名経営者が経営が危ない時に自然と取る行動
2019年10月頃から広がりを見せたコロナウィルスは世界中の経済に大きなダメージを与え、世の中を大きく変えた
リモートワークやオンラインビジネスの発展により人の移動は減り、コロナ禍を生き残れなかった様々なサービスは消失し、苦境に追い込まれた業界からは人材が蒸発した。
コロナ禍真っ只中の2年間から見ると、現在の状況は一見、回復したように見えるが、業績を細かく見てみると企業が負っているダメージは計り知れない。
今まで好調であった企業も、稼ぐ仕組みや装置が壊れてしまい、既存のやり方のままではコロナ前の業績に戻すことはほぼ不可能となった。
そのため、多くの企業は新たな打ち手を探している。
業績が戻っていない企業が多いにも関わらず、転職市場が賑わっているのは、この「新たな打ち手」のために、自社に無い能力を外部から調達するためだ。
そして新たな打ち手を見いだせない企業は今後、経営が先細ることが目に見えている。
コロナの影響で経営危機に陥った企業の経営陣は危機感をもって新たな打ち手を探しているはずだが、大抵の場合、この危機感は社員には伝わっていない。
福利厚生を削ったり、定期昇給を減らしたり、ボーナスをカットすることで生き残りを図っているが、これらの策に社員が不平不満を口にするのは、経営陣が持っている危機感を共有できていないからだ。
殆どの社員は「コロナが落ち着けば元通りにはならなくても、まぁ、潰れることはないだろう」くらいにしか思っていない。
この傾向は企業が大きければ大きいほど顕著だ。
だがいつの世も、常に順風満帆で業績に問題がない企業は存在しない。
いかに長寿で安定している企業といえども、業績が順調な時期もあれば、経営が危うくなる時期もある。
なぜなら、大きな経営環境の変化により、突然苦境に立たされることが普通に起り得るからだ。
会社は人が動かすものなので、そこには経営上のミスが入り込む余地があり、人が経営している以上、そこには慢心が生まれる余地がある。
某メガバンクの頭取は、このままでは銀行は消滅するといわれていた時代に、忙しい合間を縫って世界中の社員と1,000回を超える面談・面接を実施した。
とにかく自身の持つ危機意識を社員に伝え、社員の士気を鼓舞した。
また、一般社員が立候補制で社長と対談するという制度も作り、社員の考えやアイディアを拾い、事業継続の種を拾った。
銀行の役割は終わった、銀行はもうオワコン(終わったコンテンツ)といわれて久しいが、未だに銀行はその姿・形を変えながら、生き残りに向けて動いている。
不動産ファンド運用会社ケネディクスの社長であった川島敦(現顧問)は、2008年のリーマンショックで会社の倒産危機に直面した。
いよいよ会社が潰れるかもしれないという状況に陥った時、川島は悩みつつも、せめて社員には正確に状況を伝えようと社員にレターを出した。
社員の人生を大きく変えてしまう状況を作り出してしまったことに対する𠮟責等を覚悟していたが、予想に反し、社員からは「私は〇〇をやります」「〇〇を通じて少しでもキャッシュを稼ぎます」と言った励ましの言葉が多く集まったという。
従業員の不安を煽ってはいけないと、危機的状況を伝えないのは悪手だ。
優秀な人材は言われなくてもその危機的状況を察知し、会社の明るい未来が見えなければ、早々と見切りをつけて会社を去って行ってしまう。
だが、経営陣がしっかりと危機意識を共有し、「現在の状況はこうだ」と伝えれば「そうだったんだ。じゃあ我々もこれをしなければ」となるし、「我々は今後、こうやって生きていく」と会社の方向性を示し、納得感を得ることができれば、優秀な人材もその方向に向けて一緒に走り出してくれる。
もし、危機意識を持たず、自分の任期だけ何とか逃げ切ろうと思っているような人間が経営陣を担っているのであれば、そんな会社はとっとと逃げ出した方が良い。
経営危機から脱却するためには、企業内の各事業部門やグループ会社にも痛みを伴う改革が必要となる。だが、それを断行するには、経営の意思を組織内に共有して、組織の課題を明確にし、全員でその方向に動き出す必要がある。
経営危機を乗り越えた企業の歴史を見ると皆、一様にこれが出来ている。
「経営危機の時こそ、経営陣は従業員との距離を詰めることだ。そしてそれができている会社は必ず復活する」
(川島敦 ケネディクス 顧問)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?