路面電車のある風景 都電荒川線散歩
下町某所に住んでいるんですが、所用で池袋まで行ったので帰りは都電荒川線沿いにちょっと散策してみました。やっぱり路面電車がある街並みはいいですね。バスが嫌いなわけではないけど、レール好きとしても生活に溶け込み度合いが路面電車は別格。
この都電荒川線、かつて最盛期の1943年には、一日平均193万人の利用者(東京のメトロと都営の合計が1日平均1000万人超)、系統も41系統もあった都電の最後の生き残り(厳密には27系統と32系統をつなげて整理した路線)。路面電車と言いつつ併用軌道(道路上で自動車も走れる線路)はほとんどないし(実際全体の14%ほどらしい)、基本的に普通の電車と何ら変わらないのが残念。そのおかげで車の邪魔とされずに生き残ったというのもあるけど。
雑司ヶ谷~庚申塚
この辺りは東池袋地区。木造住宅が並ぶ古い住宅街を切り開き、サンシャインシティ周辺にどんどん高層マンションや公共施設がたてられている。その中で都電のルートも整理して、新しい道路を建設している最中。
大塚は唯一の山手線との乗換駅。駅前は小ぎれいに再開発されてる。
庚申塚は巣鴨から続くとげぬき地蔵商店街の反対側。中山道沿いの拠点としてにぎわっていた門前町。ホームにはいっぷく亭という茶屋がある。新庚申塚では現中山道の国道17号を横切る。
玄関どうやって入るの・・・
庚申塚~王子
西ヶ原四丁目、滝野川一丁目あたりは北区の住宅街、南北線で言う西ヶ原駅。古くは都心を見下ろす高台の農村。石神井川が作る峡谷に滝があったことから滝野川という名前になったらしい。上履き干してあったり、猫がいたり、子供が遊んでたりと、すごくいい雰囲気だったので後ろ姿でよかったんだけどめちゃくちゃカメラ目線くれてしまったので・・・ごめんなさい。
飛鳥山を過ぎると本郷通り・明治通りの交差点からほぼ唯一の併用軌道区間。
飛鳥山を大きく迂回して京浜東北線の王子駅の下をくぐる。飛鳥山は江戸時代からお花見の名所だったらしい。
王子は石神井川沿いに王子製紙の工場が作られ、その紙で紙幣を作る国立印刷局王子工場が作られた場所。初代紙幣頭(現在の理事長ポスト)が渋沢栄一なので、大河ドラマ人気にあやかってPRしている。
新幹線の真下を走ります。
王子~熊野前
王子駅からは少し行くと梶原駅先から路線名にもなっている荒川区へ。このあたりから町屋方面の区間はまさに線路(軌道)と道路が一体化していたところ。今では道路は拡幅されて真ん中の囲われた部分を都電が、その外側を車が走るように分けられてるセンターリザベーション方式。
荒川車庫前停留所には文字通り車庫がある。
隣の梶原前には都電名物の都電もなかの明美製菓がある。箱が都電の車両になってて、箱が車庫の形になってる。25年前とかかな・・・食べた記憶以来、これは経済的な仕様なのか、こちらの成長なのか思ったより小さいと感じた。味は素朴なもなか、もちもちの求肥、上あごにくっつく感覚がいいね。
熊野前ではちょっと歩くけど舎人ライナーと乗り換えができる。
熊野前~三ノ輪橋
熊野前から町屋駅前までも同じように道路の真ん中を通る。町屋駅前は京成と千代田線の乗換駅で、都電屈指のにぎやかなエリア。
荒川二丁目には日本最初の近代下水処理施設でもある三河島水再生センターに沿って走る。ここには国の重要文化財にも指定されている旧ポンプ場施設が残されている。なかなかかっこいいレンガの建物。予約すれば見学もできるらしい。
荒川区役所前あたりも再開発中。荒川区って正直馴染み薄いけど、区役所最寄り駅が文字通り都電荒川線なんだね。ちなみにスカイツリーと一番きれいに共演するのがこの辺。
今日一狭い脇道。
三ノ輪橋駅でゴール。この辺も昭和レトロなアーケード「商店街ジョイフル三ノ輪」が、逆に若者に人気の映えスポットになってるよう。日比谷線の三ノ輪駅へ乗り換えができる。
今回は自転車で並走したけど、全長12kmちょっとだし徒歩でも全然回れる。都電の1日乗車券は400円と破格だし、+都営地下鉄・都バスもOKな「都営まるごときっぷ(1日乗車券)」も700円だし、結構楽しめると思います。
ただ、前から思ってたけど結構混んでるのよね。早稲田、大塚、王子、町屋、三ノ輪と地味だけど地下鉄とかJRでは直で移動できない東京北部の主要駅を結んでるし、要するにこんなマイナー路線の休日の昼間ですらこれなのに、東京の主要路線が路面電車だったら阿鼻叫喚だし、結果的に地下鉄が整備されて都電が廃止されたのは都市の規模としては仕方ない流れだよね。
今でも都電路線の路線を引き継いだ都バス路線や、廃線跡(亀戸~大島のあたりとか)があるので、それをめぐる旅も面白そう。
路面電車について
路面電車ってスピード、輸送力、エネルギー効率、コストすべてが路線バス以上モノレール未満で、バリアフリーのために低床化しやすいこともあって持続可能な都市交通システムとして世界的にも再評価されてる。日本でも今風にLRT(Light Rail Transit、厳密には路面電車より上位の概念)とも言われて注目されてて、富山市は都市計画とセットに成功事例として取り上げられることも多い(諸意見あり)。
宇都宮市がまさに2023年春開業に向けて整備を進めている。税金を投入するわけで反対運動もあったけど、自動車と逆行するような取り組みに自動車メーカーのホンダがバックアップして、工場群と宇都宮駅を結ぶ路線を作っているというところに未来の可能性を感じる。
地方の中規模都市が次の何十年に向けて自分たちの町をどのようにデザインしたいのかを考えるきっかけになればいいなと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?