見出し画像

本を読んでて良かったと思う理由▶︎チャーリー

横浜読書会KURIBOOKSの映画祭の司会を担当しています チャーリー です。

2018年の春、小学校の同級生から白血病になってしまったという報告がありました。

お互い50歳を過ぎているので、同級生で集まると病気話で盛り上がることも多いのですが、笑って済ませられるのは尿路結石あたりまで、白血病というと話が違って、心配になりました。

幸にして、今や白血病と言っても良い薬や治療法もあり、彼の場合は「急性前骨髄球性白血病」というもので、「治るタイプの白血病」という事でした。しかし、それでも半年は入院治療、全治には1年ほどかかるとか。当然ながら楽な話ではありません。

先に言っておきますが、彼は全快して、今は以前と同じ生活を取り戻しています。この話は彼がまだ闘病を始めたばかりの事です。

彼から本についての相談が来たのです。
『自分は回復する事を信じて治療を続けているが、やはり「死」というものも意識してしまい、最近こんな本を読んだ。

「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義 日本縮約版シェリー・ケーガン著 柴田裕之訳(“Death” (The Open Yale Course Series) by Shelly Kagan)

でも全然響かなかった。なんかいい本知らないか?』
というものでした。

偶然、僕もこの本を読んでいました。そして彼と同じように僕にも全然響いてこなかったのです。

この本は「死」をテーマにした大学の講義録が元になっています。
既にこの本を手放したので記憶に頼って語らざるを得ないのですが、人はなぜ死んだこともないのに、死を恐れるのか?そもそも死について知らないなら、死を恐れる理由など無いじゃないかといった内容だったと思います。(少なくとも自分はそう読みました)

そりゃその通りなんですが、だったらそう言われて僕たちは納得して、死を恐れなくなるのか?という感じでモヤモヤしてしまいました。

さて、この本の後に僕はもう一冊、死についての本を読んでいました。

「死すべき定め 死にゆく人に何ができるか」アトゥール・ガワンデ著 原井宏明訳(”Being Mortal” by Atul Gawande)

アメリカのインド系二世の外科医であるアトゥール・ガワンデ氏は、この本の中で医師としての知識と経験、癌になって死を目前にした自分の父親に対する愛情についても触れながら、老年期医療、終末期医療に取り組む人たちや、当事者である患者の現状について書いています。

死は誰もが直面する問題であり、病や死について誰もが同じように向き合わなければならない時が来ます。医療は死に対抗できているのではなく、死に向かうスピードを少しでも遅らせるという手段に過ぎません。

一方で残りの日々を病院で狭い病室に閉じ込められるのではなく、制約はあっても自宅で普通に暮らし、静かに死を迎えたいと考える患者も少なくありません。
人としての尊厳を保ちながら暮らし、死にゆく患者に対して、死を遠ざける事しかできない医師はどのように向き合えばいいのか。

友人はまさにこういう本を求めているのでは?そう思って僕は彼にこの本を読んでみてほしいと伝えました。

数日後、彼から、『まさにこういう本が読みたかったんだよ』と返信がありました。

50年以上生きてきて、本読みとして、これほど嬉しいことはありませんでした。

横浜読書会KURIBOOKS - 知的好奇心を解き放とう~参加者募集中~

投稿者:チャーリー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?