「言葉」は嘘をつけるが「行動」は嘘をつけない
中国戦国時代、趙(ちょう)に天才軍師と呼ばれる趙括(ちょうかつ)という男がいた。
趙括は幼少時より兵学に通じており、周囲からは神童ともてはやされ、将来は趙を背負う大将軍と期待されていた。
趙括は弁舌の面では誰よりも長けていて、戦争について議論をすれば誰も勝てるものはいなかった。
だが趙括には実戦経験がなく、あくまでも弁節だけの男だった。
やがてこの弁節の天才趙括は趙の総大将に任命され、数十万の兵士を引き連れて実戦に臨むこととなる。
趙括は総大将に就任後、前任の総大将である廉頗(れんぱ)の戦法を支持する将軍達を次々に更迭し、兵法書の通りに兵を配置し直した。
その結果どうなったか。
趙括は大敗した。
軍の戦死者は数十万人に上り、軍は壊滅。
趙国は再起不能なほどの打撃を受け、滅亡へと向かった。
趙の国王であった孝成王(こうせいおう)が趙括の言うことを信じたせいで数十万人が死に、国の滅亡につながった。
言葉だけで人を信用するということはこういうことだ。
セールスマンのトークも、採用面接での就活生のスピーチも言葉だけで相手を信用すると痛い目を見ることがある。
これは実に当たり前のことだ。
馬が早く走るかどうかは走らせて見れば誰でも分かるが、姿や容姿を見ただけでその馬が速く走るかどうかを判断するのはプロの調教師でも難しい。
面接でどれだけ素晴らしい実績を語られても、その人が本当に優秀な人かどうかを判断することは熟練の採用担当者でも容易ではない。
我々は、選挙演説で耳障りの良いことを言っている政治家に投票し、裏切られたということを何度も経験している。
なので、人を判断したいのなら言葉ではなく行動を見る必要がある。
そうすればその人が優秀かどうかは誰でも直ぐに判断できる。
言葉は嘘をつけるが、行動は嘘をつけない。
口先や容姿だけで人を判断することは本質的には不可能だ。
だが、現実世界ではまず言葉で信用を得るしかない。なので、言葉で信用を得た後は、行動で信用を得ることが重要だし、言葉で人を信用した後は行動をよく見る必要がある。
「言っていることではなく、やっていることがその人の正体」
(ノンフィクション作家 久田恵)
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