雄弁な語り部たち ~欅坂46からの系譜⑤~
平手さんが注目される理由として、「ミステリアスな雰囲気」という要素が、よくあげられる。人は、神秘的なものに対して、強い興味を示す傾向があるからだ。
秋元康氏がたびたび出す話題として、「深読みされるのがスター」というものがある。
実際の平手さんは、どうだったのだろう。
彼女は、CDデビュー当時から、ラジオパーソナリティーを任されるくらい、話すことがうまい。
年齢的なものもあり、知らない言葉が多かったりもするが、それでも、自分の言葉でしっかりと気持ちを伝えてくれることから、好評を博していた。
そんな彼女も、ライブやパフォーマンス、MVについては、余り多くを語ることはなかった。
あくまでも、アーティストとして、魂を込めて表現したものについて、受け手側の感性や想像力に委ねるという姿勢を貫いていたように思う。
TAKAHIRO氏からの影響も大きかったのだろう。
紅白歌合戦の舞台にあがる直前に、メンバーに向かって、彼はこう言っている。
また、ドキュメンタリー映画『僕たちの嘘と真実』でも、彼女のインタビュー場面は一切ない。代表的なライブ映像をつなぐ形で、物語は淡々と進んでいく。
これは何を示しているのだろうか。
あくまでも想像であるが、彼女のパフォーマンスに全てが詰め込まれているから、あえて話を聞く必要がなかった、というのが正解ではないだろうか。
4thシングル『不協和音』のころ、珍しく彼女がパフォーマンスのことについて、話をすることがあった。
彼女の「真実」は、全てパフォーマンスの中にある。
それは、なにも彼女だけに限ったことではない。
欅坂46のメンバー全員が、パフォーマンスによって、自分たちの気持ちを込めて、楽曲のメッセージを訴えているように感じる。
一見、寡黙と思える彼女たちこそ、楽曲を通じて、現代社会にある気分や不満、思いを伝えてくれる、雄弁な表現者なのかもしれない。
そして、このKEYAKIイズムは、今も櫻坂46や日向坂46にしっかりと受け継がれている。
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