間取りと暮らしのシミュレーション|注文住宅の施主Log
家を建てると決めたときからいくつもの間取りを想像して、捨てていった。
家を一軒立ててわかったのは、間取りの良し悪しは自分や家族の暮らしがイメージできるかどうか。間取りそのものの議論は本質的ではないと思う。
間取りと3Dモデリング
建築計画を開始した時から間取りの提案が始まった。僕と同じように、多くの人にとってプロジェクト内のハイライトになると思う。
ただ、提案された間取りを素人の僕が初見で評価するのは難しかった。何が良くて何が悪いのかが分からないから。
建築士から提案された間取りを常に3Dモデルとセットで確認できればいいけど、建築士から3Dモデルを見せてもらったのは間取りが確定する終盤にかかった頃だった。用意するのにも工数がかかる。ある程度計画が固まってから3Dにしたい気持ちはわかる。
だからそれまでは僕自身で3Dモデリングを行った。
世の中便利なもので、無料で3Dモデルまで作れるオンラインツールもあるし、有料のソフトウェアも販売されている。
ただ、Mac OSの場合は、ソフトウェアの選択肢はなかった。
僕が使ったのはこちら。「Live Home 3D for Mac」
段階ごとのシミュレーション
間取りデータさえあれば、ツールで自動的に3Dモデルはつくることができる。3Dモデルがあれば平面図を眺めているよりもシミュレーションの精度は上がる。
段階にごとのシミュレーションの目的は下記の通り。
土地購入時
目的:土地に入る大まかなサイズの建物を確認するため。
候補となる土地があれば、広告の図面をキャプチャし、それっぽい間取りを作ってざっくりとしたサイズ感を確かめる。土地購入時の重要な判断材料だ。土地購入はスピード勝負となるので自身で対応できたのが良かった。
設計開始時
目的:設計に入るまでに間取りの要望を持っておくため。
間取りのヒアリングで要望を出すために、この段階でゾーニングのイメージは持っておいた。一つに絞らず、なんパターンか候補をもっておき建築士と相談した。
設計時
目的:提案された間取りのサイズ感を確認する。
建築士から提案された間取りをキャプチャし自身で3Dモデルを作成した。水回りの配置など、なんパターンも組み合わせをシミュレーションする。この段階ではパズルに近い。理想の位置、サイズを決断できる状態にもっていった。
間取りに家族の暮らしを重ねる
素人の僕が間取り図の良し悪しを判断するには、間取りに家族の暮らしを重ねる必要があった。
僕の頭の中で展開されたシチュエーションの一例はこんなもの。
妻がキッチンに立ち、僕がダイニングでPCを触りながら会話する。
料理の配膳。小さい子どもがお手伝いで参加する。
両手に買い物袋を下げた僕・妻が玄関から冷蔵庫に向かい食材をしまう。
玄関前の姿見で服装をチェックする。
家族3人が玄関に座って靴を履く。
外で遊んで帰ってきた子どもが泥だらけでお風呂に向かう。
お風呂から出た後、子どもの体を拭きクリームを塗る。子どもは暴れる。
家族3人分の洗濯物を室内に干し、取り込んで、畳んで、収納する。
洗面所の鏡の前で3人が並んで歯を磨く。ポジション争い。
階段に座って外を眺め、くつろぎ黄昏る。
階段の隙間から子どもがキッチンの妻に声をかける。
子どもが出したおもちゃを決められた場所に子ども自身で片付ける。
仕事から帰った僕が「ただいま」といい、2階に荷物を片付けにいく。
家族3人で川の字になって寝る。
成長した子どもと会議室に置くような大きな机で勉強、仕事をする。
等々
これらの日常が無理なく繰り返せる配置・広さ・距離・導線か。家族の1日、1週間、1年、5年後、10年後をイメージして、しっくり来るか。
こうして何度も頭の中や画面上でシミュレーションしていった結果、自身では納得のいく状態にはなった。今のところ家族からも文句は言われていないので、問題はない認識だ。
この時期は仕事以外の時間は、ほぼ間取りのことを考えていた。
住めば都というくらいなので、提案をそのまま受け入れても次第に慣れて気にしなくなったかもしれない。
でも、どうせお金をかけるのであればベストの間取りにしたい。これはケチくさい性格のせいなのだろう。
間取りの本や、Youtubeではオススメ間取りの紹介をしているのを複数見た。知識として入ってきても、リアリティはない。それはその人の暮らしのための間取りだから。自分の家族に合う間取りは自分で考え判断するしかない。
完成させすぎない、余白をもたせる
間取りを確定させる上で迷ったことは、今後の家族構成に変化があるかどうか。
今は子どもが一人だが、今後もう一人増えるかもしれないし増えないかもしれない。僕ら夫婦の年齢を考えると五分五分だ。
もっと先を見れば15年後長男は家を出ていくことも考えられる。夫婦二人で必要な部屋数はたかが知れている。
そんなこんなで部屋を一つ増やすかどうか迷った。
幸いにも我が家には部屋でも廊下でも無い大きなフリーのスペースが存在する。必要なときはそこに壁で仕切って部屋にできるようにした。
家を作っているときは、1年やそこらで人生の中の一瞬だ。
そこをスタートとして、かならず変化は訪れる。今後を想定して間取りを考えられるか。建築士には無理だ。当事者である僕にしか出来ないことだと自覚はしていた。
今後、僕や家族に様々な状況は訪れる。家族が増えるかもしれない。僕の足腰が立たなくなるかもしれない。
ただ、不確実な未来をいくら考えても仕方がないので何が起こっても柔軟に対応できるように間取りに余白を持たせておこう。
暮らしの変化に柔軟に対応できる、そんな家づくりをしていった。
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