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目に見えない問題(インビジブル・イシュー)を考える

「見える化(みえるか)」とは、トヨタが生み出した造語で企業や組織における業務や戦略などの活動実態を具体化し、問題を浮き彫りにし、課題を解決して行く手法だ。

ただ、売上や損益など数字にかかわるものは全て「見える問題」で、これを把握しておくことは見える化とは少し違う。
勿論、数値を分析することで見えてくる問題や課題を浮き彫りにすることはできるが、「見えない問題」とは数値等の定量的な部分ではなく、経営理念、価値観、企業文化、モチベーションなどの定性的な部分に多い。

「見える問題」と「見えない問題」、この2つの問題を解決して行くことがマネジメントの醍醐味だが、組織を運営しているとどうしても「見える問題」にアプローチしがちになる。

米国で考え出されたと言われている品質管理(QC)の手法は合理的な手法だ。目に見える“品質”を追い求め、一定の品質を確保する。だが、この“手法”という「見える問題」ばかりに目を向けると働く人たちの意識やモチベーションに目がいかず、決められたやり方を厳格に行えさえすれば良いとなってしまい、最善の効果を発揮することは出来ない。

ここに社員のモチベーションや意識といった「見えない問題」にアプローチし、目的意識の向上、チームワークの強化が加わると結果は大きく変わってくる。

資本主義社会は目に見えるものや合理性ばかりを追いがちだ。ただ、そればかりを追い求めて働く人の内面や感情といった「見えない問題」を切り捨てると知らず知らずのうちに不満が溜まり、どこかで爆発する。

経営者が大きな成功を望むならば、「見えない問題」を意識的に探してみることが重要だ。

「見えない問題」によって「見える問題」の中身は変わってくる。

行き詰まったり、停滞感を感じ始めたら行動や意思決定が経営理念に基づいているか、経営方針はしっかり伝わっているのか、経営者の姿勢は正しいのかといった「見えない問題」(インビジブル・イシュー)を改善する必要性を探してみると良い。

「見えない問題」の方が「見える問題」と比べてより多くの影響力を持つ。

今回の自粛生活で人々の意識や考え方に変化が生じた。家族と過ごす時間を半強制的に与えられたことによって自分の働き方に疑問を持ち始めた人も多いだろう。「見えない問題」の蓄積は始まっている。

テレワークは合理的な働き方だが通信環境や労務管理、働く場所と言った「見える問題」だけにアプローチするのではなく、モチベーションや勤労意欲などの「見えない問題」にどのようにアプローチして行くかが経営者の直近の課題であり、腕の見せ所だ。


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