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土地購入レースに勝たねば家は建たない|注文住宅の施主Log

素人の僕が土地購入の決断を下せるまでの時間

希望する土地との初めての出会い

2020年春頃から始まった僕の家づくりの旅。半年ほど経ったとき、購入直前まで進めた37坪の土地があった。
この土地は少し南西に傾いているものの日当たり抜群。土地の北側は80cmほどセットバックが必要で狭い道に隣接していたが、南側は1段下がって開けた5メートルほどの遊歩道。その先には護岸を含め幅20mほどの河川があり、耳をすませば川上の人工の滝から水が落ちる音が聞こえた。川を挟んだ向かいの家は互いの目線は気にならないくらい離れていて、住宅地としては思えないほど開放的な土地だった。
遊歩道は土地の裏手から階段を降りることでアクセスできた。未舗装ではあるものの車の通りはなく学生達のランニングコースとなっており、当時1歳半の子どもと遊ぶには抜群の環境というのが第一印象だった。
一つ気になっていたのは東西に伸びた細長い土地なので、建てる家は所謂鰻の寝床になっていたのだろうと思う。

土地選びの下準備はパートナー選びから

僕の家づくりは、パートナーとなるハウスビルダー探しから始まっていた。土地を具体的に探す頃には依頼先となる工務店は決まっており土地探しのアドバイスをいただく約束も取り付けていた。
物件検索サイトの情報を見ただけでは自分が望む家が立つかわからないし、土地を扱う不動産業者には家造りの相談は難しい。
家を建てるための土地購入なのであれば、専門家に相談できる状況をつくっておくことは重要なことだった。

また、家づくり初心者である僕が土地を見ただけで購入の決断ができる精神状態かというとそれは難しく、建築可能な家のサイズ、地盤、周辺環境、通勤手段等多くの情報を自身にインプットし、全て納得した上で初めて決断がくだせる状態にもっていくことが理想だった。
「建築可能な家のサイズ」の検討は、素人の独学ではリスクがあると考え、早々に工務店に土地の評価と家のサイズについて相談を持ちかけた。

土地購入の決断までのステップ

その他、土地の地盤については国土地理院のWebサイト、周辺環境や通勤手段についてはGoogle Mapや直接現地を散策することで自分で調べることができる。
地盤調査については下記のYoutubeを参考にした。

当時のメール履歴を見返してみると、この土地について工務店に相談したのが、2021年1月1日で、最後が3月6日になっている。実際には、最初のメールの1ヶ月前から現地へ訪れたり、可能な範囲での調査で検討の確度を高めていた。

工務店への相談を開始してから2ヶ月の間に、土地の評価、間取り相談、総額費用の見積もり依頼等を行っており、不動産仲介業者への相談や住宅ローン審査申し込みも行っている。
工務店への相談過程で、解体工事、地盤改良や遊歩道側の擁壁工時、北側斜線、隣地境界線の問題等 当初想定できていなかった問題への検討も迫られた。

結論としては、同時期に検討していた人に先を越されてこの土地の購入はできなかった。
3月1日の日曜日に不動産仲介業者との打ち合わせを実施し、その日のうちに妻と会話し購入のたまの意思決定はしていた。有給を使い3月5日の金曜日に住宅ローン審査の申込み、翌日に購入申込みをしようと思っていた矢先、その日の夜に仲介業者から別の申し込みが入ってしまったと連絡を受けた。
土地購入の交渉は基本的に先着順らしいので、こうなると対処のしようはなく、この土地の話は打ち止めとなった。

初めてだからこそ慎重になるし決断に時間もかかる

3ヶ月間の検討期間で、何度か現地へ足を運んだり自身でも可能な限りの調査を行った。工務店からもらった図面をベースに無料ツールで3Dモデルを作り実際の暮らしのイメージ、特に裏手の遊歩道で子どもと遊ぶイメージを具体的なものにしていった。
この3ヶ月は初めて土地購入に挑んだ自身の考えをまとめ、購入を納得させるために必要な期間であり、それ以上の繰り上げは無理だったと思う。(仕事でトラブって余裕がなかったのもある。)

もう一つ、僕の性格が大きく影響した結果これだけの期間が必要になったことも確かだ。僕は今まで経験したことのない領域に挑むとき、「知らない」で進めることを避ける傾向がある。
仮にリスクやデメリットがあったとしても知った上での判断をしたい。そのためのインプットに時間をかけるが、その分 土地購入に必要な決断へのスピードは失われていた。
今回の一件で、決断までに時間をかけすぎてしまっては土地獲得レースには勝てないことは身を持って理解できた。その上で次の活動にどう繋げるのかが、レースに勝つポイントとなる。

即断即決が勝負の分かれ目

決断スピードを上げる方法を試す

このとき得た教訓は、購入申込みまでの決断スピードを上げる事。
専門家からもアドバイスをいただいた。
場所、方位、交通、広さ等 土地選びのため条件を10個上げておき、その中から最優先事項を5個絞り込む。
最優先事項とそれ以外で配点に差をつけ、合計点が閾値をクリアしたものがあればすぐさま申込みをするという採点方式。
この方法は妥協できるものを整理しておくとも言いかえられる、100点満点の土地などないのだから。
ちなみにこの方法は自分にはあまり合わなかった。

実際にいくつか土地を見学し採点をしていったが、高得点になったからと言ってその土地を買いたいと思ったかというとそうはならない。
おそらく、本当に優先したい条件を自分自身でもわかっていなかったり、優先事項自体もその時々で変化する。
また、全ての項目を機械的に採点ができるかと言ったら難しい。見学時間、天気、景観、その時の感情等 何一つ同じ状況はないからだ。

決断に必要なファクターを理解する

僕の場合、決断に必要な条件として論理的な採点方式とは別に非論理的なファクターが存在した。それは「好きになれるかどうか」。
採点方式は条件外の土地を落とす「ふるい」の役割を果たしており、そこで生き残った物件に対し「好きになれるかどうか」の評価を加えていったのである。

好きになる条件は?と聞かれると非常に難しい。
ただ僕のこれまでの住まい選びを振り返ることで、「好き」になる条件はなんとなく見えてきた。
20代を過ごしたのは東京の吉祥寺という街だ。街の雰囲気自体が好きだったし、そのごちゃごちゃした街の密度が自分に合っていた。この街は若者に非常に人気のある街で、僕が住み始めて数年後には、住みたい街No1の常連となっていた。
また当時住んでいた賃貸マンションの内装は若干奇抜で特徴があった。契約を決めた理由の一つである。
あとは、最上階角部屋を好んで借りている。現在も京都市内のマンション最上階の角部屋を借りている。景色だけはかなり良い。

それらを統合すると、最寄りの駅前が閑散とした郊外の土地はきっと合わない。寂れた故郷を思い出すから。
また、両端を隣家に挟まれ周りを見渡しても家しか見えないザ・分譲地のような特徴のない土地に対しては、住めば都と言うが住まずに好きになることは難しい。
内装は家をつくってからになるから、屋内からの眺望にこだわりたい。
土地に対しこれらすべての条件を満たしてほしいわけではなく、定量化や言語化しずらい「違い」のある土地を求めていた。
その「違い」への欲求がどこから来てるのかわからない。僕の天の邪鬼な性格が反映されているだけかもしれないし、「好きになれるかどうか」の理由を探しているだけなのかもしれない。
ただ、「違い」が一つでもあれば好きになることはできるのだと思っていた。
削除されずにリストに残っていた土地には、「違い」をもった土地が含まれていた。

前回の敗戦の経験を活かせるか

土地購入の交渉は早い者勝ちだ。最初に申し込んだ人に優先的に交渉権が与えられ、よっぽどのことがない限りそもまま契約が進んでいく。
僕が気に入った土地を手に入れるには前回の経験を活かし購入申込みのアクションへの最短距離を走る必要がある。
自身で判断できる範囲と工務店への相談が必要な範囲を認識する。これらがきちんと整理できていれば、前回の検討内容を引っ張り出してショートカットで検討期間を短縮することができる。

建物の工事費は、同じ工務店であれば坪単価で計算はできる。建物の大きさは建ぺい率と容積率を確認すれば良い。
解体費、地番改良、擁壁工事等 土地固有の問題にかかる費用は工務店へ相談が必要だ。
事前にローン審査を済んでいて総予算が明確になっていれば、あとは予算に収まるかどうかだけ。
予算にはまり、その土地を「好きになれるかどうか」の評価が済めば、そのまま不動産仲介業者へ連絡してしまえばよかった。

そして前回の敗戦から約4ヶ月後、新たな土地をリストアップした。
6月23日に工務店へ相談し、そのまま7月8日には仲介業者へコンタクトを凝っていた。およそ2週間。
前回の土地で検討だけで2〜3ヶ月かかっていたのでかなりの進歩だ。
結果的に少し後の8月21日に申し込みを行っていたが、その間は他の申込者がいないかを仲介業者に確認しながら検討を進め行ったため、そこまで焦る必要はなかった。
不確定要素だった部分の概算見積もりを工務店に算出してもらい、その後購入申し込みをした。

即決とまではいかなかったが、早い段階でいつでも申し込める状態までもっていき、ギリギリのところで検討を進めていたので余裕のある精神状態で検討を進めることができた。
購入申し込み当日に該当の土地に対して問い合わせが入った旨を仲介業者の担当者から伝えられた。
その人は以前の僕と同じだ。あと一歩で購入に届かなかった。
このときすでに僕の申込みは終わっていたが、逆の立場に立ってみて思うことは、その差は一歩どころではなかったのかもしれない。

土地購入レースで掴んだ勝利

購入できた土地は、いくつかの「違い」を持っていた。
駅徒歩1分、川沿い、角地、建物密度の高い下町、その分道が狭いけど。そして国立大学へ徒歩圏内。
終わってみれば、以前に逃した土地を引きずっていたことがわかる。
川沿いの家に住むイメージを捨てられず、敗戦後も川沿いの土地を探していた。
僕の物件の検索範囲にどれだけ川沿いの土地が売りに出されてたかというと、条件に合うのは1つあるかないかだった。その一つを引き当てたことにより、出会いのシチュエーションにも「違い」を生んだ。
「違い」はときに優越感や自己顕示欲につながるかもしれない。妻に言うと怒られると思うが、このときは川沿いに住むことが「ネタ」になると考え、半分ノリで検討を進めていたもの事実だ。ただそれをきっかけにこの土地の評価を上げることにもつながっていった。

この土地を好きになった理由は検討の過程にもある。
問い合わせた先の仲介業者の対応がすばらしく、土地に対する僕の懸念点を一つずつ潰していってくれた。
京都の町家によくある連棟の切り離しについては、申し込み前に隣家の方と話をつけてくれた。また、水道やガスの引き込み状態の確認、隣接する私道や市道のオーナー、行政とのコミュニケーション。
自分でやろうと思うとどこから手を付けていいかわからないことをさっさと済ませてくれた。担当者に恵まれたとはこのことだろう。

良い土地のめぐりあいは、それを手に入れるための準備、良き取引相手、パートナーとの出会い、そして常に売出し中の土地の状況をモニタリングする自身の努力。これらの縁と運が重なり契約に至ったと言える。
こうまでしてレースに勝利し、購入した土地での暮らしが悪いわけがないし、ちょっと気が早いが終焉の地としても申し分ない。
建物のプランニングを控えているが、今からここに住むことが楽しみで仕方がない。


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