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評価経済社会の到来

自宅で過ごす時間が長くなってからYouTubeをよく見るようになった。たまたま見たホリエモンの動画に岡田斗司夫という人物と対談する場面があった。普段は知ったかぶりで上から目線(勝手なイメージ)のあのホリエモンが「なるほど~」と岡田斗司夫の話を感心しながら聞いていた。

岡田斗司夫とはいったいどういう人物なのかと調べると、彼もYouTubeで動画を配信しているらしい。彼はアニメからSFまで幅広い分野に精通するオタクであると同時に、世の中の動向を的確に捉える社会評論家のような真逆の一面を持つ。そんな彼のYouTubeチャンネルもオタク系と社会評論の動画が混在している。私はオタク文化に疎いのでジブリの解説動画などは正直よくわからないのだが、一方で社会の心理の核心を突いた理論的な洞察が語られる評論の動画は独特でいて新鮮なので興味深い。

そんな岡田斗司夫が言うには、彼は50年後の未来までの社会の変化が予想できているらしい。とても怪しい主張だが、彼が10年前に出版した本に書いてある予想がすでにいくつか現実になっていという。半信半疑の気持ちのまま、10年前に出版された本を現在の私が答え合わせをするつもりでその本を図書館で借りた。

読んだ。彼の提唱する理論には納得できるところも多かったし、彼の未来予想が実現するかもしれないと思った。現在の社会で起こっているいくつかのムーブメントも彼の予想の前兆として捉えることもできる。物事を見るときの新たな視点が自分に備わったというのが読んだ感想だ。

本のタイトルは「評価経済社会」。この本の大まかな主張は、

今は社会の価値観が大きく変わろうとしている転換期である。
人々がお金を第一としていた貨幣経済社会は終わり、
評価がもっとも重要視される評価経済の社会が到来する。

というものだ。貨幣経済は資本主義を生み出し、個人がお金を求めて競争する社会を作った。それと同じように評価経済社会は個人が自分の評価を求めて競争する社会だという。ではその「評価」とはいったい何なのか。簡単に言えば評価とはフォロワーの数だ。これまでの社会ではお金を多く持つ者が強者だったが、これからはフォロワー(評価)をより多く持つ者が強者となる時代が到来するという主張だ。さらにフォロワーが多い者がお金を稼ぐのは簡単だが、その反対にお金でフォロワーを獲得するのは難しいという。

たしかに芸能人やメディアで有名な人物が個人のブランドを展開するのはよくあることだ。個人ブランドはファンと知名度を利用して収益を上げる。はじめから一定数の顧客が確保されており、知名度もすでに高いので広告費かからない点で有利だ。そして近年、SNSの普及により大手メディアに独占されてきた発信力が個人にも開かれるようになった。インスタグラマー、YouTuberをはじめインフルエンサーと呼ばれる影響力を持った個人が現れるようになった。インフルエンサーとはつまりフォロワーの多い個人であり、まさにこの本で言われる「評価経済社会」における強者たちのことだ。インフルエンサーたちは個人のブランドを作ったり企業から提供を受けたりして収益を得ている。

もし私が10年前にこの本を読んで、「フォロワーの数が社会的ステータスになる」と言われても全く受け入れられなかっただろう。しかし、今の時代になって読むと本の内容に納得できることが多かった。一方で、まだ受け入れられない部分も多くあった。例えば、「これからはお金を消費するのではなく評価を消費する時代がくる」というものだ。今の私にはどうしてもそれが想像できない。岡田斗司夫はこの本で50年先までの未来を予想している。岡田斗司夫の予想が外れるのか、今のわたしが納得できないだけなのか。5年後、10年後に再びこの本を読んでまた答え合わせをしてみようと思った。

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