見出し画像

初恋の人にボーリングのピンにされた、私の話

私の初恋は、幼稚園の年長さんの時です。

相手は同じひよこ組だったMくん。お世辞にもイケメンとは言えない顔つきであるものの、優しさと面白さに惹かれていた6歳の私は、彼にぞっこんな幼稚園生活を日々送っていました。

当時Mくんはクラスの半分以上の女の子が好きになるほどモテていました。遊ぶ時間になれば彼の取り合いが始まります。女は生まれながらにこんなにも欲深い生き物なのかと思うほど、Mくんは私のものという独占欲の塊がそこにありました。(ちなみに私もOne of them)

そんな彼を好きな人の中でもヒエラルキー的なものがあり、トップ層の5名ほどは彼の周囲によく居たものです。実は私もその一人で、比較的Mくんと話をする立場にいました。

その理由は、私の兄です。

Mくんの兄弟は全員女の子で、彼にはお兄ちゃんがいないことからMくんは私のお兄ちゃんが大好きでした。兄が幼稚園に遊びに行けば抱きつき、僕も同じ家に住みたいとまで言わせるほどです。

そんな兄がいるということを棚にあげ、得意げにMくんヒエラルキーのトップに居座っていたわけです。しかし、Mくんと1対1で遊ぶことは愚か、基本的にはみんなで仲良くという超民主的な世界を生きていた訳です。

そんなこんなで幼稚園児らしからぬ生活を送っていましたが、ある日その関係に大きな変化がおきます。

Mくん「◯◯ちゃん(私の下の名前)、ちょっと1人で来れる??」

衝撃的な展開です。いつもであればみんなで仲良く遊んでいる昼の休み時間に、お呼び出しがありました。空気が固まります。なぜあの子だけ呼ばれるんだ??周囲の女の子の目がとても怖かったことを思い出します。

浮き足立ちながら彼のもとに向かう私。今考えればおかしな話ですが、当時のわたしはもしかして告白…!?なんて思ってたわけです。ませてますね。

彼のもとに到着すると、そこには9本のボーリングのピンが。

Mくん「◯◯ちゃん、そこの端っこに立って、10本目のピンになってくれない??」


なんということでしょう。無邪気な彼の瞳が輝きを増しながら私に訴えかけてきます。今から私は彼のために、ボーリングのピンになるのか…?私の目の前には規則的に並んだ9本のピンと、なぜだかせつなそうに転がってる1本のピンがあります。

なぜあのピンを使わないのだ。なぜ私なのか。そう頭に疑問は浮かびながらも、彼のためならと私は10本目のピンになりました。

今思えば、彼は相当なサイコパスです。無力な幼稚園児をボーリングのピンと仕立て上げて、それを倒していくわけです。屈託のない笑顔とともに、無邪気な彼の瞳は一層輝きを増しました。

私も彼の期待を裏切らないように、精一杯ボーリングのピンを演じました。自分を無にして、そして他のピン達とともに倒れ去っていく。天井を何度見たことか。

正直ボーリング最中の記憶はあまりありません。しかし当時のわたしの感情と、教室の外にギャラリーがめちゃめちゃ多かったことだけはしっかりと覚えています。

あれはなんだったのでしょうか。今でも真相は闇の中です。

今思うと、当時の私は幼稚園児らしからぬ恋をしていました。欲にまみれた幼稚園児が繰り広げるストーリー、嘘のようだけど本当ですよ。当時の映像とかあったらとっても面白いのにね。

ちなみに後日談ですが、彼へ思いをつげることはなく幼稚園を卒園し、中学校で再会を果たします。再会した最初の会話で、Mくんに私はがっつり名前を間違えられたということだけ報告しておきます。

#あの恋

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?