米国経済の今とリセッションに関する考察
最近の米国銀行破綻やリストラ計画などのニュースを読むとどうやら今、米国の銀行にはお金が無いようだ。
これは恐らく、銀行預金からMMF(Money Market Fund)に大量の資金が流入していることが原因なのだろう。
今、銀行預金から株式市場に資金が流れている。
最近の米国株式の株高に加え、MMFの金利が銀行預金より高いことを考えればこの流れは当然のことだ。
僕だって今、金融資産の半分以上は現金ではなく株式になっている。
2023年3月起きたシリコンバレーバンクの破産は「取付騒ぎ」と言われていて、これは米国政金利の急激な引き上げにより、予想を上回る規模とスピードで銀行預金が引き出されたからだ。
この時からFRB(米国連邦準備委員会)は銀行のキャッシュフローを少しでも良くするために緊急資金計画(BTFP:Bank Term Funding Program)という名の銀行支援策を実行し、銀行にお金を貸し付けている。
そしてこの貸付額は時間の経過と共にどんどん増えている。
2020年のコロナショック時に銀行は市場に大量にばらまかれた給付金を使って大量に債権を購入した。
しかし、債券価格は2023年に急激の利上げによって大きく下がってしまい、大きな含み損を抱えることとなった。
そして、この含み損に加えて、銀行預金のMMF等への流れが加わって銀行の経営状況は非常に悪くなっている。
これが、先日の記事で書いたCityグループのリストラ計画発表の背景だと推察する。
FRBはBTFP(緊急資金計画)によって銀行を支援しなければならない状況にある。
BTFPは2023年3月~2024年3月までの1年間の暫定プログラムだ。
勿論、昨今の経済状況を見れば、延長する可能性もあるが、延長したとしてもBTFPは補助金ではなく貸付金なので、銀行の経営状況が良くなるわけではない。
銀行の経営状況が悪くなると、負債を作り出しにくくなり、マネタリーベースシステム(銀行が市場にキャッシュを供給するシステム)を機能させられなくなる。
米国経済は負債(Debt)によって作り出されたお金で経済を回すシステム(Debt Based Monetary System)を使って大量のお金を市場に流し込み、成長を続けてきた。
しかし、銀行の経営状況が悪くなるとこのシステムを維持することが出来なくなる。
このマネタリーベースシステムがうまく機能しないと経済が悪くなり、その結果リストラが起きる。
実際、米国企業ではシティグループだけではなく、Google、Meta、Amazon、Microsoft等の多くの有名企業がリストラ計画を発表している。
米国では未だそれなりの求人件数があるが、その求人数もここ最近少しずつ減ってきていて失業者も増えてきている。
このグラフは正確には米国全体の失業者数の推移ではなく、Temporary Help Employees(正社員以外の雇用者)と失業率のグラフだが(オレンジが正社員以外の雇用者、青が失業率)、オレンジの線が下がると、青い線が上がり、そしてこの二つの動きが同時に起こるときにリセッション(グラフ上の灰色の部分)に陥ることが分かる。
1990年の冷戦終結後、2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショックと各リセッション時には青とオレンジのグラフは同様の動きを示している。
今、米国ではこの失業者数以外にもリセッションにつながる多くの兆候が出てきている。
米国経済学者クラウディア・サーハム(Claudia Sahm)が提唱するサーハム・ルールも米国の民間調査機関コンファレンスボード(Conference Board)が発表するコンファレンスボードインデックス(CBI)もリセッションの前兆を示している。
現在の米国株高をみて米国経済は順調でリセッションなど程遠いと考える人は多いだろう。
実際、日本には米国株式やS&P500米国株に投資している人は多い。
米国経済にリセッションの兆候が出ているにも関わらず、株価が高値になっているのにはちょっとしたカラクリがある。
結論から言えば、米国株価が上がっているのはマグニフィセント7(Magnificent 7)と呼ばれる企業群の影響が大きい。
マグニフィセント7というのは米国株式市場を牽引しているApple、Microsoft、Nvidia、Amazon、Alphabet、Meta、Teslaの7社のことだ。
このグラフはマグニフィセント7とS&P493の株価指数に関するグラフだが、S&P493は単純にS&P500を株価として異常値を持つ7社とその他に分けたものだ。
このグラフを見ると、マグニフィセント7の株価は上昇の動きを見せているが、それ以外の493社の株価は全く上昇していないどころかむしろ下がっている。
2024年の景気動向がどう動くのか、我々はそれに向けてどう備えるのか、株価だけに目を寄せず、実体経済と併せて状況を把握しておく必要がある。
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