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疲れたときは「ひとり」にならなくっちゃ
夫が友人と用事があるからと週末に出かけた。
私は内心ほっとした思いだったが、少し寂しそうな顔をしてみせた。
「ああ、よかったこれで自分の時間を過ごせる」
その時分は、仕事が忙しくてめちゃくちゃ疲れていた。夫は気遣ってくれて、週末は美味しいご飯を食べに行こうとか、スーパー銭湯に行こうか、とか言ってくれる。優しい。
ただ、リモートワークで1日中と顔を突き合わせている中、私がほしいのはの空白の時間だった。
ひとりの何をいいか。
相手に迷惑をかけないように、という圧を感じないこと。
「今日は何食べたい?」とか「今日は何時に終わる?」とか「冷蔵庫の中に〇〇残っているっけ?」とかささいなことでも、聞かれるたびに、あーどうだっけか?と頭の中から取り出しに行くあたまの作業がツライ。人と会話をするのが苦痛になるくらい、回路がパンパンになってしまっていた。
聞かれたからには答えなくちゃいけない。レスポンスが遅れたり、間違えたことを答えると「言ってもらわないとわからない」とか「だから聞いたのに」とか、迷惑がかかってしまう。
その日のスケジュールを立てて、それに沿った行動を組み立てることも苦痛だ。
ぼーっとしたい。まる1日ひとりにしてもらって自分のペースで過ごしたい。
思い立った瞬間に思い付いたことをして、それでだれにも迷惑をかけない時間をすごしたい。
こう書き出してみるとずいぶんたまってた、というのがあらためて分かる……。
というわけで、ひとりで過ごす週末。昼はちょっといいお蕎麦屋さんへ。
巣鴨の「菊谷」。時間によっては並ぶくらいの人気店だ。
おもしろいお蕎麦屋さんで、産地などこだわりの「蕎麦の食べ比べ」ができる。
3種食べ比べを頼んだ。
てっきり、3種の蕎麦の盛り合わせが出てくるものと想像していたら、1種ごとに小盛りの蕎麦出てくるスタイル。蕎麦と蕎麦の間にもちょっと時間が空く。ゆっくり過ごすにはちょうどいい。
蕎麦を待っている間には、読めないままになっていた文庫本を開く。誰かと一緒に来ると食事の間に本は読めない。相手が退屈してないか、とか考えてしまう。誰のことも気にせず本を読めるのもひとりならではの楽しみだ。
産地や熟成方法、打ち方、切り方など、それぞれにこだわりがある蕎麦は、香り立ちに差があり、食べるごとに「お、こうきたか」と発見がありおもしろい。わさびのツーンとした辛さが鼻を抜け「ああ、生きている」と感じる。
食事をとったあとは、思いつくままのろのろと買い物へ。雑貨やアクセサリーなどが目に入ってきて「ああ、かわいい」と自分の中の感動が戻ってくる。
ひとりで過ごす時間は自分を取り戻すために必要。
夫には悪いけど、ひとりを大・大・大満喫させてもらった。
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蕎麦の香とわさびの辛さに癒される
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