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オマエのする話は何も面白くねーけど。


オマエは見てておもしれーぜ、というのがチェンソーマンの第二部・主人公ヨルに対する一部主人公・デンジの台詞であるが。

さすがに何も面白くないことはない、ないのだけれど、僕の周りにいる素敵な学友の1人にそういう人がいる。
今日は、まあせっかくだから、彼についての話をしたい。


大学といえば、何か。
流石にこれは範囲が広すぎる。よって季節を限定したい。大学における春とは何か。
無論それは恋愛であるが、今回はそれを除くとしたい。すると何か。

新歓である。
映画、ドラマ、アニメに漫画に至るまで大学生活における四月の描写とは「桜とサークルのビラ」である。降り注ぐ暖かな日差しの中、桜は舞い散るし、学生は自身の団体のビラを配るものなのだ。

さて、では僕たちは今回ビラを配ったのかというと。
全然配っていないのである。
ではもらう側なのかというと、またそうでもない。ビラを配っているのを、横で見ている在学生役。それが今回の僕である。それも偉そうな顔をして、ビラがルールに則って配られているかに目を光らせるお目付け役。

なんとまあ、そんなものに誰が着目するのであろうか。
僕の知る限り、ビラを配るサークルの部員でもなく、配られる新入生でもなく、それを規制する運営陣にスポットライトが当てられた物語などない。
いやあるのかもしれないけれども。
取締り組織にフォーカスしたものなんて『夜は短し歩けよ乙女』の学園祭事務局長くらいなものだ。

さて、そんなものに命を懸けて──は言い過ぎだけれど──命を削って挑む男が彼だった。

実質的な勧誘期間はおよそ2週間ほど。正直長い。大学祭のように本番は3日、くらいであれば全力疾走でやれるものだが。そういうわけにはいかない。
それが朝から晩まで。うーん長い。

四年生は授業も終わって暇でしょ!というそこのあなた。それなりになんやかんややることなんてあるものなのだ。
彼も例に漏れず、本当は授業だってたくさん取っていた。ぜんぶ行ってなかったけど。大丈夫かよ。
勉強第一!と部員に言い聞かせている彼が最も勉学を疎かにし、これに心血を注いでいたわけである。

誰より早く学校に着き、誰より遅く学校から出る。
彼はあまりに実直で不器用だから、勘違いされてしまうこともある。

彼と知り合ってまだ2年やそこらだけれど、ちょっと振り返りたい。
彼を見て思ったのは「なんかいい奴そうだな」ということで、少し付き合って思ったのは「真面目な奴だなあ」で、もう少し経って思ったのが「こいつ、全然話おもしろくないな」だった。
案の定そいつは影が薄かった。だっておもんないもんな。仕方ないよな。

僕の敬愛する先輩の1人に「めっちゃ滑ってているのに場がシュールで面白い感じになる」人がいたこともあって、僕は彼をそういう立ち位置にしたかった。
ぜひ、そうやって目立って欲しかった。

その計画はあまりに功を奏しすぎ、結局彼は誰よりもたくさん喋るようになったし、その話は一向に面白くない。

だけれど、みんな彼のことが好きだ。
好きだと思う。‥好きだといいな‥好きと言って欲しい。


新歓の話に戻る。彼と同様に僕もお目付け役をしていたわけだが。
準備の段階から彼はアツすぎた。
開催の一ヶ月前からヘンテコな投稿をInstagramにあげ始めたりするくらいには、彼はアツかった。そんなに早くから熱を加えたらオーバーヒートしちゃうだろ。

期間中もよくわからない感傷的なことばかり言っていた。何を言っていたかは正直あまり覚えていない。いつも聞き流しているから、その癖が出てしまった。ごめん。

でも、最後にメガホンで終了を宣言した時、みんなが拍手をくれたのは、ありゃ嬉しかったな。ありゃよかった。なんかよかった。
みんなにこそ拍手だし、ありがとうは言わないといけないんだけれどな。
ありがとう。


ちょっと、彼の熱苦しさがうつってしまったのかもしれない。
───
彼のことね。
まあ僕は好きか嫌いで言うと好きだ。
だって彼の生き方はあまりにアツいし、不器用だし、無茶苦茶だし。
あまりにも、彼を見ているのは面白い。






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