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母乳と発達障害の関係性

最近、子供の多動性や発育障害について悩みを抱えている親が急増している。

この原因には発達障害に関する認知が広がったとか、認定基準が下げられたといった理由が挙げられているが、体感的にも発達障害を疑うような子供や大人との出会いが増えてきたのを感じる。

「発達障害」は、ADHD(注意欠陥多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)など、複数の障害の総称で厚生労働省も「発達障害」について「生まれつき脳の一部の機能に障害がある症状」と定めている。
これが世間一般の発達障害に関する認識だろう。

だが、「発達障害」は今だに生まれつきの「先天性障害」なのか、脳卒中や交通事故で脳を損傷したために、脳機能の一部に障害が起きた「脳機能障害」なのかも判明していない。

そんな中、2021年に東京大学の脳科学研究チームが「発達障害」が母乳を飲ませていない子供に多く発症するという注目すべき研究結果を出した。

この研究では発達障害は生まれながらの障害ではなく、脳の形成過程で十分な栄養素を与えられなかったことに起因すると結論付けている。

この研究を読み解く前に、脳は赤ちゃんがお腹の中にいる間に完成しないということを知っておく必要がある。

人間は生まれたとき脳の構造の一部に欠陥が生じたまま生まれ、授乳期間を経て脳を完成させる生き物なのだ。

通常、人間の妊娠期間は十月十日(280日)だが、この十月十日の妊娠期間というのは人間の複雑な脳を形成するには十分ではない。

象の妊娠期間は約2年(約650日)、キリンは1.5年(約460日)、ゴリラは250日、猿が210日でネズミの妊娠期間はほぼ20日間。
一般的に体の大きさと妊娠期間は比例する。

人間の体は280日程でほぼ完成するが、この期間を超えると体の大きさの関係で出産の時に母体への負担が大きくなるので人間の赤ちゃんは脳が未完成の状態で一度体外に出される。
そして出産後、一年程度の期間を経て脳を完成させる。

人間の体や臓器を完成させるためには母体からの栄養素が不可欠だ。これは脳も例外ではない。
母体の中にいる間はへその緒を通じて栄養を受け取ることができるが、一度外に出ると母体から栄養をもらう手段は授乳しかない。

この仮説を前提に考えると母乳で育った赤ちゃんのほうが、知能指数が高くなるといった他の研究結果との整合も取れる。

人工乳(粉ミルク)に人間の体を形成する栄養素が含まれていれば良いが、現代科学はまだまだそこまでの域に到達できていない。

人工乳は現代社会を生きる我々にとって非常に便利だ。
飲ませておけば、お腹は膨れるし、子供も死ぬことはないので無理して母乳をあげる必要もない。

ではその引き換えに子供の発育に影響が出るとなったらどうだろうか。
勿論、発達障害の原因は母乳だけではないだろうが、授乳は母子の最初のコミュニケーションであると考えると非常に尊いもののように思う。

多少の無理があっても母乳をあげるべきと考える人もいるだろうし、やむを得ない事情で人工乳をあげる人もいるだろう。

戦後くらいまではなんらかの事情、例えば母乳が出ないなどがあれば他のお母さんが協力して母乳をあげて育てていた。

以前は当たり前であったことが、便利にって当たり前ではなくなり、それと引き換えに人間として本来当然だったことが徐々にできなくなってきていることは沢山ある。

母乳をあげていれば発達障害が無くなるという話でもないし、知能指数が高くなるという近視眼的な話をするつもりもないが、今回は興味深い話を少し掘り下げてみた。

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