 ┗1当たり前のことをきちんとやる
 ┗2もうひと頑張りする
 ┗3顧客の期待以上のことをする

5.アクセスで市場を支配する

・アクセスは立地が全てではない
・店内をスムーズにまわれて、探し物がみつかると感じられることをアクセスと呼ぶ
・アクセスはその企業ならではの経験価値への入り口
・新たな情報の枠組みの設計

レベルⅠ:受け入れる(標準に達している)
・簡単である
・簡単に見つけられるよう。店にさっと入れてさっと出れる
レベルⅡ:好む(差別化が出来ている)
・便利である
レベルⅢ:選び出す(市場を支配している)
・ライフスタイルにまつわる問題に解決策をくれる
・心理的なきずなやコミュニティ感覚を提供してくれるかどうか

・実店舗がアクセスで戦うなら:店の清潔さ、価格のみやすさ、便利な営業時間、店の構成とレイアウト
・オンラインサービスなら:料金を明確にすること、探し物をさっと見つけられること、困っているときや不意に必要になったときに頼りになること
・店の規模が大きい方が良いわけではない。

6.商品で市場を支配する

・消費者は最高級品を求めていない
・商品で差別化に成功できるのは、画期的でどこにもない商品で消費者に刺激や感動を与えた場合だけ
・客層にマッチしていれば、顧客の心に最高レベルのインスピレーションをもたらす
・最高の商品やサービスを1つだけ容易されることより、そこそこの選択肢を幅広く提供されるほうが重要になっている
・企業は商品が「よい、よりよい、最高」のどの区分に入ることを目指すかの「品質範囲」を選ばなくてはならない

レベルⅠ:受け入れる(標準に達している)
・信用できる
・基本的な期待に応え、最低水準の機能を果たす商品
レベルⅡ:好む(差別化が出来ている)
・頼りになる
・一貫してよい商品を提供し、品切れを起こさない
・約束通りの機能を果たす
レベルⅢ:選び出す(市場を支配している)
・インスピレーションをくれる
・ユニークで珍しく、見つけにくいもの、消費者にワンランク上のライフスタイルへのあこがれを抱かせるアイテム

・商品で戦いたい起票は、顧客対象となる層が受容する品質・価格の範囲を把握しなければならない
・潜在顧客が、ブランドをどの程度重視しているかも把握しないといけない

7.経験価値で市場を支配する

・経験価値とは楽しませることだ、楽しませさえすればよいと多くの企業が誤解している
・エンターテイメントだけでは、何度も店にきてもらうことはできない
・アクセスに物理的アクセスと心理的アクセスがあるように、経験価値にも2種類ある
①外的な経験価値:店で素敵な音楽がきける、シェフが目の前で料理してくれるのようなエンターテイメント
②内的な経験価値:ある企業とのやりとりにおいて、消費者が抱く感情と結びついた個人的な経験
・サービスとは、取引の結果顧客がその企業をどう感じるか。経験価値とは取引の結果、顧客がどんな気分でいるか
・企業が経験価値で市場を支配したいなら、カギは顧客と従業員のやりとり
 ┗従業員が、礼儀正しく敬意を払ってくれる
 ┗消費者が大切なお客様として扱われる
 ┗従業員が、消費者の要件に積極的に対応してくれる
 ┗従業員が、自社の商品やサービスのイメージを高めている
 ┗従業員の服装が、企業の雰囲気を反映している
 ┗店内の装飾、表示、レイアウトなどが、見ていて楽しい
 ┗消費者の経験価値を高めるようなBGMが流れている

レベルⅠ:受け入れる(標準に達している)
・敬意を払ってくれる
・ただ人としてあつかってほしい
レベルⅡ:好む(差別化が出来ている)
・気遣いを示してくれる
・私のニーズを心から気遣ってほしい
・リッツカールトンはハイレベルな気遣いができるよう具体策をとっている。従業員一人ひとりに顧客のトラブルや不満に対処する費用2500ドルを与えている
レベルⅢ:選び出す(市場を支配している)
・親密さを示してくれる
・消費者は企業との強いきずな、一定の親密さを感じる
・私を個人的に知っている
・オンライン企業のメール配信がそう

Ex;ビューリーズ
・第一の要素:経験価値
・第二の要素:商品
 ┗店の細部まで細心の注意
 ┗顧客がくつろいで長居できるよう、ウエイターサービスはなし
 ┗カフェのスタッフを訓練し、レベルで分類
 ┗カフェであちこちに表示やテーブルカードをおき、どんなサービスがあるかの説明
 ┗顧客からのフィードバックを積極的に募集
 ┗顧客からのフィードバックをもとに、インセンティブを設定し報酬

8.ファイブ・ウェイ・ポジショニングを実践するには

・第1の要素を変更するのにはリスクもつきもの
・差別化ポイントである第2の要素を変える方が、簡単でリスクも小さい
・まず、優先順位をつける前に、5つの要素全てを業界の標準レベルに引き上げる活動に力を入れるべき
・2つ目に、自社がどういう企業であって、どういう企業でないのかを把握すべき

ホテルリゾート業においては
 商品=施設
 経験価値=サービス内容と質
 サービス=カスタマイゼーション
星野リゾートでは経験価値を第一の要素、アクセスで差別化とした
アクセスという概念が単独で競争力維持になりうる。ホテル業界におけるアクセス=予約の容易さ

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