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映画感想 パストライブス/再会 ネタバレあり

久しぶりに映画館で映画を見た。銀座に勤めているので、映画館がたくさんある有楽町日比谷エリアにはかなり行きやすい。そこで初めての早上がりの日に、映画を見に行こうと思い、ちょうどTwitterで見て気になっていたパストライブスのチケットを勢いで予約した。
 Twitterでこの映画について見た時、恋愛ではないつながりで大切な存在、というようなことが書いてあったので、お互いを思い合う男女の話だけど、恋愛とはまた違った形で終わるのかな?みたいな予想はあった。実際に見てみると、まあ大まかに言ってしまえば予想通りの映画であった。だが、正直エンドロールが流れる中、私は首を傾げてしまった。
 自分の中では消化しきれない、それが正直な感想だった。
もっと言っちゃうと、胸糞悪くない?みたいな気持ちになった。
この時なんでそう思ったのかを説明するべく、まず簡単にこの映画のあらすじを紹介する。

ソウルで同じ小学校に通う12歳のノラとヘソン。成績優秀で仲の良い2人は、互いに淡い恋心を抱いていた。しかしノラの家族が海外移住することになり、2人は離ればなれになってしまう。そして12年後、それぞれニューヨークとソウルに暮らしていたが、SNSで繋がり、ネットを介して再会を果たす。

公式サイトより

ネットを介してスカイプでビデオ電話をするようになり再び会いたいと思う2人だが、ノラはニューヨークで作家としての夢を叶えたいという思いから、ヘソンへの思いがこれ以上強くならないようにと、2人は連絡を断つ。その後ノラは現地で結婚をし、ヘソンにも彼女ができ12年が再び立つ。そして12年後、ヘソンが休暇にニューヨークへ行き、ノラに久しぶりに連絡をとり、現地で会うことになる。そしてノラの夫アーサーとも会い、韓国語しか話せないヘソンと英語しか話せないノラの夫がなんとかコミュニケーションを取ろうとしたりする。そして、ヘソンは韓国に帰宅するところで映画は終わる。


ざっと説明するとこんなような内容だ。ここで重要なのは、ヘソンとノラは決して恋愛関係にはならなかったと言うこと。お互いにきっとうっすらと好意を抱き、タイミングと状況が合えば一度は絶対に付き合っていたであろう二人が一度も付き合わずに絶対にそうした目を相手に向けず、終始友情を育んだ。
だが、ノラはヘソンが空港へ向かうタクシーに乗り込み、別れた後に泣いてしまう。その泣いているノラを抱き抱えながら家に入れる夫。この風景で映画は幕を閉じる。アーサーは、この時どんな気持ちでノラを抱き抱えたのだろうか。自分ではなく違う男のために涙を流すノラに対して、深い壁を感じたのではないか。そんなことを考えると、気持ちよく観終わることができなかった。
他にもアーサーがノラに対して壁を感じる場面がある。二人でベッドで寝ている中、アーサーは深夜に目が覚めてしまう。それに気がついたノラに話し始めるアーサーは、ノラの寝言がいつも韓国語であることにかわいいと思うと同時に怖さや壁を感じると打ち明ける。私はこの場面を見て、ノラは一度もアーサーの夢を見たことがないのかなと思った。アーサーもそう思ったのではないだろうか。
アーサーは、ノラがヘソンに会った日の夜、ノラが彼と一緒に出て行っちゃうんじゃないかと心配する。それに対してノラは、「私は男より書くことを選ぶ女よ」と言う。これは、彼女なりに心配する必要はないと伝えるために言った言葉だと思うけど、こうも受け取れる。私はヘソンじゃなくてアーサーを選んだ。それは男じゃなくて本を書くことを選んだ結果だと。

こういう場面を見て、ノラはアーサーに愛されているけど、ノラはアーサーのことを愛していない、というふうに見えた。それでも、ノラは最後までじぶんの今まで選んだ道を否定せず、ヘソンにもそう伝えて別れた。そういう意味でノラはとても強い女性だ。だけど、アーサーはこれからもきっと深い孤独を感じならがノラの横にいることになると思うし、それはノラもきっと一緒な気がする。

この映画を楽しめなかった自分は恋愛至上主義者なのかな?とも思った。ある意味で、ノラは一時の感情に流されるような人生を歩んでいなくて、常に自分の人生の中のたくさんの選択を強い意志で掴み取って、失ってしまったものに対してもそれを仕方ないと受け入れることのできる理性的で賢くて選択に一貫性があってスッキリするはずの人生を歩んでいるはずなのに、どうしても、自分の気持ちに正直に流されちゃええばいいのに、とか、本当にその旦那と一生一緒でいいの?と思ってしまう自分がいる。というか普通のドラマなら、そこでやっぱり彼じゃなきゃダメなの!てなっちゃうのが普通だ。だからそれを求めてしまう自分の野暮さとか感性が死んでいる感じに自分で少し呆れた。

 非常に現実的なドラマだと思う。普通のドラマだったらやっぱり彼じゃなきゃダメなの!ってなるところだけど、現実だったら今の生活を手放せないし、あまりにも暮らす環境や今まで生きてきた人生が違う2人が付き合うのは現実的じゃない。そんな現実的なドラマだからこそ、ヘソンと別れた後に涙を流しながら家に帰るノラに共感する人は多いんじゃないだろうか。

私は、ノラのように恋愛か、仕事か、という選択を迫られたことがない人生だし、あまりにも人生経験が希薄で、まだこの映画を味わえる段階にない気がする。結局のところドラマに共感したい自分がいる。だから、この映画は言っていることはわかるけど、深いところで共感できない、となってしまった。きっと、歳をとってまた見たら、180度感想が変わるかもしれない。そう思わせてくれるのは、この映画が人間関係や人生の選択についてとても繊細に描いた名作だからだろう。自分がノラの歳になった時、もう一度この映画を見て何を思うかが楽しみだ。

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