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仕事や組織は肥大する? パーキンソンの法則について

英国の海軍歴史学者であり政治学者でもあるシリル・ノースコート・パーキンソン(1909-1993)は英国の行政組織(役所)を研究して「役所の仕事量や支出は膨張し、組織は肥大していく」という「パーキンソンの法則」を発見した。

パーキンソンは役人(公務員)の数が仕事の量や難易度に関わらず増え続け、毎年のように増税が続く環境に疑問を持ち、役所の観察を始めた。

すると「部下を増やしたがる」、「お互いに仕事を作りあう」といった役所の習性を発見した。
また、税収額に関わらず年度初に決められた予算財源を使い切る役所の予算主義は、予算額が際限なく増加し続けるということに気づいた。

パーキンソンはこの2つの発見を、「仕事量の膨張」に関する第一の法則、「支出の膨張」に関する第二の法則として以下の様に定義した。

第一の法則:仕事の量は、完成のために与えられた時間を全て満たすまで膨張する
第二の法則:支出の額は、収入の額に達するまで膨張する

まず、第一の法則から考えよう。
『仕事の量が膨張する』というのはどういうことか。

このことについてパーキンソンは “手紙1通送る仕事を1日かけて行う女性の話”を英国の週刊新聞『エコノミスト』に寄稿した。

手紙1通を送るだけであれば、文書作成を含め1時間もあれば完遂できる。

だが、この女性は手紙を書く用紙を用意するのに30分、手紙を書くのに90分、封筒を探すのに30分、切手を購入するのに60分等、たっぷり時間をかけて『手紙1通を送る』という本来1時間もあれば終えられる仕事を1日かけて完遂させた。

これが分かりやすり仕事量の膨張の例だ。

また、残業が多い職場で、社員一人当たりの残業時間を減らすために増員して残業時間を減らそうとしても、残業時間月●時間と考えている社員は仕事を与えられた時間を満たすまで膨張させるため、人を増やしたところでその社員の残業時間は減らない。

むしろ、増員された社員までもが残業を行うようになり、残業時間が増えるということすら起きてしまう。

理論的には、人数が増えれば一人当たりの仕事量が減り、より高度な仕事にチャレンジしたりできるはずだが、実際には人が増えても仕事にかかる時間は変わらず、生産性も向上しないというのが第一法則だ。

次に第二の法則を考えよう。
『支出の額は収入の額を満たすまで膨張する」というのはどういうことか。

この法則は行政組織の財政状況から発見された。
役所の運営に必要な予算が毎年一定だとすると、税収が増えれば予算額に余裕ができるはずだし、税収が少なければ支出を切り詰めるはずだ。
だが、役所では年初に決められた予算は、予算の補正が行われない限り税収に関係なく執行される。

そして、予算額は税収が増えればまた新たな予算額が設定され、増えた予算を使い切るように運営費が膨張し、常に予算はギリギリという状況になり毎年のように予算増が発生し、増税が続く。

これを家計に置き換えると、「年収が上がったにも関わらず、貯金ができない」といった人はパーキンソン第二の法則に当てはまっている。
年収が上がれば通常はその上がった分を貯金に回せるはずだが、実際にはお金に余裕ができると生活レベルを上げてしまい、増えた分の収入を使い果たしてしまう。

このように「人は時間やお金に余裕があっても、それらをすべて使い果たすように行動を拡大させてしまう」というのがパーキンソンの法則だ。

これは会社組織や一般家庭にも当てはまり、最早、人間の性(さが)ともいえる法則だ。

逆に、人がどうやってパーキンソンの法則に陥ってしまうのか理解すれば、仕事の生産性を高めたり、適切に予算を管理したりできるようになる。

参考文献:『パーキンソンの法則』C.N.パーキンソン、森永 晴彦 
至誠堂 (1996/11/1)

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