マガジンのカバー画像

夏の連載小説 無限夜行

9
2009年に書いた小説です。
運営しているクリエイター

#夏のオススメ

【連載小説】無限夜行 一.「黒い列車」

【連載小説】無限夜行 一.「黒い列車」

太陽が沈み、空が薄桃色と紫色に混ざり合う時にだけ、僕はあの不思議な列車の事を思い出す事が出来る。

 纏わりつくような夏の風と草の匂い。暗闇の川から舞い上がる蛍達の光の渦。どこまでも続く、誰もいない路地。瞼を閉じるとそれらは心のどこか遠いところから浮かび出る。

 そして、金属と金属の擦れる音を夜空いっぱいに響かせながら、あの黒い蛇のような列車がやってくる。

 ああ、あの列車は今、どんな夜を走り

もっとみる