進化の仕方　～【櫻坂46】ゆったりとした成長がもたらしてくれるもの～

以前、進化の速度がグループの活動期間と比例してしまう傾向があることを書いたことがあった。
「急激な進化＝短い活動期間」という理論なのだが、これは古くから言われているものであることを、『易経』にある言葉「風山漸ふうざんぜん」を使って紹介した。

櫻坂46となってからは、二期生が中心となって活動が展開されているが、彼女たちが欅坂46の二期生として加入してから、約3年半が経っている。

ここで比較するべきは、欅坂46の一期生と、けやき坂46の一期生の活動である。
欅坂46は、2016年4月6日にデビューしてから、凄まじい快進撃を見せた。
デビューした年に3枚のシングルを出し、紅白に出場も果たしている。
紅白に出るに当たって、急場しのぎで開催された単独ライブも大成功を収め、同月にフェス（『COUNTDOWN JAPAN』）にも参加し、アイドルというカテゴリでデビューしながら、現在にも繋がる「アーティスト」路線を確立した。
2016年には冠ラジオも開始され、メンバー全員が出演するドラマも放送されている。
前年8月に結成されてから、歌やダンス、演技などのレッスンが繰り返されているはずなのだが、芸能活動未経験のメンバーが大多数であったため、促成栽培の一面があったことは否めないだろう。
それでも、TAKAHIRO先生をはじめ、「チーム欅」と言われる一流のクリエイターによるサポートが得られたことで、彼女たちの「かっこいい」路線が世間にも知られるようになっていった。

「欅坂46かんじけやき」のデビュー年からの大活躍と比較すると、「けやき坂46ひらがなけやき」は、ずっと活動形態も決まらないまま、ひたすらライブを開催することから始まっている。
単独のCDデビューもなく、漢字欅のシングルにカップリングとして楽曲を収録するスタイルがずっと続き、2017年の全国ツアーでも、自分たちの楽曲だけでは足りないことから、漢字欅の楽曲も披露しながら、地道な活動を余儀なくされていた。
しかし、そこで磨かれたダンスや歌、MC力は、今の日向坂46の活動にも、しっかりと活かされている。
ライブ活動を続けながら、単独ドラマ、単独舞台も経験しており、人気の上昇スピードに合わせるように、活動を拡大していくスタイルは、彼女たちの現在の活動の地盤を形成する方法として「正解」であったことは、今の日向坂46の活躍が証明してくれている。
2016年5月から始まった12人による活動が、日向坂46となって花開くまで、3年という月日を要した。
この期間に培ったパフォーマンススキルやバラエティースキルに加え、デビューまでの苦労や感情も、一つの物語として語られることで、世間から共感が得られる地位も手に入れることが出来た。
日向坂46としてデビューするまでの3年間が、今の大活躍の基礎となっていることは間違いないだろう。

櫻坂46として、表題曲センターを務めている二期生も、楽曲のオリジナルメンバーになるまでの期間が長かった例と言えるだろう。
彼女たちがグループに加入した後、初めて参加するはずであった欅坂46の9枚目シングルは発売が見送られ、櫻坂46となるまで、シングルが発売されることはなかった。
欅坂46のラスト曲「誰がその鐘を鳴らすのか？」に全員参加したことで、やっとオリジナルメンバーとなる夢は実現された。
パフォーマンスに関しては、全国ツアーや東京ドーム公演を経験し、紅白やフェスにも出演をはたしているのだが、ドラマや舞台の機会が与えられることはなかった。
2018年11月に加入してから、櫻坂46となった2020年10月までの約2年、とかく不遇と言われがちな「ひらがなけやき」のメンバーよりも、思い描いていた活動が出来ない時期を過ごしている。

このように活動できない期間でも、きちんとレッスンを重ね、スキルを磨いていたのだろう。
櫻坂46としての4枚目で、今までのダンス中心のパフォーマンスから、歌中心のパフォーマンスにシフトチェンジできたのも、彼女たちの日頃からやっているだろう「個々の精進」がもたらした結果であることは間違いない。
音楽番組でも、4回あった出演機会のうち、2回の生放送で、しっかりとした実力を見せてくれた。
じっくりと時間をかけて育まれた実力が、彼女たちを「本物のアーティストの道」へと導いていることは、疑いのない事実である。
パフォーマンスについては、既に定評のある一期生と一緒に活動をしていることも、彼女たちにとって、プラスに働いていることは確かだろう。

最近の冠番組やインタビュー記事などからも、一期生と二期生の関係性が、非常に良好であることは画面からも伝わってくる。
そのような様子を見かける度に、これからのさらなる活躍をついつい想像してしまう。
「ゆったりとした進化」が、長く盤石な活動期間をもたらしてくれることを、彼女たちがきちんと証明してくれそうである。