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暮瀬堂日記〜水鳥

 多摩川の土手を歩めば、尾花の枯れ始めるのを目に入れる。蘆原の隙間には鷺や鵜が佇み、その傍らに浮寝する鴨や鷗、鴛鴦の様に、暫し足を止めていた。
 下流ゆえに流れ穏やかなれば、浮寝鳥は流されるのを按じることは無かろう。

 奥に見える穴守稲荷の大鳥居は、冴え始めた空気に、仄かに赤みを増している。更に奥の中洲「ねずみ島」には、降り立つ水鳥が多くなっていた。
 野鳥の楽園と聴き及んだのを思い起こし、飛来する鳥の弥増す様を目に浮かべる。

  水鳥の日毎こみあふ中洲かな

 一句を為し、空港を発ったばかりのジェット機を見送っていた。


水鳥……秋に飛来し、春に帰る渡り鳥のことであるが、冬に長く見られるので、冬季の季語となっている。


(二〇二〇年 十一月九日 月曜 陰暦九月ニ十四日 立冬の節気 山茶始開【つばきはじめてひらく】候)

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