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そこがいいんじゃない!

 妻は旅が嫌いだ。

 何が嫌いってこの「旅の準備」が嫌いのようなのだ。2泊するならそれのための衣類や衛生用品、ガイドブックなど。何が必要なのかを考えることさえすべて苦手なのだ。その上、出発の日はいつもと違う時間に目を覚まし、いつもと違うルーティンで動くこともストレスらしい。

 日帰りバスツアーならいいと言う。準備もさほど必要なく、計画も立てずにただ付いていけばいい。食事も用意してくれてまた元の場所まで送り届けてくれる。何も考えなくていい。

 私はその正反対。旅を企画する段階からワクワクしている。下調べして立ち寄るコースを考えている時が一番楽しい。持っていく荷物をいかに少なくするか、下着も洋服も最小限にしたい。そんな非日常がたまらない。なので、バスツアーでは行きたくない。

 旅に関する認識が夫婦でこれだけ違うと、一緒に旅にいくことは少ない。いや、帰省以外の泊まりの旅行はほとんどない。「あなたには振り回されてばかり」と思っているだろうし、私は私で悶々とするところもあった。でも、子供が巣立ってからは家族みんなで行動するということにこだわらないし、休みの日は自由にしていいとなれば一泊旅行などすぐに出かけられるじゃないか。そんなはずだった。

 しかし、旅をしなくなってから長い月日が経つと、そんな私も旅に出ることが億劫になってきてしまった。ここ大津には隣に観光地である京都がある。いつでも「ちょっと行ってくる」って京都に出かけられるからだ。歴史好きの私の行きたいところは京都・奈良・滋賀に集中しているので、どこでも日帰り出来る。なんと恵まれたことかと自分でもそう思う。

 休日は、朝からひょいと山歩きに出かけた。山頂でおにぎりを食べて午後には帰ってくる。それも小さな旅。

 必要なものはすべて自分の周りにある。と思い込んでいるところもあるので、廻っても廻りきれない近畿の神社仏閣や歴史的遺産を、思いついたらすぐに「旅の準備」などせずに、スマホひとつ持って「ちょっと行ってくる!」と出かける史跡巡りが私の今の旅のスタイル。

 また妻とも温泉に行きたいと思っている。どこの温泉に泊まろうか?そこまでのルートはどうしよう?どこの道の駅に寄ろうか?よし、当日は早起きするぞ!そんなことを考えているのが楽しいが、妻に言わせればそこが面倒なようだ。

 そこがいいんじゃない!

 そんな夫婦だからうまくいっているのかもしれない。そんな妻も嫌いじゃないから。

#旅の準備

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