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誰にでも発生する相続に際して、考えておきたいこと

人が亡くなると発生する相続は、いつ自分の周りで発生してもおかしくありません。
そして、相続が発生すると、財産の多い少ないや、親族間での揉め事があるかないかに関係なく、一定の手続きが発生します。
今回は相続発生後の手続きについてお伝えします。


■相続の発生件数

厚生労働省の人口動態統計の年間推計によると、2019年(令和元年)の死亡数は138万1,098人でした。高齢者の増加を受けてでしょうか、死亡原因の3位はこれまでの「脳血管疾患」や「肺炎」ではなく、「老衰」となっています。
計算上は1日平均3,780件もの相続が発生していて、今後も増加することは確実ですから、相続の発生は、これからますますも多くの人が関わることになるのです。

一方で、相続発生後の手続きについて意識している人は多くありません。これまでにお受けしてきた相続相談の中でも、ほとんどの方が、「相続発生までは、自分には関係ないことだと思ってたんですけど、こんなに大変ならもう少し事前に考えておけばよかったです」という感想を話されます。

■相続発生後にやるべきこと

相続にかかる手続きは、一生にそう何度も経験することではないため、何から手をつけたらいいのかわからないという方も多いようです。

一般的な流れは次ようになります。

1. 医師(病院)から受け取った死亡診断書についている「死亡届」を役所に提出する
2. 役所から「火葬許可証」を受け取る →基本的に葬儀社の方に渡します
3. お通夜や葬儀などのセレモニーを行う
4. 生命保険金や遺族年金などの請求手続きを行う
5. 相続人同士が話し合って、財産の分け方を決める
6. 亡くなった人名義の財産について、解約や名義変更の手続きを行う

ちなみに、「5」がスムーズに進まないと、手続きどころではありませんから、親族間の意思疎通と円滑なコミュニケーションはとても大切になります。

では、実際にどのような手続きがあるのでしょうか?

もちろん、亡くなった方(=被相続人)が遺した財産によって、必要な手続きは様々ですが、多くの方に共通するのは次のような手続きです。

・銀行や証券会社など、金融機関の口座の解約と財産の移転
・保険金や共済金の請求
・遺族年金の請求
・健康保険証の返却と埋葬料など給付金の申請
・自宅不動産の名義変更(火災保険、火災共済なども)
・免許証やパスポートの返却
・車の名義変更(自動車保険、自動車共済なども)
・各種クレジットカードや会員証の返却、それに付随している保険等の請求


■相続手続きの前提となる戸籍の収集

そして、これらの手続きを進める前提となるのが、相続人を確定するための戸籍の収集です。

自分の家族構成がわからない、という方は少ないと思いますが、相続の手続きを進めるためには、「自分が相続人であること」を証明するために、「被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍」が必要となります。

戸籍って1人に1つだけではなく、結婚や転籍、法律の改正などで新しい戸籍がつくられるため、「出生からの戸籍」を集めると、それだけで何通にも及ぶことが一般的です。
ちなみに、この「戸籍調査」の過程で、思いがけない相続人の存在に気付くケースもあります。

以前、ずっとお互いが独身だと思っていた2人姉妹の姉が亡くなり、妹さんが手続きを進めようとしたら、若い時に姉が一度結婚していたことを初めて知った、というケースがありました。
「そういえば、20代の時に5年ほど離れて暮らした時期があったけど、結婚の話は一度も聞いていない」とのことでしたが、わずか2年ほどの婚姻期間中にお子さんが生まれていたため、お姉さんの相続人は、相談に来られた妹さんではなく、この「子」だったのです。

いずれにしても、各種の手続きを行う前に、戸籍による相続人の確定が必要です。

■法定相続情報一覧図の作成

相続人が確定し、財産も確定するといよいよ手続きのスタートです。
前提として「どこに、どのような財産があるか」の調査が必要ですが、それが判明していると、それぞれの窓口で手続きに必要な書類を受け取ります。

そして、その書類を提出する際の添付資料として、先ほどの「戸籍」がすべて必要になるのですが、ここでやっておきたいのが「法定相続情報一覧図」の作成です。

以前は、手続きを行う各窓口に対して、収集した戸籍の束をすべて提出し、確認してもらう必要がありましたが、2017年5月29日以降、「法定相続情報一覧図」の写し1枚で手続きが進められるようになっているからです。

法定相続情報一覧図をひとことで言うと「相続関係を示した公的な証明書」です。
集めた戸籍とその他必要書類を持って管轄の法務局で申請すると、不備が無ければ1週間ほどで発行されるので、これはぜひ準備しましょう。
法定相続情報一覧図が準備できれば、あとは親族間の話し合いの結果に沿って手続きを進めることになるのです。

■一番大切なのは相続人同士のコミュニケーション

相続人同士の話し合い(=遺産分割協議)がまとまらなければ、どれだけ準備していても手続きを進めることができません。それどころか、最悪の場合、調停や審判といった家庭裁判所での手続きに頼らざるを得ない可能性もでてしまいます。
だからこそ、相続手続きを円滑に行うために一番大切なのは、相続人同士のコミュニケーションなのです。

いずれにしても、相続という話題は一部の資産家だけに関係する特殊な話ではなく、ほとんどの人に関わる身近な話であることをまずは認識しておくことが大切です。
そして、手続きを円滑に進めるためにも、日ごろから相続人同士の意思疎通を図っておくことが重要なのです。

相続が原因で、今まで仲の良かった親子や兄弟間に深刻な亀裂が発生する、という悲しい状況にならないためにも、財産状況の整理、把握をしておくことはもちろん、親族間の日頃からのコミュニケーションを大切にしたいものです。


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