家造りとプロジェクトマネジメント|注文住宅の施主Log
なかなか筆が進まないまま1年近く経とうとしている。その間に、僕の新居は完成し新しい土地での生活も定着しようとしているが当時を思い出して書き出してみる。
プロジェクトの開始
土地の購入が決まったタイミングから厳しい時間制限のあるプロジェクトがスタートした。
僕の場合は土地代を住宅ローンで賄っており、土地の購入後直ぐにローンの支払いを開始し並行して新居の建築計画を立てていた。
さっさと家を建て入居しないとマンションの賃料とローンの2重払いが家計を圧迫する状態だった。
銀行からはローンの支払開始は入居後でも可能とは言われたが、例え支払いを停止したとしても停止期間分の金利は増え続けるので総額を抑えるためにさっさと支払いを開始した。
また、住宅ローン控除の法改正の影響もあり、有利な条件で減税を受けるには2021年9月中に契約を終え、2022年12月までに入居する必要があったのもスケジュールを意識する要因だった。
PMBOKに言わせれば、プロジェクトとは「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期的な業務である」とされている。
僕にとって、独自のプロダクト=自分の家、有期的=翌年末の納期は必須。といった感じのプライベートのプロジェクトとなった。
具体的な期間は2021年10月〜2022年12月。この1年2ヶ月が僕に与えられた時間だった。
QCDの優先順位
プロジェクトを進める上で品質・コスト・納期 の優先順位を決めていた。
最高の住まいを手に入れるために家造りを決断した。そのため自身の考える品質(住宅性能)をクリアする事は絶対条件だったが、住宅性能についてはそれを標準的にクリアする工務店をパートナーに選んでいたため、プロジェクトの中で細かくコントロールする必要はなかった。
内装について満たしたい要望がいくつかあったが、ある程度クリアできていれば予算内に収めることを優先したかった。
納期は前述の通り期限があり早く入居できればマンションの賃料も抑えられたが、それも支払総額を抑える事が目的のため、結果的に優先順位はコスト>納期>品質 になった。
お金を借りてまで家造りを始めるのだから、大抵の人は同じような優先順位になりそうだと思った。
工務店との信頼関係の構築
僕は普段の仕事では相手との信頼関係を一番重視する。それはこのプライベートのプロジェクトにおいても同じことだった。
無条件に相手を信頼するわけではない。自身が何社も面談して選んだ工務店なので、まずは自分の判断を信じた。
そして、相手を家造りの専門家としてリスペクトすること。
消費者という立場に立つと、時として無意識に主従関係を求めてしまうことがあるかもしれない。僕は終始相手を対等の立場であると意識した。
委託先だろうが委託元だろうが役割が違うだけで立場に主従はないはずだ。
要望の伝え方についても工夫はした。自身の要望は必ず「目的」を伝え、必要以上の「手段」の逆提案は避けた。
一部しか見えない素人丸出しの意見が良い方向に転ぶとは思えない。建築士がベストのパーフォーマンスを出せるようにコミュニケーションを取るのも施主の責任だと思う。
1年以上のプロジェクトでは途中で問題も発生した。僕に報告や相談がない状態で、コスト増加やスケジュール変更が発生した。
会社のお金を使う仕事であれば感情を排除することは簡単だが、自分のお金だとそれも大変だ。それでも、感情的になったところでいい方向には転ばない。
責任者と1対1の場を設定し、状況確認と再発防止について会話をする。合わせてしっかり自身の考えを要求する。相手の立場を考えた場の設定も重要だった。
課題の管理
普段の自分の仕事で当たり前のことは、一歩外に出れば当たり前ではなくなる。このプロジェクトで理解した一つの事実だ。
1年ちょっとの間に打ち合わせは30回ほど、議事録も打ち合わせの分だけ溜まった。次回以降に持ち越す課題も発生する。これはエクセルで課題を入力した。それらは自身で管理した。
大手のハウスメーカー等であれば仕事の進め方は違うのかもしれない。業界柄仕方のないことなのかもしれないが、打ち合わせの中で出た情報や課題の管理を相手に求めるのは難しいと悟った。
しっかりと管理された状態でプロジェクトを進めたければ、それができる会社を選んだらよい。僕が相手に求めたのは建築の技術だった。だから施主の責任範囲として、自身のプロジェクトを守る意味でも必要な部分は自分で手を動かした。
リスクとコストの管理
僕がのこプロジェクトで最大のリクスと考えていたのが、予算超過によって中途半端な出来になってしまうことだった。
感覚的なものだが、レベル100を目指して80%で終わるのを避けたい。それであればレベル80を100%で終わらせたかった。
それもあり、工務店には計画時に見積もりの更新を5回ほど求めた。
規格住宅のように仕様やオプションが決まっていれば、つけたり外したりで金額は出しやすいと思うが、僕が注文した住宅はすべて0ベース設計するもの。相手からしてみればある程度グロスでみるところもあると思うので細かくコストを算出するのは面倒だったと思う。
結果として、住宅ローンの借り入れ金額から170万円オーバーとなった。
途中に計画外の費用発生もありがならもこまめに金額算出をおこなっていたからこれで済んだともいえる。終わってみたら1.5倍になっていたなんて話を聞いていたので初めての家造りにしてはまずまずの出来だったかと思う。
まとめ
プライベートのところで、きちんとしたプロジェクトを安定して進行するには相手方の業界的な慣習や相手方を理解することが重要だと感じた。
コミュニケーションをまめにすることで相手の仕事の進め方を把握し、相手の進め方のどこにリスクが存在するのか、そこを見極め自身で手を動かすことを意識した。
普段の仕事と同じように信頼関係の構築を最上位においたため、相手の立場、仕事のしやすさを優先し自分の普通を相手に強要することがないように心がけた。