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厨房作りで意外と悩んだ 3つのこと

マガジン「実店舗を開くまでとそれからの1年」
9本目の記事です。

前回は「お店+αの場所を作る」という記事でした。

自分のワークショップ、講師を招いたワークショップ、+αの可能性のある場所にしようと決めた私は、設計士さんと共に場所を整えていきました。

製造場所の確かさ

+αの場所にすると決めたと同時に、ベーグルを作ってお届けする軸が何より重要とも感じました。

そこで、製造場所である厨房の使いやすさ、安全安心な食を作るための場所作りについて、かなりしつこく検討しました。

特に、店舗を立ち上げる時は、「チーム戦でやっていく」と決めていましたが、1人で製造販売する日もあるかもしれない。

1人でコックピットのような使い方も、数人で動線の整った動きやすく安全な使い方もしたい。
どちらも兼ね合わせた厨房を目指すため、さまざまな厨房を実測していきました。

  • 複数人で作業していたシェアキッチン(最大4人作業)

  • 当時バイトしていたカフェ(最大3人作業)

  • 自宅キッチン(キッチン内では二人作業できる程度の広さ)

見学させてもらったパン屋さんやお菓子屋さんでも、必要な機材や、今後増えそうな道具があることを知り、余白を考えながら整えていきました。

その際、意外と悩んだ点を3つ、取り上げて書いてみます。
(あえてオーブン、冷蔵庫などの大型のものではありません)

(1)ガスレンジと換気性能

価格のバランスから
「家庭用ガスレンジ(いわゆるガスコンロ)+家庭用換気扇」
も候補に上がりました。

家庭用ガスレンジはガスのパワーが弱いため、換気扇を家庭用にランクダウンすることができるということは、設計士さんに教えていただきました。

検討した理由は他にも
・換気扇自体は業務用より家庭用の方がかなり安く、コストカットになる。
・ベーグル用のお湯を沸かし、弱火加熱し続けるだけなら、家庭用ガスレンジでも事足りる?
・家庭料理の教室をするなら、試作の際に家庭用の方が有利。
・五徳が全体にかかっている家庭用ガスレンジ(ノーリツ+do)なら、大きな鍋も置くことができる。

以上のようなことが挙げられました。ランクダウンしても問題がなく、価格が安いのであれば採用していいはずでは?と仮説を立ててみたのです。

ですが、最終的には業務用で決着しました。

以前から、友人のベーグル屋さんも、換気の悪さから夏の熱気に苦戦していました。
ベーグルの湯による蒸気やオーブンの熱気は、想像以上の暑さで、シェアキッチンの頃も夏場は35度の温度計を見ながらベーグルを焼いていました。
そのため、ランクダウンした換気扇をつけることに、不安があったのです。

ちょうどそんな時、飲食開業本の経験者体験談に「家庭用換気扇を導入したけれど、オーブンの熱がすごく、オープン後、業務用に付け直した」という記事が書かれているのを見つけて、結論を出すことができました。

換気扇を業務用にした結果、必然的にガスレンジも業務用を採用することになりました。
業務用ガスレンジの方が格段に安かったからです。

換気扇は2箇所に取り付けました。
①オーブンの扉上:オーブン扉を開閉した時に出る熱を換気するもの
②ガスレンジ上:湯などを沸かした時に換気するもの

取り付けの際には、オーブンメーカーに設計士の辰巳さんが確認を取りベストな場所をレイアウトしてくださいました。
おかげで1年経って夏を超えましたが、熱気を換気しエアコンを使用し、なんとか元気に製造できています。

そして、オープンから一年が経ち、換気性能もそうですが、フィリングやジャムなどを加工する単位が大きくなってきている中、使用する鍋の大きさもアップ。
大きなガス台と高い換気性能にしていたことは、クリカ食堂としてはベストな結果だったなと感じています。

(2)作業台の高さ

結論として、85cmの高さを採用しました。

業務用は基本が80cm高さ。調整すると83cmくらいになります。
私自身は156cmと小柄なので、80cmでも問題なく使えるかと思ったのですが、
最終的にはオープニングから入ってもらう予定のスタッフ2人が身長160cm前後ということで、85cmを選びました。

なお、参考にするために、これまでのシェアキッチン、自宅、バイト先のカフェ、賄いの厨房で高さを計測した他、IKEAショールームなどでも実際に台の前に立ってみました。

ちなみに海外製品のIKEAでは90cm高さ以上。
小柄な私には作業台として使うには高かったです。
ただ、展示品で90センチの高さはあまり体験できる場所がなかった(一般的な家庭用キッチンのショールームだと見れるかもですが、当時は事前予約が必要でした)ので、身長が高く、高めの台を検討する方などで、近くにIKEAがある場合は、気軽に体感するにはお勧めです。

使い始めて1年。身長が高い新スタッフが加入し、80cmにしておかなくてよかったなというのは、心底感じています。

(3)作業台の幅

厨房内に、作業台はいくつか設置してあります。
それぞれのサイズについて解説します。

① 厨房内の隙間を埋める作業台

シンクとガスレンジの間、オーブンとガスレンジの間に横幅60cmの作業台を挟む形にしてあります。
理由はパン用の天板や、大きい箱型容器(番重)を置けるようにするためです。

重たいものの多い厨房内。
女性には重労働です。
一回一回はそんなに負担ではなくても、積み重なることで負担が増していく。
持続可能な形にするためにも「休み休み」を大事にしたい。
そのため、飛石のように厨房内に作業台を置くことで、腰や腕の負担をかけないようにしました。

その後、食洗機に60cmサイズがあることも知りました。
将来食洗機の導入が必要になった時には、作業台と入れ替えることもできるようです。

② 自分メインの作業台

自分が使用するメインの作業台は、1人でコックピット的にも稼働できる場所と大きさにしました。
当初横幅90cmから検討を始めましたが、少しでも広くしたいということで、壁の厚みを減らしたり、冷蔵庫位置を調整するなどしてもらい、最終的に120cmにすることにしました。

スタッフ用の作業台は、さらに大きく150cm幅です。2人並ぶことも想定しています。

作業台は中古機器屋さんにもいろんなサイズが置いてあり、ネットでも中古品が出ています。
配送料など考えると新品との価格差は数千円~1、2万円。
店舗経験者からは、中古で買ったものの一部は錆が出たという話も聞きました。
(たまたまかもしれません)

開店準備中はお金のことが心配で、つい安いものを、、、という発想にもなりましたが、ありものに合わせて場所を作ろうとすると、考える時間が増え結果コスパが悪い場合もあると思い、新品のみで検討しました。

使い始めて1年。
作業台に関しては、作るボリュームが増えたり、スタッフに日々指導しながら作ることは想定しきれていなかったとも感じています。
一般的な大人数のパン屋さんでは、麺台を囲むようにして複数人で作業するので、目で盗みながら技術向上がはかれますが、現状の形だとそれは厳しい。
常に課題は生まれ続けるものですね。

(4)おまけ:大型機材を導入するか
初期段階で、大型発酵機、腰高の冷蔵庫(コールドテーブル)を採用するか悩みました。
ただ業務用のそれらは店舗立ち上げで出費重なる段階では採用が厳しく、開店時には導入を諦めました。

コールドテーブルは、初めから導入したいと思っていましたが、冷蔵庫としては扉4枚の大型冷凍冷蔵庫を採用。冷蔵スペースとしては当面どうにかなりそうだったので「将来対応アイテム」に。
コールドテーブル購入を目標に、開店後は営業を頑張りました。

発酵は、以前のシェアキッチンでは、暖かい場所を探して常温発酵をさせていました。そんな発酵機を使わないやり方に慣れていたので、新店舗でも最初は自宅で利用していた家庭用発酵機一台を持ち込み様子を見ることにしました。
しばらくの間はその一台の発酵機も使っていなかったのですが、作業効率や生産性を上げるため、オープンから半年ほど経った時に、日本ニーダーのものを2台追加。現在家庭用タイプで少し大きいタイプの発酵機3台で対応しています。

オーブン下に取り付ける業務用発酵機を採用していてもよかったなと思うこともありますが、小型には小型の良さもあり。(それぞれの発酵機の温度帯を調整できる)一長一短だなと感じています。

スタッフの成長などに伴って、機材を変更追加すれば生産量が増やせるのにな、と感じることもすでに出てきていますが、そういった課題が生まれることも、成長の証なのかもしれません。

以上意外と迷った機材選びでした。
厨房機器代理店として入ってもらった日本ニーダーさん。
冷蔵庫メーカーのホシザキの営業担当者さん。
お二人にも何度も相談に乗ってもらいました。
途中、次々湧いてくる検討事項に、私が全部決めなくてはいけないの?と弱気になったこともありましたが、相談者がいるという安心感は、何よりもありがたかったです。



今回もお読みいただきありがとうございました。

シンプルな美味しさ
時間が作る美味しさ
この二つを大切に
ベーグル&スコーンの販売
四季の保存食作りや家庭料理
外部講師のワークショップを行なっています
(料理系ワークショップは現在開催検討中)

次回もよろしくお願いします。

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