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「#2019年映画ベスト10」でつぶやかれた作品を集計してみた結果と考察【詳細版】

Twitterの映画クラスタの間で年末の恒例イベントとなっている、年間映画ベスト10のハッシュタグでつぶやかれた作品を集計してみました。特に今年は大作・話題作が多く、国内興収もかなり賑わった年だったと感じています。

そんな中で、年間数十~数百本という規模で映画を観ているコアな映画ファン達がベストに選んだ作品は何だったのか?総計5,550人分のツイートを分析することで、一般の映画ランキングとは一味違った興味深い結果が見えてきました。

結果のダイジェストは上記のとおりTwitterにアップしておりますので、そちらを参照下さい。ここでは、製作国や上映時間等の情報を加味した、より詳細な結果について書いていこうと思います。少しボリュームがありますが、映画好きな皆様はぜひお付き合い下さい。

集計方法/前提条件

■集計方法
・Twitter上から「#2019年映画ベスト10」を含むツイートを抽出
・各ツイートに含まれる2019年国内公開タイトルをカウント
・一連の処理は全てプログラムで実行
■前提条件
・集計ツイートの対象期間:2019年12月15日~2020年1月15日
・2019年国内公開映画のソース:シネマカフェ様
・RTや引用リツイートは除外
・1ツイート内の記載タイトルが5タイトル以下のツイートは除外
・同じユーザが複数回投稿している場合は、最初のツイートのみカウント
・1ツイート内に同じタイトルが複数列挙されている場合は、最初の1回のみカウント(重複カウントや票稼ぎ防止)

「#2019年映画ベスト10」集計結果:詳細版

Twitterにアップした結果のダイジェスト版に、公開日や製作国、上映時間等の詳細を付加した結果が上記になります。(文字が小さくてすみません。見づらい場合は拡大して御覧ください)

ざっくり眺めての所感としては、やはり洋画、特にアメコミ映画が非常に強いなぁという感じです。特に今年は『アベンジャーズ/エンドゲーム』『ジョーカー』というマーベル・DCそれぞれの超大作が公開され、一種のお祭りのような盛り上がりがありましたね。

そんな中、『グリーンブック』『ブラック・クランズマン』『女王陛下のお気に入り』等、アカデミー賞を賑わせた作品達もしっかり上位に食い込んでいるのがとても興味深いです。また、『マリッジ・ストーリー』『アイリッシュマン』といったNetflix制作の劇場映画も(公開時期が遅かったにも関わらず、)ちらほら上位に入っており、強い勢いを感じます。今後もNetflixの劇場作品がどんどん増えていくのでしょうか。

逆に、『アナと雪の女王2』『名探偵コナン』等、興収ランキングを独占していたを賑わせたタイトルは、ここでは上位に入っていません。そして、ランキング上位の中に明らかに邦画作品が少ないですね。ここらへんの特徴に、Twitter映画クラスタのユーザ傾向や嗜好みたいなものが強く出てる気がします。

具体的に邦画/洋画の割合がどうだったのか?一般の興収ランキングと比べてどうなのか?以下、切り口を変えながら細かく見ていきましょう。

トップ100位の洋画/邦画の割合

まずは、トップ100位の作品について、洋画/邦画の割合について見ていきます。ランキング上位をぱっと見た感じでは明らかに洋画が人気でしたが、具体的な割合はどうでしょうか?

07_製作国割合

ということで、全体結果トップ100位の邦画と洋画の割合については上記のような結果となりました。トップ100位中の約7割が洋画3割が邦画ということで、明らかに洋画が人気ですね。
日本制作の映画=邦画それ以外は全て=洋画として扱っています)

ちなみに2019年の国内公開作品全部で約980作品ほどありますが、その中での洋画:邦画の割合はちょうど同じくらい(ほぼ50:50)になっているようです。よって、Twitterの映画クラスタは洋画に偏った傾向(嗜好)にあると言えそうですね。

Twitter上でも洋画派/邦画派で議論が紛糾している様子をたびたび目にします。昨今はアメコミ映画の大流行もあり、予算やリソースが桁違いのド派手なハリウッド映画がどうしても目立っているように感じます。そういう映画に観客が慣れてしまっている現状があるのでしょう。しかし、派手さやスケール感では勝らずとも、邦画は邦画の良さや魅力が必ずありますし、来年はもっと邦画の割合が増えると良いなと思う次第です。

トップ100位の上映時間の分布

次は、トップ100位の「上映時間」の分布について見て行きます。個人的には、「最近の映画はどれも長い!」と感じるところがあるんですが、実際のところはどうなのでしょうか。

08_上映時間の分布

結果は上記のとおりです。トップ100位のうち、約半分(48本)の作品が111~130分26本が110分以下26本が130分以上という結果になりました。特に注目すべきは、トップ100位中に、150分を超える長編が10本もランクインしている点ですね。

150分を超える作品、具体的には『アベンジャーズ/エンドゲーム(181分)』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(161分)』『ドクタースリープ(152分)』『アイリッシュマン(209分)』『バジュランギおじさんと、小さな迷子(159分)』などがあります。どれも比較的上位にランクインしている人気作ばかりです。「今年は長い映画が多かった!」という感覚が強いのは、話題作/人気作に長編が多かったからでしょうか。
※ちなみに2019年公開の最長作品は、『サタンタンゴ 4Kデジタル・レストア版』で、なんと圧巻の438分(約7時間)!!

逆に短め(90分以下)の映画は、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン(90分)』『映画 すみっコぐらし(66分)』『劇場版 仮面ライダージオウ(67分)』などアニメーション/特撮作品が多い結果となっています。個人的には90分~100分くらいに短くまとまった映画の方が好きなのですが、やはり大人向けの実写映画やハリウッド系の大作は上映時間が長くなる傾向にあるようです。

一般的には120分でも「長い!」と感じる人も多いなか、130分や150分の大作映画でも物怖じせず積極的に観に行くところがさすが熱烈な映画ファンという感じがしますね。また、長い映画でもしっかり高い評価を得ているところも興味深いです。「長い=悪い」というイメージは、Twitterの映画ファンの間では緩和されてきているのかもしれません。

トップ100位の公開時期の傾向

次に、トップ100位に入った作品を「公開時期」の観点で見ていきます。上位100作品を公開時期で分別した結果が以下の結果となります。

09_公開時期の分布

ランクインした作品が多い月、少ない月が別れていて興味深いです。昨年は4月・6月・11月特に高評価の作品が多かった月となっています。また、逆に年末・お正月シーズンの1月と12月、そして夏休みシーズンの8月は、高評価の作品が極端に少ない結果となっており、非常に興味深いです。一般的な感覚とは少しギャップが有るような感じがします。

では、それぞれの月に具体的にどんな作品が公開されたのか?トップ100位の作品を公開月ごとに整理した結果が以下となります。

09_02_公開時期順まとめ

お正月やGW、夏休みという大型連休では、ファミリー向けの映画やアニメ映画が多く公開される傾向にありますが、それらの作品はTwitterの映画クラスタの全体的な嗜好としてはあまりマッチしないのでしょう。逆に、6月や11月など、少し外した時期(オフシーズン)に公開される作品の方が、通好みの作品や映画好きのための映画が多いのかもしれません。(この傾向については、後述する興収ランキングとの比較でも触れます)

しかし、こうして改めて公開月ごとに整理すると、1年を通して本当に面白い映画が多かったなぁとしみじみ思います。毎週のようにどんどん新作が公開されて、観たい映画があっという間に大渋滞を起こしていました。今年も一体どんな傾向になるのか気になるところです。

洋画ランキング

さて、ここからは「洋画」「邦画」「アニメ/特撮」の3つのジャンルごとに結果を見ていきたいと思います。まずは、「洋画」作品ランキングです。

洋画に絞って見てみると、やはりアメコミ映画が非常に強い印象です。上位10作品のうち半分はアメコミ映画という結果になっています。昨年は、『アベンジャーズ』『スパイダーマン』を中心としたマーベル・シネマティック・ユニバースの作品群と、『ジョーカー』『アクアマン』『シャザム!』等のDCの実写作品群がぶつかり合う、非常に盛り上がった年でしたね。

また、上位のほとんどをアメリカ映画が占める中、唯一のインド映画である『バジュランギおじさんと、小さな迷子』も目を引きます。こちらは159分という長編ながら、『キャプテン・マーベル』『トイ・ストーリー4』等の話題作を抑えて堂々の19位にランクインしています。Twitterでも非常に話題になっていました。私もまだ未鑑賞なので、ぜひチェックしてみようと思います。

同じく、韓国映画の『バーニング 劇場版』も、アメリカ映画の話題作を抑えて上位にランクイン。これも148分ある大作ですし、興行規模的にもそう大きくはなかったはずですが、Twitterの映画ファンの多くがベスト10に選んでいます。人気が伺えますね。


邦画ランキング

さて、次は気になる「邦画」作品のランキングです。

新海誠監督の最新作『天気の子』がダントツの1位という結果になっています。そして2位は今泉力哉監督『愛がなんだ』、これも大変話題になりましたね。若い女性を中心に大ブームになり、Twitterでも連日盛り上がっていました。3位の『プロメア』も熱狂的なファンを多数生み応援上映絶叫上映が全国で活発に行われるなどすごい盛り上がりを見せた作品でした。Twitter上での話題性や盛り上がりが素直に反映された、納得感のあるランキングになっていると感じます。

アニメ/特撮ランキング(TOP20)

次は「アニメ/特撮」作品ランキングを見ていきます。こちらはやや数が少ないので上位20位までの発表です。

10_アニメランキング

1位はダントツで『スパイダーマン:スパイダーバース』、2位と大きく差をつけて圧倒的な支持を集めています。圧巻の映像表現で度肝を抜かれた人も多かったのでは無いでしょうか。アカデミー賞も受賞し、人気・知名度ともに文句なしの作品でした。

その他の作品もいずれも秀作揃いのラインナップですが、『ONE PIECE』『僕のヒーローアカデミア』等の話題作をぐっと抑えて『映画 すみっコぐらし』が12位にランクインしています。こちら、子供向けの絵本を映画化したほのぼのアニメーション作品なんですが、「子供向けだと舐めていたら、大人にも刺さる内容だった」などといった感想がTwitter上で大きく話題になり、大人の映画ファンの間でもブームが起こっていました。

また、14位には『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』がランクイン。こちらは2015年に製作されたフランスのアニメーション作品で、昨年待望の日本公開が実現したんだとか。恥ずかしながら本ランキングで初めて知った作品なのですが、めちゃくちゃ面白そうですね。小規模な公開だったにも関わらずこの順位の高さ、観た方の多くが高く評価していることが伺えます。要チェックですね。

2019年国内興行収入ランキングとの比較

さて、次は2019年の国内興行収入ランキングと比較してみましょう。興行収入ランキングは「映画評価ピクシーン」様のページから引用させて頂いております。

04_02_興行収入比較(洋画)

洋画の興収ランキングを見ると、まさにディズニー一強という感じになっています。マーベル・スタジオやルーカスフィルムの作品も含めて、10作品中6作品はディズニーです。すごい。

しかし興収面で1位の『アナと雪の女王2』や、5位の『ライオンキング』は、今回の洋画ランキング中では上位には入っておらず、大きく順位を落としています。ファミリー層や一般映画ファンと、Twitterのコアな映画ファンのレイヤーの違いが大きく表れていますね。

また興収ランキングでは2位の『アラジン』は、ディズニーの人気作品の実写化であることと同時に、監督をガイ・リッチーが担当することでも話題になりました。同監督は『コードネーム U.N.C.L.E.』『シャーロック・ホームズ』などで一部のファンから熱狂的に支持されており、今回のアラジンもファミリー向けのディズニー作品でありながら、コアな映画ファンからの注目度も高かったものと思われます。

04_01_興行収入比較(邦画)

次は邦画の興収ランキングを見ていきましょう。邦画は、洋画に比べてさらに大きく差が表れる結果となりました。1位の『天気の子』を除き、興収ランキング上位の作品はいずれもTwitter上の邦画ランキングではトップ10に入っておらず、大きく順位を落としています。一般に人気の作品と、Twitterの映画ファンが評価する作品の間には大きなギャップがあるようです。

また、興収ランキングの作品の傾向としてファミリー向け/子供向けの作品やアニメ作品の割合が非常に大きいことも、ギャップの要因のひとつでしょうか。逆に言えば、日本国内ではそういったジャンルの映画しか数字が取れない(人が見に来ない)現状が強く表れていますね…。

Twitterのコアな映画ファンが高く評価するような作品が、なかなか世間的に評価されない/多くの人が観に来てくれない、この現状が、インターネット上で時折起こる邦画についてのネガティブな議論を呼ぶのでしょうか。ファミリー向け/子供向け以外の国内映画市場が、もっともっと盛り上がってくれることを強く願います。

キネマ旬報ベスト・テンとの比較

続いて、由緒ある映画ランキング「キネマ旬報」の年間ベスト・テンとも比較してみましょう。「キネマ旬報」のベスト・テンは、映画評論家や映画雑誌編集者等の専門家の方々が選出した1位~10位の映画をスコアリングして算出されたランキングになっています。

引用元:キネマ旬報ベスト10公式HP

05_02_キネ旬比較(洋画)

まず洋画のベスト・テンから。『ジョーカー』が両方のランキングで1位を獲得しており、その他の作品についても比較的相関があるように感じます。ベスト・テンの約半数の作品が、Twitter上の今回のランキングでも20位以内に入っていますね。

Twitterのランキングと少し差があるところでは、キネマ旬報ベスト・テンの8位に『象は静かに座っている』がランクインしています。

中国の新鋭監督が手掛けた群像ドラマで、234分という大作です。ベルリン国際映画祭で複数受賞をしている注目作ですが、これがデビュー作となるフー・ボー監督作品完成直後に自ら命を絶ち、本作が遺作になってしまったんだとか…。なかなか重厚そうな作品ですが、じっくり腰を据えて鑑賞したい一本ですね。

05_01_キネ旬比較(邦画)

続いて邦画ベスト・テンです。こちらも、邦画の興行収入ランキングに比べて相関が見られる結果となりました。『宮本から君へ』『蜜蜂と遠雷』『愛がなんだ』など、Twitter上でも評価の高かった作品がベスト・テンでも上位に入っています。

キネマ旬報のベスト・テンというと、かなりマニアックというか、玄人向けなラインナップになっているイメージでしたが、この結果を見ると、Twitterの映画ファンにもコアな映画通がたくさんいるのがよくわかります。大衆的な娯楽作品だけでなく、芸術的/文化的な映画も幅広く鑑賞されていて、皆さん本当に凄いです。

Filmarks満足度ランキングとの比較

さて、続いては国内最大級の映画・ドラマレビューサービス「Filmarks」さん満足度ランキングの結果を見ていきましょう。こちらは、サービス内でのレビューの満足度(★の数)をベースに算出されています。

引用元:2019年 映画・ドラマ満足度ランキング発表!満足度No.1は『アベンジャーズ/エンドゲーム』と『宮本から君へ』《Filmarks調べ》 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000193.000008641.html @PRTIMES_JPさんから

06_02_Filmarks比較(洋画)

まずは洋画ランキングからですが、Filmarksでの満足度と、Twitter上で評価はかなり強い相関があることがぱっと見てわかります。2つのサービスのユーザ層や映画の好みはかなり似ているのかもしれませんね。

また、この満足度ランキングでは『ジョーカー』を抑えて『アベンジャーズ/エンドゲームが』大きく差をつけて1位になっています。10年以上に渡る大プロジェクト(MCU)の集大成的な盛り上がりと、豪華な見せ場の連続に大興奮した人も多かったのではないでしょうか。私も劇場で鑑賞しましたが、興奮のあまり咽び泣く人や歓声が漏れている人がたくさんいたことを思い出します。

06_01_Filmarks比較(邦画)

つづいて邦画の満足度ランキングです。国内の邦画興行収入ランキングと、今回のTwitter年間ベストのランキングの中間といったようなラインナップになっていますね。『プロメア』『見えない目撃者』『新聞記者』といったTwitter上で評価の高かった作品に加えて、『コンフィデンスマンJP』『ONE PIECE』など興収成績の良かった作品もランクインしています。

また、ツイッター上では高い評価だった『愛がなんだ』が、この満足度ランキング上位には入っていない点が興味深いですね。2つのサービスのユーザ層や嗜好の差が出ているんでしょうか。同じく、Twitter上の評価やキネマ旬報のベスト・テンでは上位だった『蜜蜂と遠雷』なども入っていません。

まとめ

ということで、Twitterの映画ファンの間で恒例となっている年間映画ベスト10の集計結果を、様々な観点から見てきました。いかがでしたでしょうか?一般的なランキングや他サービスのランキングと比べることで、Twitterの映画ファンの特徴(らしさ)みたいなものが何となく見えてきたんじゃないかと思います。

興行収入の成績、批評家や有識者の評価、レビューサービスの満足度等、映画作品の評価や順位付けを行うにあたって様々な観点/指標/方法があると思いますが、個人的には今回のようなTwitterの映画ファンの生の声(生の評価)というのはとても貴重で価値があるデータなんじゃないかと思っています。

毎週のように映画館に通い続ける生粋の映画好きの皆さんが、心から素直に出した年間ベスト10です。純粋に選びぬかれた10本です。140文字で気軽に投稿できてしまうTwitterだからこそ、自然体な意見が出てくるんだと思います。(作品を選択して投票する形式など比べ、圧倒的に心理的ハードル/作業コストが低い)

チラシや予告編を見ても「ふーん」となっていた映画でも、熱心なファンから熱く語られると「観に行くか!」と心が動く時があります。当然その逆のパターンもあったりますが、良かれ悪かれ、オタクの純粋な想いや熱量には、人の心を動かす力がある気がします。面白い映画や、観たい映画を探すとき、Twitterの映画ファン達の声を集めて算出したこの結果(ランキング)が、その一助となれば嬉しいです。

また、これまで書いてきた内容や今回の結果について、皆さん様々なご意見・ご感想があるかと思います。ぜひ積極的にコメントやつぶやきを投稿して頂ければ幸いです。私自身全く初めての試みでしたが、結果を色々まとめながら色々と勉強になりましたし、素直に面白かったです。来年もぜひやってみようと思いますし、もっと色々改善していければと思っています。かなり長くなりましたが、ここまでお付き合い頂きありがとうございました!

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