Gift 13 〜 第二部:帰還の旅の終わりには「愛そのものである私」が待っている
◎ かつてのあなたがいた場所に戻るしあわせな帰路
この本の冒頭に書いたとおり、私はあなたと一緒に、しあわせに暮らし、働き、人と関わるための修正点を見つけ、その改善に挑もうとしています。
第一部では、いま私たちに起こっている問題を紐解きながら、
「愛が使える自分を思い出す」
という針路を見つけました。
私はこの道を進もうとする人は、絶対に失敗しないと確信しています。もし、目指すところが「愛が使える自分になる」だとしたら、厳しい鍛錬や修行を重ねた末に、一握りの賢者だけがたどり着ける高度な取り組みになるでしょう。
でも、もともとそうであったものを「思い出す」だけなら、努力も才能も必要ありません。それは過酷な未知への挑戦ではなく、かつての自分がいた地点に戻る穏やかな「帰還の旅」になるからです。
私たちは、この故郷のようなところからずいぶん遠くまで来てしまいました。そして、愛から離れるたびに痛みや苦悩も増していきました。いま、私たちは「このまま先に進むのか」それとも「そろそろ引き返すのか」の分岐点にいます。
引き返すほうは、慣れない場所で疲れ果てたあなたが、ようやく家路に就くときの心緒に似ています。最寄りの駅に降り立ち、いつもの商店街を歩き、馴染みの人たちと挨拶を交わし、少しずつ我が家が近づいてくるときと同じ、身も心も癒やされるあの温かい感覚が待っているのです。
さっそく、そんなしあわせな旅を始めようと思います。まずは、行き先を見失わないように、私たちが思い出そうとしている「愛」がどのようなものかを見極めておきます。
すでに見てきたように、私たちは愛との関係をかなりこじらせています。だからといって、愛は失われません。でも、その意味や働きを歪めたり忘れたりすることはできます。
聞き慣れたこの言葉に抱く印象や先入観をできるだけ白紙に戻して、まっさらな頭と心で最初の一歩を踏み出しましょう。
◎ 「与える創造」から生まれる美と調和の世界
最先端の研究によれば、いまから138億年前、何も無い真空から小さな「ゆらぎ」が生じ、急激な膨張と大爆発を引き起こします。ここから空間が広がり、星々が生まれ、その上に私たちが誕生しました。
私の目には、この壮大な過程のすべてが、
「意志を伴う創造」
に映っています。
なぜならば、写真や動画でしか見たことのない宇宙の姿も、いつも身近で眺めている天然の景色も、あまりに荘厳で秀逸で美しいからです。若いころから、音楽や文章をはじめとする創作に携わってきた身としては、これほど見事な作品の数々が、偶然の積み重ねによってできたとはどうしても信じられません。
たとえば、自然界には、つい手直ししたくなるおかしな色の組み合わせや、不細工な造形がひとつもありません。しかも、全体を広く見渡しても、一部を細かく切り取っても、一貫した主題が綻びなく表現されているように感じます。
これだけの傑作を完成させるには、コンセプトワークからデザイン、設計、技巧にいたるまで、超一流の才能を揃えなくてはなりません。プロとしてもの作りを経験した人なら、そのすべてにどれだけ大きな壁が立ちはだかるかを実感しているはずです。
そこで私は、あえて科学の話から離れ、138億年前に無から生じた「ゆらぎ」を、
「原初の想い」
と捉えてみようと思いました。
すると、宇宙がひとつの想いから始まり、いまも続く「創造のプロセス」に見えてくるのです。
しかも、ここで創られたものには、外観の美しさと並んでもうひとつの目を見張る特徴があります。
この宇宙は、爆発や衝突など一瞬の混沌を引き起こすことはあっても、最後にはかならず調和に向かいます。そこには互いに対立し合う分離や分断はありません。
2兆個あるといわれる銀河も、太陽系をはじめとする恒星と惑星の集まりも、私たちが暮らすこの地球も、その上に育つ小さな森も、例外なく「ひとつの生命」のように機能しています。
だからといって、全体を制御する「中央」はどこにもありません。星々や、その上で暮らす生きものたちは、誰の指示も受けずに、まるで優れた指揮者が率いるオーケストラのように完璧なハーモニーを奏でているのです。
どうすれば、このような自律と融合が共存する世界が創れるのでしょうか。
私は、
「原初の想いは、自らの想いを与えながら、自分と同質のものを次々と創造した」
のではないかと予想します。
同質といっても、自分とそっくりな複製品を創るわけではありません。私たちを見てもわかるように、自然界にはまったく同じ形をしたものはひと組もありません。まるで、着想の尽きない職人のように、原初の想いは一点物だけをあつらえ続けています。
たとえ見た目はバラバラで無限に多様で多彩でも、そのすべてに原初の想いがもつ性質や意志が宿っているということです。
これなら、創り手と創られたものは「ひとつ」になります。また、創られたもの同士も、部分と全体もかならず「ひとつ」の関係に置かれます。そしてひとつであるなら、それぞれが自律しながら同時に調和も保つことができます。
この、けっして異質なものを生まない創り方を、
「与える創造」
と呼ぶことにしましょう。
◎ あなたは「原初の想い」から愛をギフトされている
もし「人」も与える創造によって生まれたとしたら、私たちにも原初の想いと同じ性質と意志がそのまま受け継がれているはずです。
ここまでの話を振り返って、それがどのようなものかをまとめてみましょう。
・ 創造の源である。
・ 自らの想いを与えながら、外観は異なっていても自分と同質のものを創造する。
・ 創り手と創られたものは「ひとつ」になる。
・ 創られたものは、自由に動きながら「ひとつの生命」のように調和する。
・ 創られたものはどれも美しい。
第一部で書いたとおり、形のない想いは私たちに動く目的や動機を与えてくれます。人々が手がけることを「創造」とみなせば、想いこそがその「源」になっています。
Gift 03の「来客に一杯の飲み物を出すロール」では、工程ごとに美意識や工夫や思いやりなど、さまざまな形のないものを発揮しました。これを「手がける対象に想いを与えた」と見ることもできます。
また、そのようにして創ったものを「我が子のように可愛い」と感じられるとしたら、まさに自分と同質のものを生み出しているといえます。
私たちが行う創造には、もの作りだけでなく、コミュニケーションや組織の運営も含まれます。ビジネスの現場でもスポーツの試合でも、強い信頼で結ばれたチームは、リーダーが強権を発動しなくても、自律しながら「ひとつの生命」のように機能します。
さらに、歴史に残る芸術や建築はもちろん、いまも登場し続けるアニメやゲーム、映画、音楽、パフォーマンスを見れば、私たちがどれだけ美を追究してきたかわかります。自動車や服、家電、食器、楽器、文房具などの身近な道具の中にも、思わずうっとりしてしまう逸品が数多くあります。
家庭で作る料理でさえ、素材の色味を整えたり盛り付けにこだわったりするのも、面倒な掃除や洗濯をせずにはいられないのも「美しいものを創りたい!」という想いの現れではないでしょうか。
宇宙と比べればはるかに規模は小さくても、私たちも先に挙げた5つの性質や意志を使いながら、日々「与える創造」を行っているのです。
この「原初の想い」から受け継いだ形のないものを、そしてこれだけを、私は、
「愛」
と見ています。
第一部で、私は「人生とは何かを手がけること」で、それをしあわせに行うためには「愛から生まれる形のない想い」を使えばいいと書きました。この愛を、私たちは原初の想いからギフトされているのです。
◎ 「愛そのもの」という真理があなたの帰りを待っている
すでに書いたとおり、これは科学の話ではありません。それどころか、私の予想や仮説が正しいと証明する根拠もありません。
けれども、これまでの文脈からは、たとえ長い道のりになるとしても、たどり着くにふさわしい目的地が浮かび上がってきます。
「原初の想い」が愛だとします。愛は自らの想いを与えながら、自分と「ひとつ」の同質なものだけを創ります。ここに私たちのアイデンティティーともいえる「帰る場所」があります。
つまり、
「私たちは、愛から生まれた愛そのものである」
ということです。
この素晴らしい事実を、あなたと一緒に思い出したいのです。
原初の想いは世界に対して、ああしろ、こうしろ、こう生きなければならないなどの指示や命令はいっさい出しません。私たちも含めたすべてが「 愛そのものである存在」として自由に振る舞えば、自然と調和に向かうよう創られているからです。
愛から生まれる想いを使うと、質の高い結果が出せるだけでなく、Gift 09で書いた「しあわせな循環」が起こる理由もここにあります。
愛とは、
「宇宙が創造し、調和を保つための法則」
でもあるからです。
「愛が使える自分」はこの法則に完璧に沿っています。それはすなわち、原初の想いから始まった世界と呼応し、共鳴し、全一の関係にあることを意味します。
おそらく、私たちがどれだけ考えても、これ以上にうまくいく方法は見つけられないでしょう。やはり、私はあなたと一緒に、冒頭に書いた二択から「帰還」のほうを選ぼうと思います。
それは「自分とは何か?」を思い出す旅にほかなりません。そして、故郷のような終着点には「愛そのものである私」が待っていてくれるのです。
(次章に続く……)
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