人口減少しても豊かになれるはず
世にはびこる嘘のひとつに「日本はこれから人口減少するから貧しくなる」というのがある。これが嘘だというのは、簡単な理屈を考えればわかる。
人口が減少したとしても、発行されている日本円の量が減る訳ではない。正確に言えば、日銀がその気になれば減らせるのだろうが、わざわざそんなことする必要がない。人口が減って、日本円の量が変わらないのなら、一人当たりの日本円の量はむしろ増える。結果、人口が減れば貧しくなるどころか、むしろ一人当たりでは豊かになるのである。
実際にはマネタリーベースではなくマネーストックで考えないといけないのでそこまで単純な話でもないが、人口の増加は一人当たりの資本の増加率にはマイナスで、人口減少する方がむしろプラスになるというのはマクロ経済の基本である。
では、一人当たりではなく日本全体のGDPはどうか。
たしかに全体で考えればGDPには減少要因である。だが、その影響は成長率をマイナスにするほど大きくはない。
人口減少と言っても毎年せいぜい1%ほどである。それに比べ、名目GDP成長率は、日本を除くG7各国のこの20年ほどを見ても2~4%の水準である。
先進国はどこも人口が大幅に増えているわけでなく、その中でこの水準の成長率を達成している。人口減少によって多少減殺されても1~3%程度は成長できるのである。
日本はそれほど成長していないというかもしれないが、日本固有の現象である。各国並みの金融緩和と財政出動を行えば、各国並みには成長できる。それは人口動態とは関係がない。
もちろん、人口減少は直接的な経済成長以外にも様々な負の影響があるし、喜ばしいことではない。人口維持政策は必要である。
がしかし、だからといって過剰に悲観的になると現実から乖離するし、得策でもない。先行きに対する過剰な悲観論が、本当に経済を悪くする。悲劇のヒロインを演じたところでいいことなど何もない。
マスコミなどは必死に悲観論を唱えるが、その方が視聴率も発行部数も良くなると思っているのだろう。悪い面は強調するがいい面は無視する。
実際の数値と確立された理論を知って、正しく未来に向き合いたい。